第1回 TEAM BEYOND CONFERENCE 2022
固定観念を打ち崩す!共感が生み出す新しい価値

2022年9月5日、東京2020大会に合わせて整備された東京国際クルーズターミナルにてTEAM BEYOND CONFERENCE「固定観念を打ち崩す!共感が生み出す新しい価値〜いま始めるパラスポーツとのパートナーシップ〜」が開催された。第1部では、パラスポーツや障害を通じた様々なエピソードを基に、基調講演やパネルディスカッション等を通して、パラスポーツ支援がどう企業経営に影響し、社内活性化につながっていくかなどの可能性を探った。
※第1部のアーカイブ映像は2023年3月31日までご視聴いただけます。
https://youtu.be/nvfTIan2VpU

基調講演「共感ストーリーが生み出すパートナーシップ」

アビームコンサルティング株式会社 執行役員
久保田圭一氏

基調講演を務めていただいたのは、スポーツ産業を形成する各プレイヤーの課題解決とビジネスプロデュースを支援する久保田圭一氏。
久保田氏は、現在のパラスポーツを取り巻く環境として、理解や関心は高まっている一方で、経済基盤や施設の整備、技術開発等が十分に進んでいない状況であると説明。パラスポーツの環境整備には、企業のリーダーシップによる変革が必要であると訴えた。
企業のスポーツへの関わり方は、企業がリターンを求めない応援型の「スポンサーシップ」が主流だったが、近年は企業にリターンをもたらす共創型の「パートナーシップ」に移行しつつある。久保田氏は、「事業視点(R&D※、プロモーション、セールス)」と「全社視点(ブランディング、採用/リテンション、社会貢献)」でパートナーシップの方向性を考えるべきであると話し、活用できるスポーツが持つ力として3つの強みを挙げた。 ※R&D:研究開発(Research and Development)

1つ目は「共感力」。喜び、夢、憧れ、努力、挑戦、挫折など、人々はスポーツを自分の人生と関連付ける。例えば、甲子園は高校球児が努力している姿を、自分に重ね合わせて共感する。昨年の東京パラリンピックでも、パラアスリートが限界へ挑戦する姿に感動する人も多かったのではないかと話し、この共感力こそが最も重要な視点であると述べた。 2つ目に挙げたのは「訴求力」。スポーツというコンテンツを通して発信することで、多くの人に訴求することが可能となり、一気にメディアとしての価値が高まるという。 3つ目は「ネットワークワーキング力」。スポーツという共通項で接点のなかった人々を結びつけることができる。久保田氏は、「スポンサー、パートナーシップをしている中で、同じスポーツを応援する人とはすごく話しやすいと感じている」と自身の経験を交えて語った。

最後にメッセージとして、企業の皆様に対しては、「以上3つの強みを活用してパラスポーツとの連携を検討していただきたい」と訴え、競技団体の皆様に対しては、「スポンサー営業ではなくパートナー提案という概念で企業に向き合い、何が提案できるかを考えていただきたい」と述べた。そして、「今日これを機会に、パラスポーツと企業連携が進み、パラスポーツの発展、共生社会の実現に向かうことを心より願っています」と締めくくった。

パネルディスカッション

NPO法人日本ブラインドサッカー協会
事業推進部大会運営グループマネージャー
宮島大輔氏
車いすバスケットボール選手
東京2020パラリンピック銀メダリスト
香西宏昭氏
認定NPO法人スローレーベル理事長
東京2020パラリンピック開閉会式ステージアドバイザー
栗栖良依氏

基調講演に引き続き、久保田圭一氏がモデレーターとなりパネルディスカッションが行われた。冒頭にパネリストの3名から自身の取組を紹介いただいたあと本題へ。

初めに、それぞれの立場で感じているパラスポーツに対する固定観念や課題感について伺った。
ブラインドサッカー初のトップリーグ「LIGA.i(リーガアイ)」を運営する宮島氏は、「協会の中で話をしていても、以前は「ブラインドサッカーはパラスポーツだからお客様が100人集まれば十分だよね」と可能性に蓋をしていた部分があり、身近な自分たちが固定観念を持ってしまっていた」と吐露。続いて栗栖氏は、「東京パラリンピックの開催により、インクルーシブなイベントやそこで活躍する障害者は増えたが、本当はもっとメジャーなところで普通に活躍したい、パラくくりで満足してしまっていることが課題である」と語った。最後に香西氏は、「自分は障害を乗り越えたと思われることが多いが、生まれつき障害を持っているので、これが当たり前であり、乗り越えたという感覚はない」と自身に向けられる固定観念について話した。久保田氏は、「それぞれの障害の捉え方をもっと理解し合うことが、障害のある人とない人が一緒にスポーツをしたり、共生社会を発展させていくためには大事なのかもしれない」と意見を述べた。

続いて、本日のメイントピックである「企業とのパートナーシップはどうあるべきか」についてディスカッション。
宮島氏は、企業との関わり方で意識していることとして、「LIGA.iという大会の意義と目指す世界観を企業の皆様にお伝えし、企業のニーズやウォンツとのシンクロを図ることで、企業の皆様と何かを一緒に作りあげていくこと」を挙げた。
続いて栗栖氏は、企業に対して発揮できるスローレーベルの強みとして、「自分たちは健常者の気持ちも障害者の気持ちもよくわかる。企業側は予算や時間など様々な制約がある一方で、障害者は必要な配慮がなければ参加できない。両者のすり合わせはコミュニケーションでしか解決できないが、そのノウハウを持っているので、企業の皆様がどのようにしたら障害当事者を巻き込んでいけるかという点で役に立てる」と話した。

香西氏は、SDGsや共生社会の実現に向けてパラスポーツ界が抱えている課題を問われると、「東京大会で車いすバスケットボールの認知は広がったものの、競技環境は道半ばである。利用できる体育館は飛躍的に増えたわけではなく、傷がつくからなどの理由で利用を断られることが多い」と現状を吐露。競技環境については、宮島氏からも、視覚障害者の利用は危ないという理由で練習場の利用を断られることもあると共感の声が上がった。久保田氏は、「床を傷つけず競技環境を整えるアイディアが企業から出れば、一つ課題の解決に繋がる」と企業の関わり方の一例を挙げた。
栗栖氏は、「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)は時間がかかることが多い。効率や生産性という価値ばかりを追求していたら共生社会は実現しない。企画段階から多様な人たちと時間をかけて、さらなる高い価値を生み出そうと決断していくしかない」と力強く語った。そして、「社会のスピードをもう少しゆっくりにして多様な方が生きやすい社会にすると、障害のない人も生きやすくなり、ハラスメントやメンタルヘルスといった企業が抱える課題の解決にもつながると考えている」と自身の考えを述べた。
宮島氏は、「競技環境の整備も必須だが、加えて、障害当事者の就労問題などの社会課題を解決していくことも、共生社会の実現だけでなくパラスポーツの発展に繋がっていく」と話した。

最後に、久保田氏が次のような言葉で締めくくった。「企業が社会に対して先陣を切って、パラスポーツの理解に踏み込むこと。一方で、パラスポーツの団体側も企業のことを理解する。この相互理解によってさらなる取り組みが進んでいけばよいと思います」

事例紹介1
「SUMMER SHOOT ~アーチェリーの新しい価値を創造し、日本のスポーツを元気に~」

NPO法人ジャパンアーチェリーシンジゲート
理事長
竹倉寛敦氏
アーチェリー選手
2012年ロンドンオリンピック、
2016年リオデジャネイロオリンピック出場
菊地香緒里氏

ここでは、2020年に竹倉氏が立ち上げた日本最大級のアーチェリーイベント「SUMMER SHOOT」について紹介。
竹倉氏は、新型コロナウイルスの影響でインターハイなどの学生大会が中止になってしまい、その代替大会としてSUMMER SHOOTを立ち上げたと説明。その上で、学生にとっての思い出の大会としてだけでなく、アーチェリーという競技を多くの方に知ってもらうきっかけになる大会にしたいという想いでスポンサーを募ったところ、多くの企業に賛同いただくことができたと話す。SUMMER SHOOTに出場した菊地氏によると、ここまで多くの企業に支援いただいているアーチェリーの大会はないという。
ただ、竹倉氏は、「アーチェリーの国内人口は1万3千人と言われている中で、ここに広告価値を見出すことはまだ難しい」とその現実を吐露。日本におけるアーチェリーの広告価値を高めるためにはヒーローが必要だと語り、今年の7月に新潟で開催した「SUMMER SHOOT’22」は、そのヒーローを作るため、「楽しい大会」をコンセプトに様々な仕掛けを行ったと振り返った。菊地氏は「いつもの競技会のようなピリピリした雰囲気ではなく、射っていて本当に楽しかった。パラの選手と一緒に競技をする機会は多くないので、障害の有無や老若男女問わず誰もが同じラインで競技できる大会は魅力的だと思います」と出場した感想を述べた。
SUMMER SHOOT’22には東京パラリンピックの代表選手も出場しており、竹倉氏は「誰もが同じラインで競技ができるというアーチェリーの魅力をより発信するため、鮮やかな照明で会場内にクラブのような雰囲気を演出するなど、クールさや革新性を取り入れるとともに、動画を使った演出も行った」と話した。菊地氏は、「こんなにダイナミックにアーチェリーが映ると思っていなかったので、びっくりしました」と振り返った。
そして竹倉氏は次のように話し、未来への展望を語った。「アーチェリーは観ても楽しい、やっても楽しいということを伝えるため、今後、5Gのモデルケースとして使えないかと(考えている)。(例えば)東京にいる菊地選手の指導が(5Gを使って)日本全国に伝わる仕組みが広がれば、障害がある子たちが「スポーツをやりたい」となった時に、気軽にパラアーチェリーを始められるようになる。そうして未来へ広げていきたいです」

事例紹介2
「障害者スポーツコンシェルジュ事業と相談事例の傾向について」

公益社団法人東京都障害者スポーツ協会
廣木美奈氏

廣木氏には、東京都障害者スポーツ協会が実施する事業から「障害者スポーツコンシェルジュ」について説明いただいた。本事業は、東京2020パラリンピックの開催決定でパラスポーツへの関心が高まり、様々な問い合わせが増えたことに伴い、総合相談窓口として2016年に開始。相談窓口のほかに、パラスポーツ用具の貸出や、企業・団体によるパラスポーツ振興のための取組事例紹介も行っている。
企業からは、「パラスポーツへの支援をしたい」「社員がボランティアできる場所を知りたい」「アスリートの雇用をしたい」など様々な相談をいただいており、都内で活動するパラスポーツ団体の紹介や、企業による取組事例の紹介を通じて、パラスポーツに関心を持つ企業をサポートする。
そして、障害者スポーツコンシェルジュでは、企業とパラスポーツ競技団体のネットワーク構築のため、年に一度交流会を開催している。お互いにできること、して欲しいことの情報交換ができる機会であると廣木氏は話す。
最後に、廣木氏は次のようにメッセージを送った。「企業様としては、実際にはどういうことをしたらいいのだろう?などご不明点も多いでしょう。実際にお話させていただく中で、企業様のできること、やれること、それが競技団体に発展すること、私たちと一緒にその可能性を見つけていっていただく。企業というくくりでなくても、会社の中で、ご自身が何かできるのではないかと思っていた場合も、こちらに相談いただければ、探しながら実際にご支援させていただきます。みなさんの一歩がパラスポーツの発展にも、共生社会の実現にも繋がります。お気軽にご相談いただければ幸いです」

デフスポーツ紹介

デフバレーボール女子日本代表監督
狩野美雪氏

狩野氏には、専門のバレーボールを通して見るデフスポーツについて紹介いただいた。
「DEAF(デフ)」は聴覚障害、耳の聞こえない人たちという意味で、”ろう”か難聴か、先天性か中途失聴かを問わず、すべてデフという。パラリンピックには聴覚障害の種目がなく、4年に一度、聴覚障害者のオリンピックとしてデフリンピックが開催されているが、国内の認知度は低い。狩野氏は、「デフリンピックに出場するためには、オリンピック・パラリンピックと違い、選手・スタッフともに自己負担金がある」とその現状を訴えた。
続いてデフスポーツを行う上での特徴を説明。ルールは基本的に聴者のスポーツと同じだが、陸上競技や水泳のスタートはランプで知らせるなど、耳が聞こえなくても目でわかるような工夫がされている。ただ、ルールが同じで、聴覚障害者は聴者と同様に動けるため、障害がわかりにくく、なかなか注目されないという。
加えて、狩野氏がデフスポーツの特徴として挙げたのはコミュニケーションの難しさ。手話通訳を介してのコミュニケーションは時間がかかるうえ、目で見ることでしかコミュニケーションが取れないので、ボールに選手の目が向いている間はリアルタイムの情報を発信できない。そのため、練習の際は人の配置にも気を付けているという。また、狩野氏は、「選手の障害や背景をしっかりと聞いて理解し、選手に合った情報提供を意識している」と話した。
最後に、デフスポーツの面白さとして、監督やコーチが工夫や配慮することで選手の能力を引き出せる分野であり、きわめて伸びしろがあると語った。また、一緒にいること、目標を持ちお互いがリスペクトして作り上げることで、それが共生社会と言われるのであれば、スポーツの持っている力は非常に大きいと感じていると力強く述べ、講演を締めくくった。
※9月10日に2025年のデフリンピックが東京で開催されることが決定しました。

ワークショップ【企業×パラスポーツ】で実現したい
共生社会の姿とその具体策とは?

日本パラリンピック委員会
『I’mPOSSIBLE』日本版事務局プロジェクトマネージャー
マセソン美季氏

第2部では、長野冬季パラリンピックのアイススレッジスピードレース競技で3つの金メダルを獲得し、現在はスポーツと教育の力で共生社会実現を目指す活動を牽引するマセソン美季氏を講師に迎え、ワークショップを行った。

マセソン氏は冒頭で、本日のメッセージとして「社会の中に存在している差別や不平等は、パラスポーツの考え方が浸透すれば少しずつ解消できる」と話し、パラスポーツが持つ3つのエッセンスを挙げた。1つ目は「多様な特性を受け入れ、それぞれが可能性を発揮できるように土壌を整え、改良していこうという文化が根付いている」こと。2つ目は「できないという思い込みを減らし、できるを増やすために、工夫したり、発想を転換する力がある」こと。3つ目は「当たり前を疑い、新しい価値観をソウゾウ(想像・創造)する力がある」こと。これらの力を組み合わせることで、多様な人たちが活躍できる共生社会に繋がると話した。

その後、参加者は5~6人のグループに分かれ、意見を出し合いながら4つのグループワークに取り組み、各グループの意見は発表により共有を行った。

「できないことがあって、人の手を借りなければいけない時の気持ちについて考える」ワークでは、参加者は自らの経験も思い出しながら、「申し訳なく思った」「断られないか心配」という意見が多く出た中で、「自分でできなくて悔しい」「自分でできるようになりたい」という声も挙がった。マセソン氏は、「人の手を借りることは悪いことではないが、借りる前提だと感情が揺さぶられる。単にありがたいという気持ちだけではなく、申し訳ないという感情が生まれる。不自由さや不便さを障害のある人が来た時だけ人の手で解決するというアプローチでは不十分。お金をかけないとアクセシビリティを担保できないということではなく、少し意識を変えるだけで改善できることは多いので、ぜひ皆さんには知恵を絞ってほしい。そして、良いアイディアが浮かんだ際は、ぜひ多くの方に広めていただきたい」と訴えた。

続いて、「チェアマン→チェアパーソン」「美白効果→ブライトニング効果」など、誰かが排除されている言葉を適切な表現に言い替えるワークを実施。ここでは、マセソン氏は「D&Iが欠けていると、特定の層への配慮が欠如し、致命的な判断ミスに繋がる恐れがある。全員が参加でき、自分の居場所や役割が与えられているのが共生社会だと思っている。意見が分かれた際は正解を探すのではなく、より多くの人が納得できる解を探すことが共生社会の実現において大事である」と語った。

これまでの企業とパラスポーツの関わり方は、社会貢献という形での支援が多かったが、それだけでは不安定である。長続きさせるためには、社会貢献だけでなく、企業価値と結びつけた活動にしていただきたいとマセソン氏は言う。パラスポーツは支援の対象としてだけでなく、イノベーションの宝庫であると考え方を変え、誰かに言われたことだけをやるのではなく、自分で考えて行動する時代であると、これからの企業とパラスポーツの関わり方についてメッセージを送り、最後のワークへ。

参加者が取り組んだのは、「共生社会の実現に必要なエッセンス」を考えるワーク。これまでのマセソン氏の話を受けて、各グループで活発な議論が行われた。発表では、「障害ではなく、その人個人と向き合うことを意識する」「この障害の人にはこの仕事をさせるべきという職種を限定するような固定観念をやめ、コミュニケーションを取ってできる仕事を一緒に考える」などの意見が挙がった。

各グループが考えた「共生社会の実現に必要なエッセンス」は ホワイトボードで共有を行った

発表を受けたマセソン氏は、次のように締めくくった。「これからパラスポーツ×企業で何かイノベーションを起こそうと考えたときに、受け身の姿勢では変わらない。パラスポーツで共生社会を実現するために必要な考え方を広げる活動により、SDGs達成にも繋げて、多様な視点を取り入れて様々な問題解決に取り組むことで、皆さんも生き残っていけるようになる。そして、新しい価値観を社会に向けて発信していただきたいと思っている。パラスポーツのために何かしてあげるということではなく、パラスポーツと一緒に新しい価値観を作っていきましょう」

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20221117

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