支援企業・団体の声
一般社団法人knockü
2023.3.29

車いすハンドボールを軸に大会や体験会を開催
チームも運営するなど若い力で新風を吹き込む

2020年に設立され2022年に法人化した、一般社団法人Knockü(のっきゅー。以下Knockü)。車いすハンドボールを中心にパラスポーツイベントやコミュニティの運営、パラスポーツの要素を活かした教育プログラムなどを行っており、2022年度に行った全事業の参加者は延べ495名を数えました。企業や団体との連携にも積極的で、取材はハンドボールチーム「ジークスター東京」とのコラボイベント時に実施しました。

パラスポーツ先進国のドイツで学んだ学生が起業

“「障害」という概念を変え、誰もが自分を好きでいられる共生社会を実現する”をビジョンに、“ パラスポーツの持つ可能性を引き出し「小さな共生社会」を日本中に広げていく”をミッションに掲げるKnockü。パラスポーツ先進国のドイツへ留学するなど、パラスポーツの研究をしながら社会活動を行う岡田美優さん(代表理事)が起業しました。

早稲田大学大学院博士課程で、スポーツ経営学を専攻している岡田さん。ほかに、スポーツ庁によるスポーツ審議会 健康スポーツ部会 障害者スポーツ振興ワーキンググループ委員を務めるなど、さまざまな顔をもっています。そんな岡田さんがパラスポーツに携わることになったのは、何がきっかけだったのでしょうか?

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「ひとつは両親が特別支援学校の教員であったこと、また、私自身がハンドボールを11年経験していたこと。そのうえで、大学3年生の時に教授の誘いで車いすスポーツ指導者講習会に参加し、ドイツ人講師と出会ったことが大きな転機となりました。Knockü起業の理由は、もっと障害者と健常者とが交わる社会にしたかったからです。交流する機会の醸成もそうですし、機会を増やすためには障害者にも積極的になっていただきたい。そのきっかけとして、コミュニティ内でのスポーツ活動を通じて体力や自信をつけ、社会活動にも参加していただけたらと思いました」(岡田さん)

団体名には、一人ひとりの違いの間にある心の壁をノック(knock)し、互いの心の扉を開いていくという意味があります(üはyouを「u」に置き換え、見栄えが可愛いウムラウト「¨」を付けた)。そんなKnocküのメンバーは全員20代。岡田さんを含め学生も少なくありません。団体内セクションには車いすハンドボール事業部と広報事業部、総務部があり、メンバーが兼任するなどして業務にあたっています。

「まだ2年目で歴が浅く、私自身の人件費は 大学から支援いただいている研究費が中心で、スタッフには交通費のみ支給してボランティアとして携わってもらっています。徐々に実績ができているので、来年度からはスポンサードや助成金も視野にキャッシュポイントを増やし、経営が回る仕組みを作りたいと考えています。」(岡田さん)

スタッフは、パラスポーツイベントでの出会いから、理念や活動内容に惹かれてジョインする流れがほとんど。名古屋大学 情報学部 コンピュータ科学科4年生(4月からは同大学院へ)の岩井星良さんもそのひとりです。Knocküではイベント運営のほか、SNSなども担当。岩井さんは東京2020パラリンピックで初めて観た車いすバスケットボールに感動し、パラスポーツに携わりたいと思うようになったと言います。

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「私は岐阜の車いすバスケットボールチームでマネージャーをしており、 大学の先輩の紹介で岡田と出会ってKnocküに参画しました(岡田さんも以前、車いすバスケットボールチーム「NO EXCUSE」でマネージャーを担当)。現在は愛知在住ですが、Knocküでイベントがある度に関東に来ています」(岩井さん)

2023年4月からは総合型地域スポーツクラブ「Knockü Sports Club(通称:Knockü SC)」 を立ち上げ、クラブ運営をスタート。車いすハンドボールのトップチームを設立し、ジュニア・ビギナーの育成を行うアカデミーの参加者やチームボランティアスタッフも募集しています。数あるパラスポーツの中でも、車いすハンドボールを選んだ理由とは?

「私の経験上、車いすを使ったハンドボールかバスケットボールがよいと思いました。ハンドボールを選んだ理由は、バスケットボールは競技人口が多い分、競合となる他チームのレベルが高く、新しいチームが参入するにはハードルが高いという点がひとつ。もうひとつは、ハンドボールはバスケットボールに比べてゴールが大 きく、ボールが小さいので子ども でもシュートが打ちやすく、スポーツを始めたばかりの人でも成功体験を得やすいという点です」(岡田さん)

車いす試乗から共生社会実現のための“気付き”を促す

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今回の取材は、ジークスター東京のホームゲームでコラボイベントとして開催された車いすハンドボール体験会で行いましたが、Knocküではこのような体験会を積極的に実施しています。狙いは車いすハンドボールの普及はもちろん、参加者が体験することで“気付き”を得られることも大きいと言います。

「まず障害者と健常者がともに車いすに乗ることで、お互い支え合わないと競技をすること自体が難しいことだとわかります。 そこからお互いの理解へと繋がりますし、よく障害には『個人モデル』と『社会モデル』があると言われますが、前者は障害による困難は個人に原因があるというもの。後者はそうではなく、原因は社会やその仕組みにあり、私たちの考え方が変われば社会を変えていけるというものです。私たちは後者の『社会モデル』を体験会などを通して周知していきたい。楽しかったという思い出を持ち帰っていただくだけでなく、その先の考え方が変わるきっかけにして欲しいと思っています」(岡田さん)

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本取材では、体験会で講師を務めた太田空さんにもインタビュー。手ごたえなどを聞きました。

「今日は参加者のほとんどが初めての車いす体験だったのですが『楽しかった』『想像より乗りやすい』など前向きな感想が多く、非常にやりがいを感じました。初心者の方でもゴールを決めることができ、気軽に参加できるのが車いすハンドボールの魅力です。今日はジークスター東京のファンの方が多く体験してくれたので、私たちとしても車いすハンドボールを知っていただくきっかけとなり、ありがたいですね。私は車いすバスケットボールのプレイヤーでもありますが、このようなコラボが他の競技でも広がっていくとよりパラスポーツの普及に繋がると思います」(太田さん)

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体験会など各種イベントでの当面の課題は、会場探しと定期的に開催していくこと。継続していくことについては、どうしても金銭面の課題があると岡田さんは話します。

「車いすを使わせていただける体育館は、少しずつですが増えています。これは各地域でパラスポーツを楽しむ環境ができているからだと思いますが、徐々に理解が進んでいると実感しています。ただ、クラブやコミュニティでも金銭面のハードルが高ければ、継続して活動できるチームはなかなか増えていきません。

やはりパラスポーツの競技人口を増やしていくことが、共生社会実現に向けたひとつの近道だと思っていますので、スポンサードも含めて成功事例を作るために、私たちの活動を企業さんにも知っていただきたいですね」(岡田さん)

いつかKnocküカップを全国で。就労の役にも立ちたい

Knocküでは車いすハンドボールの大会も開催しており、昨年7月には「車いすハンドボール関東競技大会」の運営を行いました(主催は日本車椅子ハンドボール連盟)。今年は「Knocküカップ」へと名称を変えて開催予定。競技志向の「チャレンジカップ」、試合を楽しむことが主体の「ビギナーズカップ」、エントリー層向けの「体験会」とレベル別にわかれているのも特徴です。

「大会運営はもちろん、開催地の自治体さんなどを巻き込んでいくことも私たちの役割です。東京であれば区長さんにあいさつをいただいたり、ローカル誌で紹介いただいたり。また体験会に欠かせない車いすは、競技用車いすのメーカーである松永製作所さんからの協賛でお借りしています」(岩井さん)

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写真提供:一般社団法人Knockü

「ジークスター東京」とのコラボレーションは昨秋に続く2回目。地域のチームとも連携しており、過去には新宿区のクラブチ―ムと、そして2023年2月と3月には千葉市の体育館施設やスポーツ課 と一緒に、車いすハンドボール体験会を開催します。

「クラブチームさんとの連携は、イベントの運営や盛り上げだけでなく、会場の確保でも非常に助けになりますね。たとえば、体育館側との間に入っていただくことでスムーズに借りることができたんです。新宿で体験会を行った際も、 クラブチームさんのおかげですんなりと区の体育館をお借りできました」(岩井さん)

「Knocküカップ」の初回は7月23日(日)に新宿で開催予定。今春から参加チームの募集が始まりますが、中長期的には東京だけでなく、全国で開催するなど規模を広げたいと岡田さん。

「新たな取組としては、就労支援とまではいかなくとも、企業の方を招いて事業紹介をしたり、企業で活躍している障害者の方に登壇いただいたりといった形で、働くことに関するイベントを開催したいと考えています。企業との連携面ではまさにTEAM BEYONDが得意とするところだと思いますし、私たちにもお力添えいただければと」(岡田さん)

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岩井さんも、「企業や団体さんには、試合や体験会など現場を見ていただくことがはじめの一歩かなと思います。そこから、支援や連携といった流れに繋がると考えています」と言います。法人としては2年目ながら、学生連携やSNSを活用した積極発信など、若いメンバーだからこその大きな可能性を秘めたKnockü。その動向から、ますます目が離せません。

一般社団法人knockü
住所 〒151-0064 東京都渋谷区上原3-17-3
URL https://www.knocku.info/
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  • ボランティア ボランティア
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20230329

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