支援企業・団体の声
東京都立大学
ボッチャロボットや学生ボランティアなど
大学での研究・学びをパラスポーツ振興に活用
東京都立大学は、7つの学部を擁する総合大学です。そのひとつである健康福祉学部は、看護師、理学療法士、作業療法士、放射線技師の養成を目的とした研究型の医療系教育機関。同大学では、健康福祉学部を中心に大学全体で、教育や地域連携の一環としてパラスポーツ振興に取り組んでいます。
さまざまな切り口からパラスポーツ振興に貢献
教育機関である東京都立大学健康福祉学部がパラスポーツ振興の取組を始めたきっかけは、2017年のボッチャ体験教室です。誰でもできることからボッチャを選びましたが、その後、参加者から他のスポーツも体験したいという声があり、2018年にはさまざまな種目が体験できるパラスポーツ体験教室を開催。2019年にはさらに高齢者を対象としたユニバーサルスポーツ体験教室や子どもを対象としたパラスポーツ体験教室も実施しました。
また同大学では2019年より、ボッチャボールの投球ができるマシン「ボッチャロボット」を制作。健常者も手足に障がいのある人もみんながロボットを介してボッチャを楽しんでほしいという想いから、現在も研究が進んでいます。
ボッチャロボットに、ボッチャ体験教室の参加者も興味津々。研究機関という側面を活かしたパラスポーツ振興です。
「パラリンピック競技だけが障がい者スポーツではなく、ペガーボールのようなニュースポーツも障がいの有無にかかわらず楽しめるし、運動が苦手な方でも高齢の方でもプレーできます。“身体を動かすのがおもしろい”と思っていただくことを狙いとして、当大学では様々な種目を体験教室に取り入れています。」
そう語るのは、荒川キャンパス管理部管理課 庶務係企画担当の加藤良治係長。
五人制サッカーの体験教室に参加した小学生から、「視覚障がいのある方へ声がけをするようになった」と感想が届くこともあり、パラスポーツの普及だけでなく、パラスポーツを通じた人間形成など、教育機関としての役割を果たせていると感じています。
また、体験教室だけでなく、2020年1月には健康福祉学部長杯のボッチャ大会を開催しました。
「せっかく盛り上がった気運が、パラリンピックが終わった後に抜けてしまうのではもったいない。パラスポーツに対する興味や関心が少しでも永続できる形を考え、これまでに体験教室に来てくれた方が楽しんで参加できる大会を設けて、日々の体験教室で身に付けたことを披露する場を提供しました。」(加藤さん)
1回の体験教室では表面しか学べないこともありますが、大会へ向けて何度か継続的に体験したり実際に選手と一緒に試合をすることで、楽しさだけでなく難しさや奥深さを知ることができます。そんな意図のもと、大会を開催しました。
2020年以降も体験教室やボッチャ大会などの取組を続ける予定でしたが、コロナ禍により残念ながら難しくなってしまいました。しかし、少しでもパラスポーツを知ってもらうためにと、さまざまな切り口から取組を行っています。
そのひとつがパラアスリートへのインタビュー動画配信です。現役のパラ走高跳日本代表 鈴木徹選手、パラトライアスロンの土田和歌子選手、車いすラグビーの池崎大輔選手、車いすテニスの大谷桃子選手らにインタビューをした動画を「都立大Channel」に公開し、アスリートのプライベートなお話を伺うことで選手に親近感を持てるように工夫しています。
「パラスポーツが普及しない理由のひとつに『どんな選手がいるか分からない』という声があります。そこで、パラアスリートの動画配信を通して身近に感じていただくことを目指しました。ずっとトレーニングをしているわけではなく、私たちと同じような生活をしているところを見てもらうことで、親しみを持ってもらえれば。」と加藤さんはいいます。
できることから少しずつ。“継続”することが重要
同大学には、初級障がい者スポーツ指導員の資格をとれる科目もあるそう。実習の一環として学生に体験教室やボッチャ大会の運営側としても参加してもらい、パラスポーツの素晴らしさだけでなく、運営の中で配慮することなどの気付きを通して意識の啓発に役立てています。
「以前はパラスポーツをよく知らず、難しいものと思っていたのですが、職員としても参加者と一緒に学んでいけるし、運動が苦手でも楽しくできるということを知りました。実際に体験してみると『またやりたい』と思えるようになり、回数を重ねていくうちに、どのように周囲に広げていくかを考えるようになりました。」(加藤さん)
体験教室の運営を担当している荒川キャンパス管理部管理課 庶務係企画担当の鈴木直子さんも、「実際に見たり1回やってみたりすると面白さは伝わります。食わず嫌いならぬ“やらず嫌い”になるのではなく、興味があるものを選んで1度は体験してみてほしいですね。」といいます。
ボランティア体験は、大学内の体験教室だけにとどまらず、東京都障害者スポーツ大会など、大規模な大会への参加まで広がっています。学生はもちろん、一般の人でも同大学が実施している「スポーツボランティアプログラム」に応募することで参加できます。このプログラムでは、スポーツボランティアに必要な知識や技術を身に付け、イベント主催者とボランティアの架け橋となるボランティアリーダーを目指すことができます。
こういった活動を通して、さまざまな側面からパラスポーツと関わるのが同大学のパラスポーツ振興活動の特徴です。
しかし、「単発的なイベントをしても『パラスポーツって楽しいんだな』で終わってしまいます。大変ですが、地道に少しずつでも続けていくことが大事だと思います。」と語るのは健康福祉学部 学部長の渡邉賢教授。
学生を巻き込んで教育の一環として実施するためにも、授業やメール、ホームページ、学科の教員にお願いして周知してもらうなど、学生に認知してもらう方法を工夫しました。地道な努力の結果、一年目に参加してくれた教員や学生が発信源になって、今では口コミを介して区や県を超えて参加してもらえるように。同大学の場合は、地域の人たちに参加してもらうことで、大学だけでなく自治体を巻き込んで進めることができたことが良かったそう。今後、パラスポーツ振興を検討している企業・団体も、できることから始めて、継続することを大切にしてほしいと渡邉教授は言います。
研究機関の強みをパラスポーツ振興に反映
同大学の理学療法学科には、パラアスリートの身体測定をして、脊髄損傷した選手の体温調節機能に関する研究を行ってきた信太奈美准教授が在籍しています。障がい者は健常者よりも低い位置の温度環境が反映されるため、荒川キャンパスの体育館は床冷暖房を備えており、広く都民に対して施設貸出も行っています。
「今の研究対象はトップアスリートですが、今後は暑熱環境下における障がい者特有の影響の研究などにより、誰でも安全に安心してパラスポーツができる環境を整えられるよう、東京都や自治体とも連携して研究を進めていきたいです。」(渡邉教授)
コロナ禍の今は体験教室ができない状況ですが、オンラインを駆使することで今後もパラスポーツを体験できる場や競技の見どころ、ルールが分からないという声が多いので、そういった動画を配信していきたいとのこと。在学中の学生でなくても参加できるイベントやプログラムもありますので、パラスポーツとの関わりを持つきっかけとして気軽に参加してみてはいかがでしょうか。
※取材前の検温を実施。写真撮影時以外はマスク着用、ソーシャルディスタンスの確保など感染防止対策を行った上で取材を実施しています。
東京都公立大学法人
担当部署 | 東京都立大学荒川キャンパス管理部 |
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所属人数 | 44名 |
住所 | 東京都荒川区東尾久7-2-10 |
電話 | 03-3819-1211 |
URL | https://www.hs.tmu.ac.jp/ |