TEAM BEYOND オンラインシンポジウム
「パラスポーツの現在地とこれからの展望」

東京2020パラリンピックで高まったムーブメントをより一層発展させ、「共生社会の実現」につなげていくために、オンラインシンポジウム「パラスポーツの現在地とこれからの展望」を開催しました。
東京2020パラリンピックを終え、パラスポーツの現在地とこれからの課題を検討するとともに、新たな可能性を探っていくべく、主に「地域還元」や「まちづくり」の観点からさまざまな立場の有識者が今後の展望を語っていただきました。

基調講演「東京2020パラリンピックに向けた取り組みの成果とパラスポーツの現在地」

二宮 清純氏
スポーツジャーナリスト
株式会社スポーツコミュニケーションズ 代表取締役
二宮 清純氏画像

二宮氏からは、これまで取材されてきた方々を通した障害者スポーツの受け取り方や1964大会と2020大会でオリンピック・パラリンピックを取り巻く社会のパラダイムシフトに関するお話しがありました。

パラリンピック金メダリストで、パラリンピアンズ協会の河合純一会長を取材した際のお話しでは、「河合さんが『共生社会がどんなものかと考えたとき、ミックスジュースのように素材をすりつぶすものではなく、フルーツポンチのように、りんごやみかんがそのままの形で混ざり合い、それぞれの個性を互いに認め合うのが真の共生社会なんです。』との話を聞いて、ストンと胸に落ちた、お互いの個性や人格に敬意を払い、認め合うのが共生社会なのだ」と語りました。

社会のパラダイムシフトにおいては、1964年と2020年では、社会が成長から成熟へ、価値観が効率から快適へと変遷し、さらに高齢者率が6%から29%となり高齢化が進んできたことについてお話しいただきました。
「障害者スポーツの環境整備と高齢化社会の備えは、親和性が高く極めて重要である。東京2020オリンピック・パラリンピックを終えた今だからこそ、バリアフリー化など長くなった人生を快適に暮らしていくための備えをさらに進めていかないといけない。東京2020オリンピック・パラリンピックの成功か失敗かは5~10年しないと分かりませんが、そうすることで結果は必ず出るでしょう。」

最後に「誰にでも居場所、出番、役割のある社会も大事。この3つを担保し、みんなでワンチームになって進み、力を合わせていく。パラリンピックの開催をとおして、この考えが根付くことが、2020大会の真のレガシーではないでしょうか。」と締めくくった。

基調講演2「これからの社会課題とパラスポーツの可能性」

廣瀬 俊朗氏
元ラグビー日本代表キャプテン
TEAM BEYONDメンバー
廣瀬 俊朗氏画像

廣瀬氏からは、これからの社会課題ということで、高齢化、少子化、貧困問題、障害者雇用、ジェンダーなど多岐に渡るテーマに触れていただきました。特に障害者雇用においては、さらなる取り組みを進めるとともに、パラスポーツのもつ社会を変える力やスポーツを通じた取り組みにより、世の中を変えていくことについてお話しいただきました。

講演の前半では、「みんなが幸せにありのままに自分で生きていける社会を、スポーツをとおして作っていく取組みを進めていきたい。」と前置きした上で、「会社としても人としてもいろいろなことが問われる時代になっている。世の中に変えられるのではなく、世の中を変える会社、団体になっていくという気概をもってやっていってほしい。」と語りました。

企業・団体のパラスポーツとの関わり方については、「競技団体は、最初は少数の方々の想いで始められたことが多く、資金繰りが上手くいかなかったり、リソースを十分に割けないというような状況が散見される。企業・団体のみなさんには、ぜひ、共創してお互いの場所を作っていくというスタンスでパラスポーツと関わっていってほしい。」とメッセージをいただきました。

最後にアスリートを支える構造として、「スポーツの産業化が叫ばれる中で選手がプロ化する一方、現役だけでなく、引退後を設計していただけるとアスリートにとってもいいこと。教育事業に携わっている方には特に、アスリートのキャリア支援もお手伝いいただきたい。これからはますます企業で当たり前に働く時代ではなくて、自分のキャリアの上で、この会社で働こうという時代になると思います。皆さんがパラスポーツを支え、もう1つ踏み込んで、選手の人生を支えることにもつながれば。」と締めくくりました。

パネルディスカッション「パラスポーツ活動の地域還元とまちづくりとの関わりについて」

【登壇者】
二宮 清純氏
スポーツジャーナリスト
株式会社スポーツコミュニケーションズ 代表取締役
廣瀬 俊朗氏
元ラグビー日本代表キャプテン
TEAM BEYONDメンバー
東 一洋氏
株式会社日本総合研究所 地域・共創デザイングループ
スポーツ・イノベーション・チーム シニアマネージャー
太田 渉子氏
パラテコンドー選手
東京2020大会出場
トークセッション画像

基調講演に続き、「パラスポーツ活動の地域還元とまちづくりとの関わりについて」をテーマにパネルディスカッションを実施しました。

冒頭で、官民でスポーツ関連のプロジェクトに従事してきた東氏は、1964大会と2020大会の比較から、「1964年大会のレガシーには都市インフラ、新たなサービス産業などがあるが、スポーツに対する国民のアクセシビリティを高めたことも大きかった」と話し、私たちの生活に、スポーツが浸透してきた背景についてお話しいただきました。

トークセッション画像

そのうえで東氏は、「今大会で面白かったのが、ボッチャ。これは誰もができて楽しめる。そして、ハンディキャップを考え直すことも必要だと強く思いました。例えば子どもの遊びに鬼ごっこがありますが、小学校高学年から幼稚園児まで、地域の子どもが遊ぶ際には体格差が出ないよう、自らルールを編み出します。これもハンディキャップなんじゃないかと。スポーツでも障がいの有無にかかわらず、ルールとしてのハンディキャップで多様性を生み出すような切り口があるのでは、と思いました。」と語りました。

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地域という観点では、スキーのスポーツ少年団の経験を通してパラアスリートとなった太田選手が「健常者と障がい者が一緒にできるという点では、今すぐできる、一緒に楽しめるパラスポーツはたくさんあります。スキーの少年団でも、今度パラルールでやってもらえることになりました。海外では練習場で障がい者と健常者が一緒に練習する光景も当たり前のようにあります。東京大会をきっかけにナショナルトレーニングセンターのような専用施設もできましたし、地域に発信していきたいです。」と思いを述べました。

廣瀬氏は、地域には食や観光など地域独自の特色がある。それぞれ強みを生かしながら、スポーツ、競技団体とマッチングさせることが大切だと言及。「地域の人たちの連携というのも『プロジェクトに参加してください』ではなく、それぞれの強みを生かすことが主体的な活動へ繋がり、広めるための熱量になると思います。共創型で巻き込むことによって継続され、それが地域の文化になると考えています。」と語りました。

東氏は、スポーツ界が企業・団体のみなさんと連携して地域課題や社会課題の解決に向けたアクションを起こす上で、求められてくることについて「民間団体との連携でしょうか。今後は、まずスポーツの現場の人が、スポーツを含めたさまざまな民間団体とつながって、いわゆる社会課題解決に向けたプログラムを作る。そして役所に、ここまでは我々でやるので、ここからは役所が受け取って、というコミュニケーションに変わっていくべきだと思います。」と提言されました。

最後の総括では、二宮氏が「これ(東京パラリンピックや本シンポジウムのような取り組み)が果実になればいい。私は、日本が障害者スポーツと関われば国が変わる、それくらいの思いです。今大会では多くの方がパラリンピックをテレビなどで見て、感動したはず。御三方から出たように、障害者スポーツは社会課題の解決につながる。今後、オリンピック・パラリンピックが終わってよかったということだけでなく、ムーブメントを続けていきたい。」と決意を述べ、本ディスカッションは幕を閉じました。

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20211209

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