支援企業・団体の声
東京都社会保険労務士会
2023.2.17
中小企業にパラスポーツで理解の種をまき、
障がい者雇用や就労支援をバックアップ
人事や労務管理など、企業における労働及び社会保険のエキスパートである社会保険労務士。都道府県別に社会保険労務士会が組織され、東京都では23の支部を中心に情報交換や研修による相互研鑚を行っています。その各支部を統括するのが東京都社会保険労務士会で、TEAM BEYONDには2019年から参画。加えて独自にパラスポーツ体験会を開催するなど、積極的な活動に取り組む同会の理念や展望などを伺いました。
パラスポーツの力で障がい者の自立や社会参加を促していきたい
基本的な理念を話してくれたのは、寺田晃会長。社会保険労務士は、社会保険労務士法第1条の「社会保険労務士の制度を定めて、その業務の適正を図り、もつて労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施に寄与するとともに、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資する」という目的に基づき業務を遂行しており、これがパラスポーツ振興に取り組む根幹となっています。
「『労働者等』には、ご家族なども含まれます。また、当会では2013年によりよい共生社会を実現するために『社会貢献委員会』を発足。2016年には『がん患者等就労支援部会』を立ち上げ、2017年には『がん患者・障がい者等就労支援特別委員会』として再組織しました。それぞれ取り組む中、ぜひTEAM BEYONDともご一緒したいと思い、一員に加わりました」(寺田会長)
続いて「当会としては、障がい者の方のワークライフバランスの推進も、大きな意味での障がい者支援であると考えており、そのひとつがパラスポーツ。スポーツの力で自立や社会参加を促していきたいという思いがあります」と話すのは、前述「がん患者・障がい者等就労支援特別委員会」の染谷由美委員長。
「社会保険労務士は、中小企業の働き方改革などを事業主様と一緒に取り組むのが主な仕事です。その中で共生社会を進めていくには、障がい者への理解が欠かせません。そのための最初の取組として、パラスポーツに理解のある会員を増やすことが求められるのではないか。こうした考えもあります」(染谷委員長)
ボッチャチームの結成がインクルージョン理解の機会に
東京都社会保険労務士会では、パラスポーツの体験会を開催しています。こちらについては、「がん患者・障がい者等就労支援特別委員会」の野中剛さんが教えてくれました。
「私たちの会報誌では、パラスポーツやアスリートへの取材を通した情報発信もしています。加えてTEAM BEYONDのBOCCIA BEYOND CUPへの参加情報なども発信していますが、私たちが主催する体験会があれば、会員のタッチポイントがいっそう増え、障がい者への理解もより身近に感じるきっかけになるのではないかと。そうした思いから開催に至りました」(野中委員)
初めて取り組んだ企画は、2019年3月に実施したブラインドサッカーの大会観戦でした。
パラスポーツ体験会は、2020年2月に企業担当者向けセミナーとともに開催したものが初回になります。
パラスポーツ体験会は、2020年2月に企業担当者向けセミナーとともに開催されました。同年4月にはパラリンピックを見据えてパラスポーツに特化した会を企画したものの、コロナ禍によって中止に。再開したのは2022年11月。ボッチャ体験会と、障がい者疑似体験会が同時開催されました。
「前年のパラリンピックから1年以上経っていましたので、開催するならレガシーを考えたいと。であれば、ただパラスポーツをやるだけではなく、障がい者の理解を深め、共生社会を一緒に考えられる体験会にしたいと思いました。そのため、一方ではボッチャ体験会を、もう一方では身体障がい者の体験として義足体験プログラムを設け、加えて知的障がい、発達障がい、精神障がいの体験として、心の声を聞くプログラムを作りました」(染谷委員長)
染谷さんは、同会のボッチャ公式チーム「チームリエゾン」についても教えてくれました。
「結成は2021年。きっかけはBOCCIA BEYOND CUPへの参加ですね。ネーミングは、障がい者と社会の懸け橋になりたいという思いから、『Liaison(橋渡し)』を採用しました。チームを作ってみて、私たちの中でもインクルージョンへの理解がより深まったと感じます。
例えば、BOCCIA BEYOND CUPでは、障がいがある子どもたちの小学生チームが、大人の健常者チームを負かしていたり、会場の練習室で『一緒に練習しませんか』と声をかけてくださったチームの方が、私たちの試合の時に真後ろで応援してくれたり。こうした関係性がまさにインクルージョンではないかな、と肌感覚で理解することができました」(染谷委員長)
このインクルージョン体験を表現しようと、東京都社会保険労務士会では主催企画でも工夫するようになったと野中さんは言います。
「例えば会員向けに、ボッチャ体験会を開催するとしましょう。当会では23支部にわかれており、顔見知りの各支部内でチームを作ったほうが運営はスムーズなのですが、あえて別支部の初対面同士で組んでもらうんです。すると意外と30分も経たないうちに盛り上がるんですよ。この「交わって打ち解ける感覚」を皆さんに味わってもらえたことは、『チームリエゾン』によって生まれたメリットのひとつですね」(野中委員)
TEAM BEYONDの加入企業と協力して盛り上げたい
他にも、パラスポーツの支援活動による意識の変化はたくさんあったとか。例えば会報誌の制作。特に東京2020パラリンピック競技大会前後の反響は大きく、使命感がより強まったと言います。
「会報誌では、パラアスリートの職場環境や企業のアスリート雇用契約が中心になるのですが、取材した選手がメダルを獲得することもあり、そうなると職場に与える一体感や高揚感が醸成されることを強く実感します。やはり選手が活躍することによって親近感が沸き、会社へのエンゲージメントも高まりますから。
加えて、企業側でもパラアスリートの雇用にいっそう力を入れたい、インクルージョンへの理解を深めたいという意識の醸成につながることも実感します。私たちの委員会でも、より主体的にパラスポーツへ関りたいという思いは強くなっており、そのきっかけを作っていただいたTEAM BEYONDには非常に感謝しています」(野中委員)
ただ東京2020大会によって盛り上がった一方、課題もあると染谷さんが教えてくれました。
「2024年にはパリパラリンピックが控えているものの、日本国内では2020大会以後にパラアスリートの離職が増えているのも事実です。障がい者雇用と就労支援は社会保険労務士の主務ですから、より企業側への理解を深めたいという思いは強いです。私たち委員会の活動や会報誌の内容を会員の社会保険労務士が知ることで、1人でも多くの障がい者の方とそのご家族、また障がい者雇用に悩んでいる企業様に支援ができれば。そう思っています」(染谷委員長)
野中さんは、TEAM BEYOND参画企業同士のシナジーについても語ります。
「TEAM BEYONDのメンバー企業様には、日ごろから私たち社会保険労務士も大変お世話になっています。当委員会に関しても、各企業様が開催するパラスポーツ体験会へ見学や参加をさせていただいたり、あるいは私たちの体験会の運営協力をお願いしたり。こうしたコラボレーションといいますか、互いの強みを生かすことで、よりダイナミックな支援活動につなげていけたらと思います。また、私たちがメンバー企業様に手助けできる力になれたらとも考えています」(野中委員)
障がい者への先入観をぬぐえる最適解がパラスポーツ
染谷さんは、「取り組むきっかけと、情報に触れる場所を持つこと。この2点がきわめて大切」と言います。特に情報に触れる場としては、TEAM BEYONDへの参画が頼もしい力になったとか。
「TEAM BEYONDからはメールマガジンなどが届くのですが、さまざまな情報を共有いただけるうえに、交流の機会や選手の情報、大会観戦のお知らせなど、多岐にわたって案内をいただけます。情報には継続的に触れてくことが大切で、そこから次のアクションが生まれたり、他の事例を参考にできたりもしますよね。
社会保険労務士会としては企業の雇用や就労支援が焦点となりますが、共生社会の実現に向けては、組織として最も関心がある部分を、ダイバーシティやインクルージョンとどう接点を見つけられるかどうかだと思います。ここ数年パラスポーツの支援活動をさせていただいて感じたのは、接点を見つける近道となったのがTEAM BEYONDだということですね」(染谷委員長)
最後に寺田会長より力強いメッセージをいただきました。国内法人数の99%以上を占め、雇用の約7割を占めるといわれる中小企業。一方で働き方改革やウェルビーイングな企業経営が求められる中、積極的な就労支援や雇用関係の改善が喫緊の課題となっています。そこで適任となるのは、やはり社会保険労務士であると話します。
「障がい者雇用には法定雇用率が定められていますが、ハードルになっている大きな部分は障がい者の方に対する先入観。その先入観をぬぐえる最適解と言えるのが、パラスポーツだと思います。一方で中小の企業現場では、障がい者の方が活躍されている事例はたくさんあります。一度パラスポーツを観ていただき、まずは関心を持っていただけたらと考えています」(寺田会長)
今後、会員はもちろん、その家族や勤務先の従業員も交えた大規模体験会を開催したいとも。プレイヤーとしては、ボッチャ以外のパラスポーツにも積極的に参加したいと意気込みます。東京都社会保険労務士会の挑戦に、これからも目が離せません。
東京都社会保険労務士会
担当部署 | がん患者・障がい者等就労支援特別委員会 |
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