速く力強いボールを全身で受け止める勇気と緊迫した心理戦。支えるのは小さな気遣い ~ゴールボール体験会~

2017.12.14
速く力強いボールを全身で受け止める勇気と緊迫した心理戦。支えるのは小さな気遣い ~ゴールボール体験会~

毎日新聞社がTEAM BEYONDと連携して実施する「みえないセカイをみてみよう」をテーマにした競技体験会の第3弾、「ゴールボール体験会」が9月30日、東京都足立区の中島根小学校で開かれた。一般参加者約20名が集まり、TEAM BEYONDメンバーで、ロンドンブーツ1号2号の田村亮さんと、元ラグビー日本代表の廣瀬俊朗さんとともに参加した。

速く力強いボールを全身で受け止める勇気と緊迫した心理戦。支えるのは小さな気遣い ~ゴールボール体験会~

ゴールボールは視覚障がい者のために考えられた対戦型競技で、パラリンピックの正式種目にもなっている。アイシェードを付けた3人が1チームとなって高さ1.3メートル、幅9メートルのゴールを背に、鈴の入ったボールを相手ゴールに向かって投げ合う。ボールは重さ1.25kgほどあり、持ってみるとずしりと重たく大きい。男子のトップ選手では、その球速が時速60~70キロにもなり、約0.5秒で相手ゴール近くに到達する。選手たちはどこへどんなボールがくるか、その一瞬で判断してゴールを守る。ボールの音だけでなく、足音や床のわずかな振動から作戦やボールの方向を予測する。攻守がスピーディーに入れ替わるため、1試合前・後半あわせて24分の間に男子選手では200球以上のボールが行き交うこともある。

体験会ではまず、現役選手がデモンストレーションを披露。審判の「クワイエット・プリーズ!」という指示を合図に、静寂が広がるなか、選手は勢いよく投球するため、身体をくるりと回転させてボールに体重を乗せ、力強い投球を次々と繰り出す。守備(セービング)は、両手両足を伸ばし、全身でそのボールを受け止める。投げて、止めて、投げて、止めてを繰り返したのち、ボールが大きく弾んで守備選手の身体を飛び越え、吸い込まれるようにゴールが決まった。

体験会の講師で男子日本代表ヘッドコーチの池田貴さんは「ゴールボールは平面じゃなく、立体的なスポーツ」と説明する。ボールをただまっすぐ投げ合うだけでなく、上下の空間をうまく使い、意表をつくコースへ投げられるかが勝敗を分けるという。

速く力強いボールを全身で受け止める勇気と緊迫した心理戦。支えるのは小さな気遣い ~ゴールボール体験会~
速く力強いボールを全身で受け止める勇気と緊迫した心理戦。支えるのは小さな気遣い ~ゴールボール体験会~

選手の迫力あるプレーを見た参加者は、まずアイシェードをつけない投球練習からスタート。突き指をしないよう相手に声をかけながら、参加者はボールの感触を確かめていた。続いて、ゴールを守る「セービング」の練習にうつる。守備では片膝をつけてボールを待ち、相手が投げたと思った瞬間、床に寝そべるように横になってボールを受け止める。ポイントは、顔にボールが当たらないよう、頭を上げ、腕を適度な位置に伸ばすこと。ここでも突き指を防ぐため、「手のひらを向けて」などのアドバイスが入った。

アイシェードを実際に着用した試合形式の体験では見えない恐怖からか、なかなかボールに手が出ない参加者も。ボールを「防いだ!」と思っても、バウンドしたり、伸ばした手の先をすり抜けたりする。競技の難しさと攻守双方の緊張感が見ている側にも伝わってきた。

ゴールボールの魅力は「見えない中でボールに飛び込む勇気」

体験会を終え、ゴールボール初体験の廣瀬さんは、「昨年、リオパラリンピックでゴールボールを観戦したときはできそうだなと思った。でもやってみると全然違う」と語った。

速く力強いボールを全身で受け止める勇気と緊迫した心理戦。支えるのは小さな気遣い ~ゴールボール体験会~

過去にボッチャや視覚障害者柔道を体験した田村さんは「どの競技よりも、見るのと体験した印象がまったく違った。方向感覚が想像以上になく、身体を回転させてボールを投げた後、自分がどちらを向いているのか全然分からなかった」と興奮した様子でプレー中の感覚を振り返った。試合形式の体験で、ボールを高く投げすぎて、何度も反則を取られた田村さん。「方向感覚を失って余裕もなく、反則でチームワークを乱してしまった…」。それでもゴールボールの魅力は「見えない中でボールに飛び込む勇気」だと言う。「ラグビーのトライやスクラムに突っ込んでいくような感覚。そしてあの展開の速さ。想像を越えた心理戦」と振り返った。

視覚障がい者向けの競技体験を通じて「僕なら手を挙げてこっち、と言ってしまう場面でも、自然に手をたたく音で伝えていて勉強になった。アスリートの人は抜群の身体能力だから、ついサポートを忘れちゃうけど、小さなフォローも当たり前のようにできたらいいなと」。田村さんはサポートする人たちの気遣いも感じていた。

力強くスピーディーな競技に挑む選手でも、コートの外ではささいな行為が支えになる。それは障がいの有無にかかわらず、誰もが同じなのかもしれない。

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