支援企業・団体の声
アクセンチュア株式会社
「あすチャレ!メッセンジャー」のスピーチトレーニングをサポートし
パラアスリートの人生設計を支援
世界的な総合コンサルティングファームであるアクセンチュア株式会社。同社では企業市民活動の一環として、グローバル全体で“Skills to Succeed(スキルによる発展)”というテーマのもと、人材・スキルに係る課題解決を中心に活動を推進しています。それに合わせ様々なボランティアプログラムを企画・実施しており、社員の「時間とスキル」を提供する「プロボノプロジェクト」もそのひとつ。中でも「人材ダイバーシティの促進」をテーマに、自社単体だけでなく、日本財団パラスポーツサポートセンターのパラアスリート、パラスポーツ指導者の講演講師派遣プログラム「あすチャレ!メッセンジャー」を支援するなど、共同での支援活動にも力を入れています。
育成した認定講師は74名。講演は220回実施(2021年12月末時点)
アクセンチュアがここで取り組んでいるのは、パラアスリート、パラスポーツ指導者を講演の講師として派遣するプログラム「あすチャレ!メッセンジャー」の運営と実施サポート。パラアスリートの自己発信能力向上を目的に、スピーチのトレーニングを行っています。
プログラムを受講したパラアスリートは、自身の経験や想いを講演会で積極的に発信。これにより、パラスポーツの魅力発信、健常者の障がいがある方への理解、共生社会の実現への動機づけを促進し、インクルーシブな社会の実現に寄与することを目指しています。
「あすチャレ!メッセンジャー」は2017年ごろから企画や準備をし、2018年5月から講演などを開始しました。2021年12月末時点で認定講師は74名、そのうちパラリンピアンは46名。講演の総実施回数は220回にのぼり、約5万人の方が聴講しました。
取り組みのきっかけについて、「もっとパラスポーツの素晴らしさを広めたい、熱狂や感動を伝えたいと思いました」と、同社ビジネス コンサルティング本部 マネジング・ディレクターの中村健太郎さんは言います。
「たとえば2010年に開催された、バンクーバーパラリンピックのアイススレッジホッケー。日本は準決勝で強豪カナダを破るというジャイアントキリングを起こし、その後銀メダルを獲得しました。現地はものすごい熱狂で日本パラスポーツ史に残る快挙だったのですが、私が想像したほど日本の国民には知られていなかったのです。」(中村さん)
中村さんの「価値を伝えたい」という思いは、パラスポーツそのものの認知だけではなく、パラアスリートの素晴らしさにもあると言います。
「感動の中心にいるのはパラアスリートで、そこには逆境を打ち破ってメダリストになるという物語があります。それはオリンピアンとは別の物語であり、パラアスリートだけのドラマといえるでしょう。しかし、感動を生み出すパラアスリート自身に収益として還元されていないという問題意識もありました。この課題解決に、アクセンチュアの力で貢献できるのではないかと思ったのです。」(中村さん)
パラアスリートの物語をより感動的に伝えられるよう育成
そうして取り組んだのが、メッセンジャーの育成と実施サポート。背景には、パラアスリートの人生支援という意味も含まれます。アスリートは、健常者も含めて選手としての寿命が短い職業です。肉体的なピークが過ぎても、選手時代に得た知見や経験をもとに第2、第3のキャリアを、早い時期から見据え、気付きを得られるように。その思いが、プログラムの骨子にはあるのです。
育成プログラムで具体的に行うことは、よりよい講演を実現するスピーチの力を鍛えるトレーニングです。パラアスリートとしての生き様にはドラマがあり、それ自体が非常に強いコンテンツといえるもの。しかし、伝え方によっては興味を惹かない内容になってしまうと中村さんは言います。
「私がパラアスリートの方と会話する中で、勉強になる話や感動的なストーリーに共感することは何度もあります。しかし同じ方が同じような内容を講演で話すと、その面白さが伝わらないということもよくあるのです。それは、聴講者が聞きたいことに必ずしも寄り添えていないということが大きいです。話が具体的すぎたり、かたや抽象的すぎたり、あるいは構成が整っていなかったり。そこをトレーニングによって、スキルアップしていくのです。」
トレーニングの内容は座学に始まり、少しずつOJTへ移行。最終的には実際にスピーチを行い、それに対するフィードバックを反映させながらスキルを高めていきます。そうした結果、講演の評判も高まり、なかには講演の収入が生活の基盤になったパラアスリートもいるとか。
講演は、依頼があれば全国どこへでも。アクセンチュアとしては、WEBを活用した集客などマーケティング活動による支援も行い、同様に講演におけるパラアスリートのプロフェッショナルを増やしていきたいと中村さんは言います。
スピーチの構成を組み立て直し、より面白くなるよう工夫した
東京2020パラリンピックをひとつの区切りにしていたこともあり、アクセンチュアとしては育成プログラムに関する役割を「あすチャレ!メッセンジャー」の事務局側へ少しずつ移管。サステナブルに運営していくために、自社だけで活動を仕切るのではなく、過去に作成した動画をコンテンツ化したり、講演スキルの高いアスリートに講師を託したりと、事務局だけで運営できるようにしているとか。
これまで育成プログラムで苦労した点は、ある一定のスキルまで上達すると、アクセンチュアの担当者がコーチをしても、講演が面白くならないことだったと中村さんは振り返ります。その原因は、ある一定の型にはまった流れでプレゼンテーションを構成していたからだとか。
それはたとえば、最初に結論を話してからその理由を順に解説していくような構成。このスタイルはわかりやすくもあり、ビジネスなどシーンによっては正解ですが、パラアスリートの講演では最適解ではなかったと中村さん。
「パラアスリートの物語はコンテンツ自体が強いですし、ビジネスでよくある新しい概念や仕組みのように難しい話ではありません。そのため、結論からではなく時系列に従ってストレートに話したほうがよかったりもします。とはいえスピーチの組み立ては重要で、大長編の物語の中で数分に1回ピークが来るように仕立てたり、児童にはインクルージョン&ダイバーシティのように説明が難しい話はかみ砕いて話すなど、当初想定していたレクチャーの枠組みをかなり変えました。これは我々がビジネスで行っているプレゼンテーションにも大きな学びになりましたね。」(中村さん)
精神・知的・発達分野のパラスポーツにも光を当てたい
聴講者からは「心の持ちようが変わりました」、「将来に対する不安がすっきりしました」、「メンタルのコントロールやトレーニングの参考になりました」など、大きな反響の声が届いているとか。一方、アクセンチュアの社員でも運営でパラアスリートに携わる中、成長が見られるケースが多いと中村さんは言います。
「社員の成長には、大きくふたつがありますね。ひとつはまず、日々プレゼンテーションのノウハウを学ぶので、社員自身も話上手になります。教育の受益者は実は教える側にもあるんです。もうひとつは、何か正論のような理由を付けて『無理です』や『できません』ということを言わなくなるということですね。パラアスリートは様々な逆境の中からできることを最大化して勝利しているわけです。それに比べれば、我々のほうが選択肢は多い。パラの選手を見ていたら、「不可能だ」と思う自分のマインドに対する反省が生まれるんです。」(中村さん)
中村さんがパラスポーツに今後期待することは、彼ら自身の肉体的、精神的な強さを知らしめることでスポーツの観客や講演の聴講者に勇気を与えること。その意味でも、いっそうパラスポーツの価値や魅力を伝えていきたいと言います。
また、パラスポーツやアスリートの支援を検討している企業には、「何らかのかたちであれ、パラスポーツに関わるだけでも得ることがたくさんあります」と積極的に取り組むことを勧めます。
中村さん自身、インクルージョン&ダイバーシティや共生といったことに理解を持っていたつもりでも、実際に関わってからは「理解したつもりになっていた」と痛感したとか。「実際にパラアスリートと同じ環境を体験すると、優位な立場に立っていると無意識に感じている自分に気づかされます。これは社会的にも組織的にも運よく優位な立場に立てたとき、自分の役割を顧みる気づきを与えてくれます。組織を運営する上でも非常に価値のあるものです。」
育成プログラムの取り組みは「あすチャレ!メッセンジャー」事務局に移管しつつあるとはいえ、これからもパラスポーツ振興のために力を尽くしたいと言う中村さん。そのうえで着目しているのは、対象となるパラアスリートの幅を広げること。身体的な障がいだけではなく、精神・知的・発達に障がいのある人のためのスポーツにも光を当てていきたいとビジョンを語ります。
コンサルティングファームならではの発想や課題解決能力で、パラスポーツにもダイナミックな変革をもたらすアクセンチュア。その動向に、これからも目が離せません。
アクセンチュア株式会社
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電話 | 03-3588-3000(代表) |
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