視覚障害者柔道xTEAM BEYOND  組んでしまえば、誰もが一緒に楽しめる! たくさんの「なるほど」に出会った90分 ~視覚障害者柔道体験会~

2017.08.27

毎日新聞社がTEAM BEYONDと連携して実施する「みえないセカイをみてみよう」をテーマにした競技体験会の第2弾、「視覚障害者柔道体験会」が8月7 日、東京都豊島区の大正大学で開かれた。柔道有段者から初心者までさまざまな一般参加者約20名が、TEAM BEYONDメンバーでロンドンブーツ1号2号の田村亮さん、元ラグビー日本代表の廣瀬俊朗さんとともにアイマスクをして、現役パラリンピアンらから柔道の手ほどきを受けた。

視覚障害者柔道xTEAM BEYOND  組んでしまえば、誰もが一緒に楽しめる! たくさんの「なるほど」に出会った90分 ~視覚障害者柔道体験会~

視覚障害者柔道は全盲から弱視まで視覚に障がいのある選手を対象にした柔道で、パラリンピックの正式競技だ。ルールはオリンピックの柔道とほぼ同じで、視覚障がいの程度によるクラス分けはなく、男女別に体重別で競う。ただし、大きく異なるルールが一つある。両選手が互いに組んだ状態から試合を始める点だ。組み方を争う「組手争い」の時間がないので、序盤から技のかけ合いとなり見応えがある。また、残り数秒からの1本勝ちも少なくなく、最後まで目が離せない点も醍醐味だ。

視覚障害者柔道xTEAM BEYOND  組んでしまえば、誰もが一緒に楽しめる! たくさんの「なるほど」に出会った90分 ~視覚障害者柔道体験会~

体験会は一同での「礼」から始まった。つづいて、体験会講師の一人で、北京パラリンピック代表の初瀬勇輔選手が競技のルールなどを説明。「組んでから始める、という一つの工夫のおかげで、障がいの有無に関係なく誰もが一緒に楽しめるところも魅力なんです」

ひきつづき、講師役4選手が得意技を披露した。急成長を見せる21歳の永井祟匡(たかまさ)選手は巴投げ、初瀬選手は背負い投げ、アテネ大会銀メダルの加藤裕司選手は内股、そして、ロンドン金、リオ銅の正木健人選手は払い腰。豪快な技が次々決まるたびに、「おお~」という感嘆と拍手が沸き起こる。

一気に盛り上がったところで、いよいよ参加者も体験へ。アイマスク着用での歩行から、「大腰(おおごし)」という基本技の習得、さらには選手を相手に30秒間の乱取と、プログラムは進んだ。

初心者の女性は、「丁寧な指導で、楽しかった」。柔道経験のある男性は、「柔道は相手の位置が目で見て分かる。でも、アイマスク着用では相手をつかんでいてさえ、自分の右にいるのか左なのかよく分からない。技もなかなか掛からず、もっと相手の懐深くまで踏み込む勇気が必要だった」と競技の難しさも感じたという。

視覚障害者柔道xTEAM BEYOND  組んでしまえば、誰もが一緒に楽しめる! たくさんの「なるほど」に出会った90分 ~視覚障害者柔道体験会~
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プログラムの最後には模擬試合が行われた。第1試合はしばらく技の応酬がつづいた後、永井選手が加藤選手に一本勝ちし、第2試合は廣瀬さんが初瀬選手に善戦及ばず黒星。最終戦では体重65kgの田村さんが170kgの正木選手に果敢に挑むものの、「全然動かない!」。逆に正木選手がなんなく倒して押さえ込むと、田村さんはたまらず畳を叩いて「まいった」の合図。「死ぬかと思った~」という感想に、会場は笑いと拍手に包まれた。最後に再び「礼」をして、体験会は終了となった。

大阪から参加した中学1年生の男子は弱視で、地域の柔道場に通う。「みんな、すごく強かった。僕ももっと練習して、パラリンピックに出たいです」。憧れの先輩たちとの稽古で、少年の夢はさらに膨らんだに違いない。

「新しいスポーツとの出会いは刺激的だった」と話したのは廣瀬さんだ。ラグビーはボールや仲間の位置などを主に目で確認しながら行うチーム競技だが、視覚を閉じて行う柔道は仲間の助けもなく、一人で戦う点が大きく違う。「アスリートとして、『投げたい』という闘争心が沸く一方で、暗闇の中で投げられる恐怖心も大きかった。体験してみて、選手のすごさが分かった」と振り返った。

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また、高校時代、柔道部だったという田村さんは、視覚障害者柔道が「組んだところから始まる」ことは知っていたそうで、「直接体験」を楽しみにしていたという。そして、体験中に何度も「なるほど~」とつぶやいていたので、その理由を問うと、「想像していた以上に奥深かった。柔道の組手争いも面白いが、組んで始まる視覚障害者柔道はそこからの展開が見どころ。僕は、より『まっすぐな柔道』だと感じた。試合ももっと観てみたい。体験したからこそ、さらに興味が広がった」

田村さんはまた、競技以外にも、「なるほど」と思ったことがいくつもあったという。たとえば、体験会の冒頭、初瀬選手が参加者に、「視覚障害者柔道を知っている人は拍手してください」と問いかけたこと。手を挙げてもらっても選手には見えないが、「音」の大きさなら判断できると知った。また、「街のなかで、ちょっと声をかけてもらうだけで、安心できる」という言葉にも「なるほど」。一見、屈強な選手たちだが、視覚障がいのため日常生活では怖い思いもしていると気づいた。

そうした「なるほど」はすぐに行動に生かされた。体験会終了後、記念写真の撮影のため壁の前に移動しようとして、全盲の永井選手がたまたま一人ぼっちで戸惑った様子を見せた。すると、すかさず駆け寄ったのが田村さんで、永井選手に肘を貸し、誘導したのだ。

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田村さんにその時の心境を尋ねると、「無意識、無意識」と照れたが、90分間の柔道体験を通して視覚障がい者との関わり方も自然に学んだのだろう。「今日は、強そうな選手たちの弱い部分も感じられた。見過ごしてはいけない部分だと思う」とかみしめていた。

パラスポーツの体験会は単に競技を知るだけでなく、障がいのある人についての理解など貴重な学びの場でもあることを改めて実感。たくさんの「なるほど」があった、視覚障害者柔道体験会だった。

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