支援企業・団体の声
特定非営利活動法人D-SHiPS32
2022.12.22

障害者と健常者とが共有できる場を創造
先入観や無関心を取り払って真の共生社会を実現

障害者と健常者が「体験」を共有することで、子どもたちが夢を持って挑戦できる精神を育て、当たり前のことが当たり前にできる社会を目指す、特定非営利活動(NPO)法人D-SHiPS32(D-SHiPS32/以下、D-SHiPS32)。事業は多岐にわたりますが、その中からパラスポーツに関する取組について、上原大祐理事長にインタビューしました。また、取材にはD-SHiPS32が手掛ける「パラ大学祭」学生運営部代表で、中央大学3年生の持田温紀(はるき)さんもご参加のうえ、それぞれの視点で活動内容や想いを語っていただきました。

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「共生」以前に「共有」が大切

D-SHiPS32の設立は2014年。もともとパラアイスホッケーの日本代表選手として活躍していた上原さんが、現役時代に大会で北米を訪れた際、現地で感じたパラスポーツの在り方に感銘を受けたのがきっかけでした。日本とは圧倒的な違いがあったと上原さんは言います。

「向こうでは、障害がある子どもたちがのびのびとスポーツをしています。しかも、健常者や大人に混じって行うことも珍しくありません。ジュニアのチームもあり、大会もシニアとジュニアの部を合同で行うので、参加者も運営側も学びになるし相乗効果も生まれます。でも日本は違いますよね。だから、もっと環境を変えるための活動をしたいと思い、一度引退(2017年に復帰し、2018年に再引退)してD-SHiPS32を立ち上げました」(上原さん)

日本と米国との根本的な違いのひとつが、先入観や固定観念。それが、車いす利用者への体育館の貸し出し不可や、健常者と障害者で利用区分を分けるといったことにもつながっているとか。

「日本では、健常者と障害者が交わることで障害者にケガをさせてはいけないとよく言われます。でも、健常者同士だってケガすることはありますよね。車いすのタイヤ跡が付くから体育館は貸せませんというケースも多いですが、今は跡がつかないタイヤも増えています。

また、パラスポーツは障害者にしかできないスポーツと勘違いされていると思いますが、大きな誤解です。たとえば、健常者が車いすに乗れば、私たちは一緒にスポーツを楽しめるんです。アメリカやカナダには、障害者に対するこうした先入観はないように思います。だからパラスポーツも、より身近なんでしょうね」(上原さん)

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D-SHiPS32が理念のひとつに掲げているのが、障害者と健常者との体験の共有。昨今よく取り上げられる「共生」以前に、「共有」が大切だと上原さんは言います。

「共生とはよくいわれますが、ある意味抽象的ではないでしょうか。何をすると真の共生社会になっていくのか、そこには課題があると思います。その意味では、時間、場所、楽しさ、感動、こうした共有の場をつくっていくことが、共生社会につながっていくというのが私たちの考え。だからこそ、体験の共有を生み出していくことがD-SHiPS32の理念であり、団体の活動指針となっています」(上原さん)

学生時代のパラスポーツ体験が卒業後に生きる

D-SHiPS32は各大学がパラスポーツを推進する「パラ大学」や「パラ大学祭」の仕掛け人としての活動も行っていますが、そこには上原さんが抱く若者への期待があります。また、前職では新卒採用の担当をしていたこともあり、学生とのコミュニケーションは得意分野。そこで得た経験も、「パラ大学祭」の事業につながっています。

「大学生は社会に出る一歩前の段階。そこで障害者やパラスポーツへの理解を深めてもらうことが、卒業後に生きてくると考えています。たとえば、進路が教職員であれば子どもたちに実体験からのダイバーシティを教えられる。建築関係であれば、障害者目線に立ったユニバーサルデザインを提案できる。メーカーであれば、真に障害者のニーズに合ったモノづくりに生かせる。結果、それが未来のよりよい共生社会をつくり、私たち障害者の生活も豊かになりますから」(上原さん)

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学生運営部代表の持田さんは、2021年7月に世田谷で開催された「第4回パラ大学祭」に初参加し、翌年3月に開催された「第6回パラ大学祭」(「第5回パラ大学祭」は関西)から運営メンバーに。初参加したときの楽しさや新鮮さが、運営に加わるきっかけとなりました。

「私は高校生のときに事故に遭って車いす生活となり、その後、様々なパラスポーツのイベントに参加してきましたが、『パラ大学祭』には驚くほどの感動がありました。大前提として、主役はあくまでも大学生。パラスポーツの前に、障害者や健常者といった隔たりがなく、参加者全員が心から楽しんでいるんです。

先ほど上原さんがおっしゃいましたが、私自身もパラスポーツは障害者のためのスポーツだと思っていました。でも『パラ大学祭』にその垣根はありません。健常者も障害者と同じ目線で楽しめるスポーツが、パラスポーツであるということに気付けたのも大きかったです」(持田さん)

2022年10月に豊洲で開催された「第7回パラ大学祭」は、25以上の大学が集まり、約90名が参加するなど関東で過去最多の規模に。スポーツだけでなく、バトントワリング(チアリーディング)や車いすでも踊れる盆踊りのパフォーマンスもプログラムされ、大盛況だったとか。

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「大学生主体で行うこれだけ大きな催しは、なかなかないでしょう。そういったイベントで運営に携われていることを、大きな誇りに感じています。学生が障害者やパラスポーツに触れることによって、卒業後の選択肢が広がっていくことは私自身も感じていますし、友人も車いすやバリアフリーのことなどに興味を持ってくれるようになりました。自身の立場も学生ですが、『パラ大学祭』が広まっていくことが、共有社会、そしてその先にある共生社会実現の大きな力になっていくと感じています」(持田さん)

次回の「パラ大学祭」は、2023年に関西での開催を予定。ただ、今後はよりエリアを拡大し、たとえば甲信越大会を開催するべく長野、山梨、群馬、新潟などの大学にも声をかけていきたいと上原さん。

また、ジャンルはパラスポーツに限りません。「第7回パラ大学祭」でバトントワリングや盆踊りを取り入れたように、パラ文化祭やパラ音楽祭なども開催したいと意気込みを語ります。

官民学のコラボレーションを全国規模で積極的に実施

全国各地に活動の場を広げるD-SHiPS32は、だれでも参加できるパラスポーツ大会「都道府県民パラスポーツ大会」も開催しています。こちらは長野、神奈川、山口、岡山、四国4県で開催実績があり、2022年11月26日には九州各県を集めた大会も開催。行政、地元の企業、大学など官民学の連携で行っており、それ以外にも企業のイベントに参加したり、高校とコラボレーションしたり、活動の場を広げています。

「企業例を挙げれば、NECと一緒に行っている『パラスポーツ大会』、大学で言えば『パラ大学祭』があります。併せて、『パラ大学祭』の運営メンバーが教育実習に行ったことから発展し、『パラ高祭』を都立石神井高等学校で開催しました。こちらは単独校での開催でしたが非常に盛り上がりまして、文化祭のような形で今後も協力していきたいと考えています」(上原さん)

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ほかにも、D-SHiPS32ではスポーツ用車いすなどのパラスポーツ用器具のレンタル「カリスポ」を提供。個人用レンタルサービスと、イベント用レンタルサービス、ふたつのサービスを用意しています。

「パラスポーツの課題のひとつが、器具が高価であること。たとえば子どもは成長しますから、小学1年生で買ったスポーツ用車いすが3年程度で乗れなくなり、再度高額な出費となってしまいます。また、レンタルは試乗の機会にもなり、導入ハードルも低いですよね。健常者がスポーツ用車いすに乗る際も、レンタルであれば手軽です。結果、パラスポーツ人口が増えれば理解者も増加。体育館も借りやすくなりますし、チームが増えれば加入希望者の選択肢も増え、パラスポーツに参加しやすくなります。

また、『カリスポ』の車いす修理は、大学などとコラボレーションして行っているのもポイント。これは、将来パラスポーツのチームに帯同するメカニックを育てるという狙いもあります」(上原さん)

友達ごと化で理解を深め、共有の場をよりつくっていく

今後、さらに活動のすそ野を広げていきたいと語る上原さん。アイデアは豊富にあります。もし「パラスポーツを支援したいけど何をやればいいかわからない」という企業や団体があれば、ぜひ相談してほしいと微笑みます。

「まずは心を通わせ、健常者と障害者と分けるのではなく、一緒に交わることを考えることが大切。そこで私がテーマにしているのが『友達ごと化しよう』ということ。よく『自分ごと化しよう』と言われますけど、たとえば歩ける人が歩けない人の気持ちになることはどうしても難しい。そこで、歩けない友達とご飯を食べに行くことを想定する。すると、『あの店って段差があった気がするな』とか考えて、街の見方が変わるんです。そうした簡単なことから理解を広げて、分けるのではなく交じり合う、『共有』の場をもっともっとつくっていきたいです!」(上原さん)

持田さんは、「まずはぜひ、『パラ大学祭』に足を運んでいただきたいです」とメッセージ。イベントの勢いも年々増していて、若者発信のムーブメントとして新しい時代の流れが来ていると力説します。

「上原さんがおっしゃったように、分けるのではなく一緒に過ごす時間が大切であり、その最適解のひとつがパラスポーツではないかと思います。大学単位で見ると、ボッチャ部をはじめパラスポーツ系のサークルが増えており、私たち世代からこうした動きが出ることで、日本をよりよい共生社会にしていけるのではないかと、自分自身でも感じています」(持田さん)

D-SHiPS32としては、2024年のパリパラリンピックや、2025年の日本国際博覧会(大阪・関西万博)に向けての準備も進めているとのこと。たくさんの夢を乗せた“船の航海”は、これからも続きます。

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担当部署 スポーツチーム
住所 〒389-0111 長野県北佐久郡軽井沢町大字長倉2283
お問合せ先 https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLScQ4bZHoa9wCJudfmPvB-udD9eATXth4IIzo-poLaZoKSx4tA/viewform
URL https://d-ships32.com
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