支援企業・団体の声
公益財団法人鉄道弘済会 義肢装具サポートセンター

障がいへの理解を広め、より多くの義足ユーザーに
スポーツを楽しんでもらうための活動を展開

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スポーツ用義肢を扱い、義手・義足のアスリートを支える公益財団法人鉄道弘済会義肢装具サポートセンター。障がい者スポーツの門戸を広げようと、スポーツ用義足の板バネを貸し出すとともに、カーボン製よりも低価格で提供できるナイロン樹脂製の板バネを開発。さらに出張授業や同センターへの見学受け入れにも力を入れています。

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板バネの貸し出しや開発で裾野を広げる

義肢・装具の製作から装着訓練までを担う民間で唯一のリハビリテーション施設、公益財団法人鉄道弘済会義肢装具サポートセンター。同センターの義肢装具士・臼井二美男さんは、個人的な活動として、約30年前から義足ユーザーを中心とした陸上チーム「スタートラインTokyo」を主宰。多くの義足ユーザーにスポーツの楽しさや体を動かす気持ちよさを伝えるとともに、国内外の障がい者スポーツ大会に出向き、障がい者アスリートをサポートしてきました。

その活動を鉄道弘済会としても支援しようと、2000年以降、国内外の主要な大会へオフィシャルメカニックとして派遣しています。

さらに障がい者スポーツの裾野を広げたい。そう考えた同センターは、「スタートラインTokyo」への参加者を中心に、2015年よりカーボン製のスポーツ用義足、通称「板バネ」の貸し出しをスタートさせました。その意図を、同センターの中野啓史所長が説明します。

「板バネは1本30万円~70万円ほどと非常に高価です。しかも、公費による補助の対象ではないため、自己負担で購入しなければなりません。スポンサーがついているトップアスリートはそれでもいいかもしれませんが、日常の中で気軽にスポーツを楽しみたい方にはハードルが高く、それがスポーツの始めにくさや続けにくさにつながっていました。そこで、1年につき4名ずつ、板バネをお貸しすることにしたのです」
(中野所長)

板バネといえば、短・中距離などのトラック競技や走幅跳、走高跳といった跳躍競技、トライアスロンなどがすぐに思い浮かぶかもしれません。しかしその利用シーンは広がっていて、フルマラソンやバドミントンに使う障がい者アスリートもいます。同センターでも、そうした多様なアスリートに板バネを貸し、意見を聞くことで、新たな板バネの開発にもつなげています。

また、子ども向けにもっと手に入れやすいものをと、ナイロン樹脂製の板バネを開発。2019年に意匠登録をしました。

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「カーボン製の板バネは、子ども向けでも25万~30万円ほどします。しかも、子どもはすぐに成長してサイズが変化し、買い替えが発生するため、わが子を思い切り走らせてあげたいと考える親御さんたちでも手が出なかったのは当然です。この問題を解決するべく、ナイロン樹脂で板バネを製作したところ、1つにつき約8万円と価格を大幅に抑えることができました。早速使ってくださっているお子さんもいます」(中野所長)

この板バネの耐荷は試験済みのため、大人の女性でも使用可能です。今後より価格を下げられる見込みとのこと。また、さらなる改良にも取り組んでいます。

「一般のお子さんたちと同じように、靴を履いて体育の授業を受けたり、運動会で走ったりできるよう、板バネの新たな研究も考えています。こうした板バネのバリエーションをこれからも増やしていきたいですね」(中野所長)

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理学療法士とともに初心者向け走行体験会を実施

現在、日本の下肢切断者は約6万人、そのうち約4000人が同センターに通っているといいます。その中から約1000人にアンケートを実施したところ、約30%が「スポーツをしてみたい」「板バネを履いてみたい」と回答したそうです。それと同時に、その方たちが実際にスポーツをするまでには至っていないことも分かりました。

「スポーツをしない理由の一つに、どこに行けばいいか分からないという声が少なくなかったのですが、これには正直、驚きました。メディアで臼井の活動を取り上げていただく機会が増えているので、ご存じの方も多いのではと思っていたのですが、こちらの想定以上に知られていなかったわけです」(中野所長)

こんなに走ってみたいという方がいるのなら、機会を提供しよう。そう決断した同センターでは、2017年より日常用義足を履いている方を対象に、同センターの屋上で競技用義足を使用した走行体験会「THE FIRST STEP」をスタートさせました。同センターは診療所を併設しているため、「THE FIRST STEP」開催時はリハビリテーションを担当する理学療法士と義肢装具士のサポートに加え、医師や看護師も駆けつけられる環境にあり、参加者も安心して板バネ体験を楽しめます。

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「板バネを履いたからといって、だれもがすぐに走れるわけではありません。それでも、当センターに18年間通っている方は相当楽しかったようで、体験後すぐに板バネを購入されました。また、義足使用歴40年の60歳代の方は、“40年ぶりに走って風を感じられた”とアンケートに書いてくださいました。こういう声があると、やってよかったなと思います」(中野所長)

また、体験会は同センターの診療所に入院中の患者さんも見学できます。

「切断直後の入院患者様がほんの数カ月前に社会復帰し、歩いたり走ったりしている方たちの姿を見ると、少し先の自分の姿を思い描け、大きな励みになるようです」(中野所長)

体験後、さらに競技を続けたい場合は「スタートラインTokyo」を紹介します。参加者の走りたいという気持ちを一時的なものとせず、一貫したサポート体制を築けているのは同センターだからこそでしょう。

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“義足ユーザーも自分たちと同じ”
子どもたちが実感できる出張授業

同センターは、2008年に現在の荒川区に移転。同時に展示室を設け、見学を随時受け入れてきました。2013年度には年間約300名だった見学者数は、2019年度には1000名超と3倍以上に増加。

「当センターでは、展示室の見学だけではなく、患者様のリハビリの様子を見ていただいたり、義足体験もしていただいています。すると、下肢を切断してから義足を履いて歩けるようになるまではもちろんのこと、街中を義足で歩くことがいかに大変か、さらに、障がい者アスリートのように板バネで跳んだり走ったりすることがいかにすごいかを実感していただけるようです」(中野所長)

また出張授業も行っており、今年度は都内の幼稚園・保育園・小・中・高校を中心に約40校訪れました。出張授業を担当している打越昭宏総務課担当課長がその手ごたえを語ります。

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同公財義肢装具サポートセンター
(左) 打越昭宏課長 (右) 中野啓史所長

「義足ユーザーも自分たちと何ら変わらないということを子どもたちに知ってほしいとの先生方の声を受け、私たちのような事務方と一緒に義足の職員が伺っています。そして、義足体験とともに、義足の職員が下肢切断に至る経緯を話したり、板バネで走る様子を見せたり、子どもたちに断端(切断部)を触ってもらったりしています。こうした内容は私たちならではのようで、好評をいただいています」(打越課長)

こうした出張授業は、鉄道弘済会が運営する保育所・認定こども園や児童養護施設などでも行っています。出張授業として訪れたり、同センターの活動の様子を鉄道弘済会内のイントラネットで発信したりすることで、全国に点在する各事業所間に一体感が生まれ、帰属意識の醸成にも一役買っているそうです。

また、出張授業には次世代育成の意味も込められています。この点で現在急務とされているのが、スポーツ用義肢も扱える義肢装具士の育成です。

「全国に約4000人いる義肢装具士のうち、スポーツ用義肢に関わっている者はほんの数名です。今後、さらに障がい者スポーツの裾野を拡大させたいと考えると、明らかに不足しています」(中野所長)

そこで、同センターでは独自の取り組みを行っています。

「『THE FIRST STEP』を若手の義肢装具士のOJTの場とし、スポーツ用義肢の第一人者である臼井との共同作業を通じて、体験者一人ひとりに応じたセッティングを経験させています」(中野所長)

実は、下肢切断の理由の多くは糖尿病や腫瘍といった病気で、高齢の方が多いため、義足のニーズもそのほとんどが日常用です。つまり、そもそもスポーツ用義肢のニーズが少ないため、それを扱える義肢装具士も増えにくいというわけです。しかし、中野所長はそれでも育成するべきと主張します。

「どんなに少ないニーズでも、要望があればすぐに応えられるようにしておくのが専門職の役割ではないしょうか」(中野所長)

今後も同センターの取り組みは続きます。同様に、企業や団体、学校でも障がい者スポーツ支援や障がい者理解への取り組みを続けてほしいと中野所長と打越課長は訴えます。

「車いすは知っていても義足を知らない方がまだまだ多いのが現状です。私たちは今後も引き続きセンター見学を受け入れ、出張授業も行います」(中野所長)

「障がいや義足を知ることは障がい者スポーツ支援の第一歩となり得ます。そのきっかけとして、ぜひご活用いただけたらと思います」(打越課長)

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公益財団法人鉄道弘済会 義肢装具サポートセンター
住所 東京都荒川区南千住四丁目3-3
所属人数 65名
電話 03・5615・3313(代表)
URL http://www.kousaikai.or.jp/support/
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