支援企業・団体の声
神戸2024世界パラ陸上競技選手権大会組織委員会
2023.3.23
東アジア初開催となる世界パラ陸上
開催都市の神戸が成功のために考えていること
パラ陸上ではパラリンピックに次ぐ規模の「世界パラ陸上競技選手権大会(以下、世界パラ陸上)」。東アジアで初めて神戸で、2024年5月17日から同月25日まで開催されます。その運営を行う組織委員会に、活動内容や意気込みなどを伺いました。
初開催の熱を日本中に届けて共生社会を広めたい
「神戸2024世界パラ陸上競技選手権大会(以下、神戸2024世界パラ陸上)」の基本理念は、東京2020パラリンピックにおける感動やパラスポーツへの関心の高まりを次代に” TSUNAGERU つなげる”、スポーツを通した交流の輪を” HIROGERU ひろげる”、障がい者をはじめ誰もが暮らしやすいまちづくりを” SUSUMERU すすめる”こと。
神戸とパラスポーツのつながりは、1989年に神戸で開催されたフェスピック(“日本パラリンピックの父“と呼ばれる中村裕博士が、アジアや南太平洋地域の障がい者の福祉をスポーツで向上させようと提案、実現した大会。そのレガシーは現在、アジアパラ競技大会として継承)の第5回大会が転機となりました。
同大会以降、水泳や車いすテニス、卓球といったクラブが神戸に創設され、また女子車いすバスケットボールの日本選手権大会(皇后杯)が継続開催されるなど、現在に続く大きな起点として語り継がれています。
神戸市が世界パラ陸上の招致に動き始めたのは2017年とのこと。その後、国際パラリンピック委員会(IPC)の会場視察などを受け、2019年に神戸での開催が正式に決定。当初は2021年秋の開催をを予定していましたが、コロナ禍などによる2度の延期を経て、2024年5月の開催となりました。
神戸市はどのような想いで招致を目指したのでしょうか。インタビューには神戸2024世界パラ陸上組織委員会事務局次長の丹沢靖さんが答えてくれました。
「東京2020パラリンピックによってパラスポーツの機運が高まる中、改めて日本初の世界パラ陸上を開催することで、いっそうパラスポーツを盛り上げたい。加えて、国際都市でありスポーツとのつながりも強い神戸が、その旗振り役をさせていただけたらという想いがありました。そして何より大きいのは、日本で世界パラ陸上が開催されることで障がい者理解がより深まるとともに、バリアフリーなどの取組も促進されるなど、各地でインクルーシブなまちづくりが進むのではないかという期待です」
大会開催に向けてのPR活動に関しては、やり始めてわかったことがいくつかあると丹沢次長は話します。
「東京2020大会により機運が高まったと申したものの、まだまだ道半ばですね。今後必要になってくるのは、市民とパラスポーツの接点を増やすことだと思います。そこで考えているのがパラスポーツに触れる機会の醸成。スポーツ義足を装着していただいたり、競技用の車いす(レーサー)に乗っていただいたり。レーサーにはスピードメーターもついていますから、実際に乗るとどれだけ速いかもわかると思いますし。そういった形で、地域のみなさんがパラスポーツと触れる場を増やしていきたいと考えています」
大会成功に向けた課題とは
組織委員会の役割は、主催である国際パラリンピック委員会や世界パラ陸上競技連盟の方針に則り、具体的な大会運営の準備などを行うこと。組織委員会の運営や競技場の整備などは神戸市でバックアップしています。事務局も神戸市役所内に置かれており、大半のメンバーは市の職員です。
「大会当日の競技運営は、日本パラ陸上競技連盟(JPA)や兵庫陸上競技協会(HAA)にご担当いただきますが、その準備のために当事務局にもJPA・HAAからスタッフを派遣いただいています。また、各企業様にも金銭的な面や現物支給などの面でスポンサードしていただきます。加えて、ボランティアのご協力も欠かせないため、大会開幕1年前頃から募集してまいります。なんとかこのままいけば、会場では感染症対策の制限なく観戦いただけると考えており、ぜひ学校を中心とした観戦会などを実施し、子どもたちにパラスポーツの素晴らしさを知っていただきたいですね。その点につきましても、ぜひ企業様の協力を仰ぎたいと思っています」
大会の準備にあたる中では、課題と向き合うことも。例えば、大会そのものの認知が十分に広まっていないこと。また、昨今の円安やエネルギー費の高騰なども大会の準備を進めていくうえで課題になっているそうです。
「物理的な課題としてはバリアフリー対応もあります。私たちも日々意識しながら準備を進めておりますが、どうしても健常者目線ですので、足りない部分がある点は否めません。大会の機運醸成とともに、当事者目線でのバリアフリーへの意識を高め、ハード面での解決が難しい場面でも、ソフト面で解決することを考えていきたいです。大会認知に関しましては、パラスポーツ自体は私たちが思う以上に認知が広がっていると思います。特に私たちが学校などへ行くと、子どもたちがよく知っていることにこちらが驚かされるぐらいで。ですので、世界パラ陸上とのつながりを、よりアピールしていくことが大切だと考えています。
最近ではSDGsやダイバーシティ&インクルージョンの理念に共感を示す企業様も増えていますし、TEAM BEYONDさんの協力も得ながら一層大会をPRしていきたいです」
教育や体験型プログラムでパラスポーツに触れる機会を創出
組織委員会が目指すのは、冒頭で述べた3つの基本理念「つなげる、ひろげる、すすめる」の実現。普通のスポーツ大会としての成功だけではいけない。パラスポーツの普及発展はもちろん、障がいや多様性への理解浸透など、共生社会をより進めていくための契機にしたいという想いがあります。
「多くの方に観戦いただきたいという想いが大前提としてあります。繰り返しになりますが、特に次世代を担う子どもたち。また、一般のスポーツ団体の方にもより知っていただきたいですし、大会前にPRしていくプログラムも考えています。
具体的には、パラアスリートや、ガイドランナーなどパラアスリートを支える人達から学ぶ、学校や地域団体向けの独自の体験型の教育・研修プログラムを作ろうとしています。このように学校や地域に根差した取り組みを進める中で、今大会で掲げる3つの理念を実現していきたいです」
最後に、丹沢次長はTEAM BEYONDへの期待も語ってくださいました。
「TEAM BEYONDは、パラスポーツ振興における国内最大級のプラットホームだと思います。今回は神戸の私たちにスポットを当てていただきましたが、同様に各地の取り組みを発信するとともに巻き込んでいただき、フィードバックを交えながら相互に渦を大きくしていきたいですね。
私たちが東京や首都圏向けにPRするのはなかなかハードルが高いのですが、TEAM BEYONDさんの力を借りれば多少は低くできますし。やはり日本の首都として、東京のパワフルな発信力を生かして日本全体のパラスポーツ熱を底上げするような、ダイナミックなリーダーシップを期待しています」
開催まで500日を切った「神戸2024世界パラ陸上競技選手権大会」。約100カ国・地域から選手約1,300人が訪れ、うち約400人は車いす利用者が集うビッグイベントとなります。その日に向けて、組織委員会の活動は、ますます熱を帯びていくことでしょう。
神戸2024世界パラ陸上競技選手権大会組織委員会
担当部署 | 事務局 |
---|---|
住所 | 〒650-8570 兵庫県神戸市中央区加納町6-5-1 |
URL | https://kobe2022wpac.org/ |