支援企業・団体の声
株式会社産業経済新聞社
2023.9.8
リユースと人の心を大切にする
「自然と続く」プロジェクトとして
株式会社産業経済新聞社(以下、産経新聞社)は1933年(昭和8年)創刊の『産経新聞』を発行しており、今年で90周年を迎えました。当初パラスポーツ振興の一環としてスタートした同社の「ふくのわプロジェクト」は、立ち上げの苦労を経ながらも着実な広がりを見せ、今では様々な企業・団体・学校から賛同を得る継続的プロジェクトへと発展しています。
古着のリサイクルとパラスポーツ振興という掛け算の発想
産経新聞社は、「一、産経は民主主義と自由のためにたたかう」、「一、産経は豊かな国、住みよい社会の建設につくす」、「一、産経は世界的な視野で平和日本を考える」、「一、産経は明るい未来の創造をめざす」という「産経信条」を企業理念として掲げています。日刊紙、夕刊紙を全国紙として発行。新聞ジャーナリズムの雄として歩んできました。
一方、社会貢献面でも長い歴史を有しています。広報室長兼広報部長の池誠二郎さんが次のように明かしてくれました。
「産経新聞社は、社会貢献に戦前から取り組んできました。前身の大阪新聞厚生事業団(現在の社会福祉法人産経新聞厚生文化事業団)では、大阪地区において社会福祉施設の運営など、福祉の領域で地域に貢献しておりました。また、1960年代には心臓病のお子さんの支援をしようということで『あけみちゃん基金』を設立いたしました。こちらは50年以上の歴史があり、これまで500人を超える命を救ってきました。90周年を超えてからも、様々な領域で社会貢献を続けていきたいと思っています」(池部長)
もともと社会貢献の実績と組織風土があった中でパラスポーツ振興について同社が考えるキッカケとなったのが、東京2020大会でした。メディア営業局クロスメディア本部企画プロデュース部の永栄朋子さんは、開催決定後の2014年から2015年頃をこう振り返ります。
「日本財団のパラリンピックサポートセンター様(当時)との共同で、産経新聞の紙面で『パラリンピック座談会』を2か月に1回テーマを変えながら、パラスポーツの関係者の皆さんと話し合っていました。その時に皆さんが一様におっしゃっていたのが、今は盛り上がっているけれども、この大会が終わったらパラスポーツはどうなるんだろう、ということでした」
そんな中、「新聞社としてパラスポーツをどう支援していくべきか」そのテーマで社内会議が開かれることになった前日、永栄さんが何気なく読んでいた婦人誌が「ふくのわプロジェクト」のアイデアの源泉となりました。
「日本では古着のリサイクルが進んでいないという特集が何ページにも渡って組まれていたんです。年間何万トンもの古着が廃棄されているとのことでした。確かにリサイクルショップに自分で持ち込むのは面倒という人は多いと思います。でも、古着を寄付することで誰かの役に立つということであれば、話は別かもしれません。そこに、目前の課題としてある、パラスポーツに対してお金の寄付が進んでいないという事実を掛け合わせたらプロジェクトとして成立するのでは。そう考えたのがキッカケです」
こうして、集まった衣類のリユースによって生まれた収益金を「ふくのわプロジェクト」の趣旨に賛同し、有効活用してくれるパラスポーツ団体(ふくのわフレンズ)に寄付するという、持続的な支援体制が2016年に生まれました。その産声は東京本社内の社内放送から上がりました。「衣類を寄付してパラスポーツを応援しよう!」と呼び掛けたところ、驚くことに、3日間で約60キロの古着が集まりました。「これはいけるかもと思い、千葉県柏市の商業施設のイベントで古着の回収ブースを設置させていただいたところ、1日目は通り過ぎていた人が2日目に持ってきてくれたり、家族ぐるみで持ってきてくれたりして、大盛況でした。趣旨と気軽に参加できる雰囲気が良かったのではと考えています」
「ふくのわプロジェクト」は、同年に東京都の環境局のモデル事業に採択されました。「東京都の広報に記事を載せてもらったところ、約400件ものお問い合わせがあったんです。その反響は圧倒的で、職員の方は終日電話応対に追われたと聞いています。」(永栄さん)
一方で、社外にも「ふくのわプロジェクト」を広めるべく、回収ボックスを置いてもらうよう企業・団体に声をかけ始めた当初は、断られることも少なくありませんでした。それでも、同じくらいの数の賛同や協力をいただいたことが、続けていくモチベーションになりました。今では様々な企業やスポーツ施設等に回収ボックスが設置されています。産経新聞社が関連会社として名を連ねる株式会社フジ・メディア・ホールディングスの全面協力もあり、2018年1月から現在まで1日も欠かさずにプロジェクトの倉庫には衣類が届けられています。
子供たちから大人気のパラアスリートとの体験会
同プロジェクトは寄付の他にも、2020年から小中学生を対象としたパラスポーツ体験会を、支援先の競技団体と連携して開催しています。きっかけは、コロナ禍に産経新聞社へ届いた「競技団体と子供たちが接するような取り組みができないか」という学校関係者からの声でした。これを受けて、もともと学校との連携を強めたいと思っていたNPO法人日本パラ・パワーリフティング連盟と学校を産経新聞がつなぎ、体験会の開催が実現しました。以来、4年に渡り応援先の各競技団体と学校とによる体験会を開催しています。プロジェクトのオフィシャルパートナーである富士紡ホールディングス株式会社も、全面的にこの体験会の趣旨に賛同し、サポートしています。
今年の体験会は一般社団法人日本知的障害者水泳連盟の協力のもと、都内小学校の3年生と4年生を対象に開催されました。山口尚秀選手(東京2020パラリンピック 競泳男子100メートル平泳ぎ・知的障害クラス金メダル)、木下あいら選手、松田天空(あんく)選手が7月3日に学校を訪れました。子供たちは、パリ2024パラリンピックでメダル獲得が期待されるトップスイマーたちとの水泳競争やデモンストレーションを楽しみました。
参加者からは「今日は本当に最高の1日だった!」「金メダリストと話せてよかった」といった喜びの声が上がりました。体験会終了後には、子供たちがサインを求めて3選手のもとに殺到。同行取材した産経新聞の記者が、取材用ノートの紙を破っては子供たちに次々と配らなくてはならないほど、選手たちは大人気でした。
その現場を目の当たりにした、メディア事業局企画プロデュース部の柳澤るみ部長は「今の子たちは、健常者のアスリートも、パラアスリートも同じ目線で見ているんだと思います」とイベントを振り返ります。
当たり前のこととして、自然に続くプロジェクトを今後も目指す
「ふくのわプロジェクト」は今後も継続していくとのことですが、活動に当たって大切にしていることがあると永栄さんはいいます。
「当初はパラスポーツ“支援“という言葉を使っていましたが、これは私たちが応援させてもらっているわけで、決して上から目線で『支援してあげている』という表現は使いたくありません。パラアスリートからも古着を寄付していただくこともありますし。『自然と、当たり前に』続いていくと良いな、と思います」
社内ではすでにこのプロジェクトを知らない社員はいないというほど定着しているようで、「産経新聞のスポーツ特集の紙面などでも、昔はどうしても健常者のスポーツに目が向いていましたが、今では正月の企画などでアスリートを2人取り上げるなら、1人はパラアスリートというくらいの取り上げられ方になっています」と永栄さんは目を輝かせます。
柳澤部長は「プロジェクトの運営には経費がかかりますが、これを弊社が赤字で持ち出していては続かなくなってしまいます」と語り、こう続けます。「現状では回収ボックス費用は賛同いただいている企業様に支援いただいております。我々と一緒に、CSR(企業の社会的責任)の価値観を共有していただく企業様の輪をもっと広げていきたいです。最初は社員の個人的な思いから始まった社内プロジェクトですが、今では大手企業様にも回収ボックスを置かせていただけるまでになりました。本当に世の中にとって良いことはしっかりと広がるんだ、と実感しています」
永栄さんがいつも感銘を受けていることがあります。「ふくのわプロジェクト」の体験会の前に、子供たちがパラアスリートに話を聞く取材があるそうです。ある日突然、交通事故にあい、四肢を切断してしまう。一度は人生に絶望するも、そこから生きる力と希望を見出し、前を向いて生きていく。そんなパラアスリートの皆さんの言葉に触れていくうちに、まだ幼いはずの子供たちは真の感動を覚えていく。
「誰が、いつ、交通事故にあって障害者になるか分かりません。ある日突然、自分自身もそうなるかもしれません」(永栄さん)
だからこそ、「豊かな国、住みよい社会の建設」につくし、「明るい未来の創造」を目指す同社は、特別なことではなく、自然と続くプロジェクトとして「ふくのわプロジェクト」を位置づけています。永栄さんは「TEAM BEYONDも、東京や首都圏だけではなく、全国に自然に認知される存在であって欲しいです」と取材を締めくくってくれました。
株式会社産業経済新聞社
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