支援企業・団体の声
上智大学
教職員と学生が同じ立場と視点をもって活動
パラスポーツ振興を通して共生社会の実現に寄与
「他者のために、他者とともに(For Others, With Others)」を教育精神として掲げ、隣人性や国際性を重んじた教育を実践する上智大学。教職員と学生による「ソフィア オリンピック・パラリンピック プロジェクト」を立ち上げるとともに、共生社会の実現を目指す学生プロジェクト「Go Beyond」の活動を通し、パラスポーツの普及に取り組んでいます。
教職員と学生の取り組みに海外在住の卒業生も協力
上智大学が自校の教育精神に基づき、「ソフィア オリンピック・パラリンピック プロジェクト」を立ち上げたのは2016年4月。その後、平昌2018冬季大会の調査に参加した学生によって、ソフィア オリンピック・パラリンピック学生プロジェクト「Go Beyond」が2018年6月に設立されました。
メンバーは現在の1~3年生で約90名。立ち位置はサークル活動などとは異なり、教職員と学生が同じ立場・視点でプロジェクトを動かしていることが特徴です。ともに東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の支援にとどまることなく、ボーダーレスな共生社会の実現を目指して一丸となった活動を展開しています。
「Go Beyond」の代表を務める、総合人間科学部教育学科3年生(取材時。以下同)の加藤愛梨紗さんが、その内容を教えてくれました。
「直近では北京2022冬季大会を楽しむための講演を、元アイススレッジホッケー銀メダリストの上原大祐さんを招いて開催したり、車いすバスケットボールの大嶋義昭選手・車いすフェンシングの安直樹選手を招いたパラスポーツ体験会を他団体と協力して行ったりしました。」(加藤さん)
ほかにも、他大学と連携して開催するパラスポーツ大会「パラ大学祭」を実施するなど、学生ならではの視点から同世代をはじめ幅広い層や社会に対して、だれもが輝ける社会の実現に向けてアプローチをしています。
「『パラ大学祭』は、2022年3月24日に開催する回で第6回目となります。2022年度の活動内容はこれから決めていきますが、大きなところではパリ2024大会に向けた企画を進めていくことになると思います」(加藤さん)
上智大学は国際色が豊かで、100年以上の歴史をもつ名門。卒業生によるソフィア会という団体があり、各国在住の卒業生と積極的に連携して活動をしています。
「パリ在住のソフィア会の方との交流はこれからですが、パリには協定校があり、そちらの学生と連携しています。夏季オリンピック・パラリンピックは、東京からパリへとつながっているので、学生同士の交流で一緒にプロジェクトを進めていきたいと思っています」
そう話すのは「Go Beyond」の副代表で、総合グローバル学部総合グローバル学科3年生の斎藤ましろさん。
続けて、上智大学の学生局学生センターに所属し、「ソフィア オリンピック・パラリンピック プロジェクト」の事務局員である髙松理沙さんが、同校の強みを聞かせてくれました。
「各国に多くの卒業生がおり、さまざまな面で協力いただいています。リオデジャネイロ2016大会や、平昌2018大会で視察に行った際も、現地在住の卒業生の方に案内していただきました」(髙松さん)
パラスポーツを通して“共生”のメッセージを発信したい
「Go Beyond」が共生社会の実現を目指すうえで大切にしていることが、パラスポーツとの接点を増やしていくこと。学内はもちろん、学外に向けたアプローチにも積極的で、各種イベントは参加対象を限定せずに開催することが珍しくありません。
また、共生社会について考えるきっかけを作ることにも注力しているといいます。斎藤さんが一例を教えてくれました。
「たとえば『パラ大学祭』では既存のスポーツ以外に、学生で考案したオリジナルスポーツも実施しています。これは、スポーツはルール次第で多様性を生み出せるということや、パラスポーツはルールによって工夫されているということを実感していただきたいからです」(斎藤さん)
斎藤さんは自身の経験として、入学時に車いすバスケットボールを体験して楽しかったことが「Go Beyond」に参加するきっかけになったと言います。
「車いすに乗ることで、走るのが苦手な人も、得意な人と同じ条件になります。これは体験することによって理解が深まり、インクルージョンにもつながっていくのかなと。ルールの工夫によって生まれる面白さも、パラスポーツの魅力だと思います」(斎藤さん)
パラスポーツに触れることで、パラスポーツは障害者のためだけではなく、だれでも楽しめるスポーツであると知ってもらうことができる。まずはその認識から。そしてその先の理解へと深めていきたいと話すのは、「Go Beyond」の副代表で総合人間科学部社会学科3年の信岡 幸生さん。
「一緒の立場でスポーツができるなら、スポーツ以外でも共生できる。そこにハードルがあるとしたら、どう解決していけばいいかを考えるきっかけに。それを多くの方が考えるようになれば、より生きやすい社会になると思います。ただパラスポーツの魅力をアピールするだけでなく、だれもが一緒に生きていけるというメッセージも発信していきたいですね」(信岡さん)
上智の教育精神がパラスポーツの精神とつながっている
「パラ大学祭」は他大学と連携して開催していますが、学生同士の連携で他大学とコネクションを生み出せるのも「Go Beyond」の特徴。その中で、各大学の強みを生かして協力し合っていると斎藤さんは言います。
「たとえば、日本体育大学さんはスポーツに詳しいので、私たちが試合形式でわからないことがあると、教えていただくことがありますね。『パラ大学祭』のルールに関してもさまざまなアイデアが飛び交いますし、これからも学生ならではの強みをお互い生かしながら、活動の幅を広げていきたいです」(斎藤さん)
このようにパラスポーツの支援活動は他校でも行っているものの、教職員と学生が手を取り合って実施している大学は珍しいとか。髙松さんは、「思想の多様性を認め、多種の思想の学問的研究を奨励するという当校の教育理念が、パラスポーツの精神とつながるところがあるからだと思います。これからも、上智大学らしい貢献のあり方を考えていきたいです」と語ります。
教職員と学生が同じ立場・視点で活動していることは、学内の施設面でも大きな影響を与えています。その一例が、四谷キャンパス内の体育館の設備。
「体育館のメインフロアは2階にあるので、以前は車いすの学生が利用することは困難でした。そこを『Go Beyond』のメンバーと共に働きかけたことでインクルーシブな教育環境を考える機運が生まれ、昇降機とエレベーター設置につながりました。」(髙松さん)
共生社会への理解を深めていくためには、体験の機会を提供して巻き込んでいくことが大切。「パラ大学祭」を自校のキャンパスで行うことにも意味があると信岡さんは言います。
「当初は、車いすバスケットボールは体育館の床が傷つくのではないかと心配されていましたが、試しにやってみたら大丈夫ということで理解を得ることができました。当事者目線で考えることの必要性を改めて実感しましたね」(信岡さん)
他大学とだけでなく、パラスポーツ振興に取り組む企業とも積極的に連携している上智大学。あいおいニッセイ同和損保とは連携協定を結び、所属アスリートと沖縄で出張授業を行ったり、花まる学習会とはボッチャの親子大会を開催するなど。
「オリンピック・パラリンピック開催地である東京。この都市にある大学として、いっそうパラスポーツの魅力を世界へ発信していきたいです」と語る、代表の加藤さん。学生主体のパラスポーツ振興活動をリードする「Go Beyond」の取り組みは、今後も注目です。
上智大学
担当部署 | ソフィア オリンピック・パラリンピック 学生プロジェクト Go Beyond |
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所属人数 | 86人(2022年2月現在) |
住所 | 〒102-8554 東京都千代田区紀尾井町7-1 |
URL | https://www.gobeyond-sophia.com/ |