TEAM BEYOND オンラインシンポジウム
「パラスポーツのパートナーシップを考える」

2021年12月17日、TEAM BEYONDオンラインシンポジウム「パラスポーツのパートナーシップを考える」が開催された。
 本シンポジウムは、企業・団体メンバーをはじめ、パラスポーツの活動を展開する方々が、これからの活動のあり方や今後の方向性を検討する上で有益な情報を発信し、パラスポーツ活動の一層の発展を目的としている。
 今回は、パラスポーツと企業・団体や個人など各セクションとのパートナーシップ関係の在り方について今後の展望を有識者による基調講演や事例紹介、ディスカッションを通じて探った。
 基調講演では「パラスポーツのパートナーシップについて」をテーマに、スポーツコンサルタントの髙橋オリバー氏が登壇。世界の名だたる企業や団体でスポーツに携わってきた同氏。2019年に事故で失明するも仕事に復帰し独立、今もなおスポーツ界の発展に尽力し、自らも新たなチャレンジを続けている。スポーツにおけるスポンサーについて、「社会の流れやトップの意向でなんとなく契約するのではなく、互いにWin-Winの関係を構築できる次のステップを考えていくことが重要。これからもパラスポーツの発展に尽力していきたい。」と力強く語った。
 事例紹介では「ブラインドサッカーを通じた10年パートナーシップについて」をテーマに実際にパラスポーツとパートナーシップ契約を締結している参天製薬株式会社の事例を同社代表取締役社長兼CEOの谷内樹生氏に紹介いただいた。「世の中の価値観を変えていく取り組みですので、これは長期でやっていかなければいけません。そこで、短期的なイベントに向けたスポンサーシップではなく、協会と我々が手を携えて、ともに戦っていくパートナーシップを明確にしていく、息の長い活動であるということを明確にしたかった。」とスポーツ側と企業・団体の関係が発展的で継続するものになるためのヒントや新しい価値観を共創する関係になることの重要性について語った。

基調講演「パラスポーツのパートナーシップについて」

スポーツコンサルタント
THE VISION株式会社 代表取締役社長
髙橋 オリバー氏

冒頭、「これまで私はさまざまな組織でスポーツ・マーケティングに携わり、オリンピック・パラリンピックに関しては1998年の長野大会から今年の東京2020大会まで、冬・夏ともにずっと接してきました。それを踏まえて、スポーツのスポンサーシップについてお話しします。」と前置きし、「東京オリンピック・パラリンピックでは、約100社のスポンサーがつかれました。その中で、もう1回やりたいと思う企業が25%あれば、大成功かと思います。」と自身が関わった東京2020大会のスポンサーシップを振り返った。
 その上で、東京2020大会のレガシーは「選手、もしくは大会をスポンサードして、その大会で得るものではなく、その先5年後、10年後にあのときこれをやったから今これがある、というもの。従って、私は100社の10分の1でいいから、今後もスポーツ界に携わっていただける企業があれば、1つ大きな達成ではないかと思う。」と語った。

さらにスポンサーになった理由についても「なんとなく波に乗り遅れるからとか、社長が○○競技が好きだからとか。決して悪いことではないが、これはぜひやめていただきたい。もしそういった企業があるとしたら、次のステップを考えていただきたい」と語り大会やアスリートとスポンサーが互いにWin-Winの関係を構築することの重要性を訴えた。
「そのために、選手側はなぜスポンサードしてもらっているのか考える。スポンサーの企業も、アスリートに何をするのか考えることが大切だと思います。」

髙橋 オリバー氏画像

さらに、昨今のインタビューで、「5年10年先、パラスポーツをどう考えていますか?」と問われると、多様性、ダイバーシティ・アンド・インクルージョンの観点から、「オリンピック・パラリンピックを分ける必要はあるのでしょうか?」という話をすることがあるという。これは、どうしても放映権やテレビの視聴率が、オリンピックとパラリンピックで若干差が出るからだ。
 「今回の東京パラリンピックは、今までにないテレビの放送時間だったと聞いています。それとともに、過去大会のリサーチからも、パラリンピックというのは開催国において、オリンピックよりも国民の皆さんの頭には印象として強く残っていくのです。」と強調し、「ぜひこれを、日本も1つのアドバンテージと考えていただきたい。それこそ「TEAM BEYOND」という組織ができるのも1つのレガシーだと思うので、引き続き注力して継続していただきたいです。」と締めくくった。

事例紹介「ブラインドサッカーを通じた10年パートナーシップについて」
~“見える”と“見えない”の壁を溶かし社会を誰もが活躍できる舞台にする~

参天製薬株式会社
代表取締役社長兼CEO
谷内 樹生氏

まず、自社のインクルージョン戦略について語った上で、「参天製薬は2017年からブラインドサッカーの支援を行っています。「Happiness with Vision」というパーパスを掲げ、眼を通じて世界の幸せに貢献しようとしています。その延長線上にあるのは「インクルーシブな社会」。つまり「視覚障がい者と晴眼者が混じり合ってともに活躍できる社会」をつくりたい」と考えを述べた。

「この考えを、日本ブラインドサッカー協会の松崎英吾専務理事とお話をさせていただき、同様の理念を掲げる日本ブラインドサッカー協会、インターナショナル・ブランドフットボール・ファウンデーションとの関係性をもう一歩深めていくこととし、10年の長期パートナーシップ契約を締結しました。」

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10年という異例とも言える長期的な契約に至ったことについては、「世の中の価値観を変えていく取り組みですので、これは長期でやっていかなければいけません。そこで、短期的なイベントに向けたスポンサーシップではなく、協会と我々が手を携えて、ともに戦っていくパートナーシップを明確にしていく、息の長い活動であるということを明確にしたかったということです。」

活動内容においては、「まだまだ晴眼者と視覚障がい者を取り巻く環境にはさまざまな課題があります」と語った上で、「ブラインドサッカーを出発点として、視覚障がい者にとってのスポーツ、新たな職業、イノベーションへの参画などの多様な社会参画への架け橋となることを目指し、「見える”と”見えない”の壁を溶かし、社会を誰もが活躍できる舞台にする」ことをビジョンとして掲げました。それに基づいたワークショップを掲げて、「共体験」「イノベーション」「QOLの向上」の3つをテーマにさまざまな活動を展開しています。」とその内容について紹介していただいた。

さらに、「「“見える”と“見えない”の壁を溶かし、社会を誰もが活躍できる舞台にする」というビジョン実現は大きな社会課題の解決であり、1つの企業だけで解決することは困難です。そのためには多くの力を集めることが欠かせません。」と今後はより一層の社会的なムーブメントにつなげる必要性を訴えた。

最後に、「視覚障害が生活に与える深刻な影響について、「見える”と”見えない”の壁」を溶かすためにも、まだまだ多くのことを行う必要があります。この課題解決に向けて、より多くの方々の協力、そして何よりも行動が必要です。引き続き、皆様のご理解とご支援をお願いします。」と締めくくった。

パネルディスカッション「パラスポーツと共創する新しい未来」

【登壇者】
スポーツコンサルタント
THE VISION株式会社 代表取締役社長
髙橋 オリバー氏
参天製薬株式会社
代表取締役社長兼CEO
谷内 樹生氏
サントリーホールディングス株式会社
パラトライアスロン選手
東京2020大会出場
谷 真海氏
早稲田大学スポーツ科学学術院 教授
松岡 宏高氏

基調講演と事例紹介に続き、パネルディスカッションが行われた。テーマは「パラスポーツと共創する新しい未来」。

まず谷選手が自己紹介をし、次は松岡氏によるパートナーシップの研究事例の解説。松岡氏は、契約には企業とアスリートの互いにメリットを享受できるパートナーシップが基本だと言う。そのうえで、ブラインドサッカーと目薬の参天製薬の良好な関係性に触れた。

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とはいえこの事例は稀であり、むしろミスマッチな関係が多いと言う。しかし、「オリンピックといえばコカ・コーラといった認知があるように、長く続けることでベネフィットが生まれます。また、スポーツと企業のミッションが一致していることをアピールすることも大事です。」と述べた。さらに「パラスポーツは、社会貢献を目的とした企業のパートナーシップに強く当てはまる。色々な可能性があると考えられます。」と展望も語った。

その後は松岡氏がモデレーターとなり、企業と支援についての振り返りを登壇者に投げかけた。谷氏は「2004年からパラリンピックに関わっていますが、選手の雇用関係も、費用の負担額も、環境は格段に良くなりました。」と前置きしたうえで、「パラリンピアン全体として今がバブルという認識があり、今後が心配です。若い世代はこれが当たり前という意識をもっているかもしれません。この状況を続ける努力、広めていただく努力が必要です」と課題も述べた。

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次に、オリンピックとパラリンピックを比較したうえでの、パラスポーツの優位性を髙橋氏が言及。「オリンピックでは味わえない感動がパラリンピックにはあります。ゆえにアンケート結果でも、イベント全体のインパクトはパラのほうが大きい。パラリンピックをサポートする企業が増えている背景には、そのベネフィットがあると思います」と語った。

単純に視聴率や観客数だけでは測れない感動が、パラスポーツにはあると登壇者で認識が一致。企業側の立場である谷内氏は「社員がインクルージョンをしっかり認識することで、エンゲージメント向上につながります。また、社外に存在意義や戦略を語るときの納得感や説得力も上がります。社内外両方にメリットがあり、我々の想定以上に反応が出てきています。」と話した。

視聴者との質疑応答を経て、最後に松岡氏が「ぜひこれからも機会を設け、あるいは参加していただき、人ごとではなく自分ごととして捉えられるようにして、興味のある方はどんどんこういう取り組みに関わっていただけたらいいなと。そうなることが、本日のパネルディスカッションの成果かと思います。」と所感を述べ、シンポジウムは幕を閉じた。

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20220119

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