多様性を尊重する社会への一歩としてパラ・デフアスリートの雇用を
誰もが活躍できる社会を目指して
総合証券会社として2009年に三井住友フィナンシャルグループの一員となったSMBC日興証券株式会社(以下、SMBC日興証券)。同社では多様性を成長の源泉に、パラ・デフアスリートの雇用や日本ブラインドサッカー協会とアカデミーパートナー契約などのDE&Iを推進しています。
それらの積極的な取組について、人事部ダイバーシティ推進室の須藤桃子室長、経営企画部サステナビリティ推進室の村上奈穗さんにお話を伺いました。
※DE&Iとは、ダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公正)、インクルージョン(受容)を指す言葉です。
経営理念を具現化するパラ・デフアスリートの雇用
SMBC日興証券は、経営理念における社会的使命として「健全な資本市場の発展を、豊かな人生・社会の実現につなげる」を掲げ「親切で正直」「共存共栄」「成長し続ける」「多様性を尊重する」「健全な市場を守る」の5つをプロフェッショナルとして大切にする価値観としています。
「2023年に経営理念を刷新しましたが、『多様性を尊重する』という部分は従来の経営理念にも入っていたもので、弊社として大切な価値観として継続して掲げています。年齢や性別、障がいの有無、国籍などによらず、すべての人が活躍できる職場環境の整備、それがダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)の推進であり、経営理念に掲げる『多様性を尊重する』ことにつながります。パラ・デフアスリートの雇用はまさにDE&Iの推進、そして『多様性を尊重する』を具現化するような取組ということで継続しています」(須藤室長)
所属する17名のパラ・デフアスリートたちのアスリートとしての活躍もまた経営理念を具現化する存在になっているそうです。
「新しい経営理念として追加された価値観が、『成長し続ける』です。アスリートの方の取り組む姿勢を見ていると、本当に成長し続けているんですね。出産された女性アスリートもいるのですが、それをまったく感じさせることなくすぐに競技に復帰したり、年齢を理由に諦めるといったことがなかったりと、どんどん『成長し続ける』ことを皆さんが体現されていらっしゃるので、そのあたりが経営理念を具現化する存在として社員にとっても模範になるなと思っています。だからこそ、社内だけではなく、社外にも発信していきたい存在であると認識しています」(須藤室長)
障がい者雇用の見える化のために生まれた2本の柱
SMBC日興証券では2015年からパラ・デフアスリートの雇用を行っています。経営理念に掲げる「多様性の尊重」、共生社会の実現、そして障がいのある方への理解や障がいや年齢に関係なく生活や権利を保障された環境を作ることを意味する「ノーマライゼーション」の理解浸透策を検討する中で、パラ・デフアスリートの雇用に出会い、当初は数名の雇用からスタートし、数年かけて採用を拡大していきました。
また、障がい者雇用についてはパラ・デフアスリートに限らず、企業としてやらなければいけない重要な取組でもあります。ただ、なかなか目には見えません。そこで何かわかりやすく、見える化できるような取組ができないかということで、2015年に特例子会社の「日興みらん」を設立して、知的障がいや精神障がい、身体障がいなど障がいの種別や程度によらず、多様な障がい者の方を雇用し、活躍いただきたいと考えました。パラ・デフアスリートの雇用と特例子会社「日興みらん」の設立を2本の柱として、障がい者雇用の見える化に向けて取組をスタートしたのです。
障がい者雇用自体も多様であったほうがいい
SMBC日興証券では、同じ競技や同じ地域のパラ・デフアスリートだけではなく、幅広い地域で様々な競技で活躍する社員を雇用しています。
「障がい者雇用も多様であったほうがよいと思っています。世界で活躍するような社員がいるということが会社のPRにもなりますし、共生社会の実現と広くスポーツの普及にもつながります」(須藤室長)
パラ・デフアスリートの口からは「チーム日興」という言葉がよく出てくるのだそうです。障がいや競技が違っても同じ会社に所属しているからこそ、その中でそれぞれの競技に活かせるものを得て、それが自然と広がっていきます。前向きに捉えて、自分の糧にしようという姿勢が見られ、所属するパラ・デフアスリートが揃う月に1回の月例会では、お互いにそういった情報を共有し合っています。月例会では、トレーニング方法、モチベーションの保ち方などのアスリートならではの情報の他、各自治体や学校、企業向けの講演での話し方、時には金融商品の知識も話題にあがるとのこと。また、栄養学の知識を持っている選手がいて、アスリートの食事メニューについて提案された時もあったそうです。実際に料理を作って試食会も考えてみたいなどと、話題は尽きません。
月例会の内容は、社内イントラでも随時発信していて、興味の輪は広がりつつあるとのことです。
「障がいも競技も違う17名のパラ・デフアスリートが所属しているため、お互いに刺激にもなりますし、私たち社員にとっても様々な学びとなっています。まずはパラ・デフスポーツを取り巻く環境やアスリート自身のことを知ってもらい、社内外の人たちに興味を持ってもらうことが大事ですね」(須藤室長)
一方で、競技によって繁閑がまったく違うため、集まって何かをしようというときになかなか日程が合わないといったこともあるとのこと。
「世界各国、さまざまな日程で競技をやっているので、なかなか応援に行けないというところはあります。それでも行ってみると本当にいろんな競技によっての見どころがあるなと感じていますし、私たちは応援、支援していてとても楽しいなと思っています」(須藤室長)
アスリートの働き方はセカンドキャリアまで見据えて
今いる17名のパラ・デフアスリートは競技専念型で雇用されているそうですが、ただ競技だけをしているわけではなく、講演会や体験会といったイベント、メディアからの取材などPR活動もされているそう。
「アスリートたちはそれぞれ自分のストーリーや伝えたいことを持っていて、人の心をぐっとつかむような話をしてくれます。SMBCグループとして社会的価値の創造を重要なテーマとして掲げる中で、そのひとつでもある人権や共生社会の実現に向けての講演をこれだけの頻度・規模で開催できることは、世界レベルで活躍する多様な障がい者アスリートを雇用しているからこそだと思っており、今後も積極的に取り組んでいきたいと思っています」(須藤室長)
セカンドキャリアについては入社の段階から考えているのだそうです。
「今のところ、今すぐに『引退したい』『セカンドキャリアに移行したい』という人はまだいません。今は競技専念型で雇用をしていますが、入社していただくときには弊社の社員として業務もしていただけそうな方、引き続き講演会やメディア活動などでの活躍が期待できる方という目線で採用をしております。競技を引退されても私たちと同じ社員として業務には携わっていただきたいですし、一人ひとりとできること、やっていただきたいことをすり合わせて、これからの雇用の継続に向けて検討をしていきたいなと思っています」(須藤室長)
実際、パラ・デフアスリートを雇用して気が付いたのは、誰もが、自分はSMBC日興証券の一員だという気持ちが強いことだそうです。
「こちらから言わなくても、弊社の一員と言ってくれています。このことは、選手だけではなく、実は多くの社員の会社に対する帰属意識にもつながっています」(須藤室長)
「ブラサカ・キッズトレーニング」の運営には社員のボランティアも
SMBC日興証券は、2014年に日本で開催されたブラインドサッカー世界選手権への協賛を実施し、2015年からは日本ブラインドサッカー協会とアカデミーパートナー契約を締結し、「SMBC日興証券 ブラサカ・キッズトレーニング」というプログラムを開始しました。「ブラインドサッカーを通じて視覚障がい者と健常者が当たり前に混ざり合う社会を実現すること」をビジョンに掲げる日本ブラインドサッカー協会の考え方が、多様性を尊重するという経営理念、DE&I推進に対する同社の姿勢と合致しているというところから、日本ブラインドサッカー協会への支援を決めたのだそうです。
ブラサカ・キッズトレーニングは、ブラインドサッカーの体験を通して視覚に障がいのある子どもたちの成長をサポートするプログラムです。参加したお子さんからは「友達が増えた」「自分でも体をこんなに動かせるんだ」と喜びの声が届いています。それを支えているのが、同社の社員によるボランティアです。
「ブラサカ・キッズトレーニングには、未来のパラアスリートを育成するという意図もあります。実際、ここから日本代表になった選手も出てきています。この活動には、社員がボランティアという形で参加をしておりまして、年間8回ほど、東京と大阪の2拠点で開催しています。視覚に障がいがあるお子様との活動にあたっては、声がけをしたり、手をつないで誘導したり、安全に配慮しています。ボランティアの社員は立候補制です。各回の参加児童が10名前後なので、社員のほうも最大10名程度という人数制限を設けて募集しているのですが、多いと10名を超えてしまうこともあります。リピーターの社員が増えているのはうれしいですね」(村上さん)
自分の子どものように成長を見られるからとボランティアを楽しみにしている社員もいるのだそうです。
共生社会の実現に向けてひとつのロールモデルになれれば
引退後も活躍できる場を会社として提示すること、そしてそれを実現することがパラ・デフアスリートへの安心感にもつながります。須藤室長は「おこがましいのですが、弊社の取組が他企業様のロールモデルのようになれればいいなと思っています」と語りました。
また、障がい者雇用は企業にとっても社内外にさまざまなメリットがあり、パラ・デフアスリートと雇用する企業がWIN-WINになれるものでもあります。
「企業とパラ・デフアスリートをつなぐことが持続的な社会の発展や社会的価値の創造、そして誰もが活躍できるような社会の実現にもつながると思いますので、弊社の取組を見ていただき、企業もパラ・デフアスリートの皆さんもこういうやり方があるんだということをぜひ認識していただけたらと思います」(須藤室長)
DE&Iの推進を成長戦略そのものと位置づけるSMBC日興証券は、今後もパラ・デフアスリートと共に成長を続けます。
SMBC日興証券株式会社
担当部署 | 人事部ダイバーシティ推進室 |
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