支援企業・団体の声
株式会社オープンハウスグループ
2024.8.28
パラアスリートの活躍が障がい者雇用のメンバーにも好影響をもたらした
2024年6月9日、総合不動産企業の株式会社オープンハウスグループ(以下、オープンハウスグループ)が、企業姿勢である「挑戦する人や組織を応援する」を目的に各界で問題提起やディスカッションを行う「O-ENフォーラム presented by OPEN HOUSE」を東京体育館で初開催しました。「パラスポーツと共創する新たな未来」と題した第1回は、この手のイベントでは見られない光景が広がっていました。
およそ50人の聴衆からは何度も笑い声が飛び出すなど、終始大盛り上がり。閉会後のアンケートでは「こんなに笑えたパラスポーツのイベントは初めてでした」という感想が寄せられたほど。一体、どのようなトークが繰り広げられたのでしょうか。
その“発信源”が、オープンハウスグループに所属するパラアスリート・小須田潤太(こすだ じゅんた)選手でした。交通事故で右大腿部を切断した小須田選手は2015年にパラ陸上を始め、2018年からはパラスノーボードにも挑戦。東京そして北京と夏冬のパラリンピックに連続出場して注目を集めました。またパラスポーツへの取組だけでなく仕事面でも、練習で忙しい中、宅地建物取引士を取得するなど何事にも一生懸命に頑張る姿勢が、社内でも評判となっているようです。
「野次をもっと飛ばしてほしい」
「今また足が戻りますと言われても、いりません」
フォーラムのパネルディスカッションに登壇した小須田選手はこのような大胆な発言を連発。小須田選手の朗らかで前向きな人柄に、その場に居合わせた人たちの心はどんどんほぐれていきました。
「パラスポーツは、どんなに失敗をしても、成績が悪くても野次はほとんどなく、どちらかと言えば同情の目で見られることが多い競技です。でも、障がいの有無を問わずスポーツはスポーツだから野次は大歓迎ですと、小須田はとても前向きに話していました。私たちもそういった考えは今までなかったので新鮮でした」と、オープンハウスグループ コミュニケーションデザイン本部ブランドコミュニケーション部ブランディンググループの山尾祥平(やまお しょうへい)さんは振り返ります。
なお、このフォーラムで一緒に登壇したデフ陸上・走り高跳びの髙居千紘(たかい かずひろ)選手(コカ・コーラボトラーズジャパン株式会社)も同様の意見を持っており、障がいがあろうがなかろうが、しっかりスポーツと向き合う姿勢は不変であることを多くの聴衆は感じたようです。
「多くの気付きを得ることができました。今後の人生に役立てたい」といった感想も多かったと、コミュニケーションデザイン本部 ブランドコミュニケーション部 広報の前澤智(まえざわ さとし)さんは話します。
トップアスリートである社員を抱えるオープンハウスグループですが、パラアスリートの登用はもとより、障がい者雇用に対しても、現在のように積極的に取り組むようになったのは、近年になってからでした。
障がい者の雇用率と定着率が上昇した理由
オープンハウスグループでは、2024年6月時点で124人の障がいのあるメンバーが働いています。法定雇用率は2.75%、定着率は93.8%と、不動産業界において高い数字を上げています。同社グループの障がい者の約8割が働くオペレーションセンターの部長を務める市川友和(いちかわ ともかず)さんによると、わずか2年ほどでこの水準を達成したというから驚きです。
「実は2021年までは法定雇用率を達成できていない状況でした」(市川さん)
2022年1月から、社内の障がい者雇用改革に舵を切りました。背景には、同社の事業成長が大きく関係しています。
「社長の荒井から、オープンハウスグループは総合不動産企業の日本一を目指す。だから障がい者雇用にも手を抜くつもりはないという力強いメッセージをもらい、この環境であれば、障がい者雇用においても日本一を目指せると思いました。一流企業であれば当然収益だけでなく、ガバナンス、ダイバーシティなどさまざまな面にも力を入れるもの。そういった機運が高まってきたのも、障がい者雇用規模の拡大に追い風になったと思います」(市川さん)
では、定着率アップに関して具体的にどのような取組をしているのでしょうか。派手さはなく、一つ一つやるべきことをやってきた結果だと市川さんは謙遜しますが、話を聞くとその内容は目を見張るものでした。
まずは働きやすい環境の整備です。オペレーションセンター内にサポートグループという拠点常駐型のメンバーサポート部門を設け、公認心理師、精神保健福祉士、社会福祉士などの専門スタッフが、障がいのあるメンバーの課題にスピーディに対応できる体制を整えました。現在は、八王子事務所に2名、横浜事務所に2名、柏事務所に1名が常駐しています。
年間休日は通常の社員よりも多い125日。加えて、休憩時間を配慮したり、定期通院を有給扱いにしたりと、長く安心して働ける制度を用意しています。ここで重要なのは、すぐさま対応することです。
「メンバーから要望があったら、できるだけ早く判断し、対応するようにしています。丁寧に対応すればメンバーの間にも『会社はきちんと応えてくれるんだ』『私たちの特性を理解してくれようとしている』といった空気が醸成されます。そうした一つ一つの積み上げが成果として現れているのではと考えています」(市川さん)
帰属意識を持ってもらいたい
他にも定着率を高止まりさせる取組はあります。現在、オペレーションセンターには営業サポートなど約80の業務があり、それぞれに業務リーダーを選任しています。
「他の会社だとまだマネージャーに至らないようなメンバーでも、業務リーダーに抜擢しています。もちろんうまくいかないこともありますが、責任ある仕事を任せることでモチベーションが上がるメンバーがいるのも確かです」と市川さんは力をこめます。
これにはもう一つの狙いがあります。それは会社に帰属意識を持ってもらうこと。リーダー職ともなれば、他の拠点で働くメンバーとのやり取りは日常的に発生します。彼ら、彼女らと密にコミュニケーションをとることで、自分もオープンハウスグループの一員であるという自覚が高まるといいます。
「業務リーダーになれば責任感も出ますし、担当する業務の移管元の部署との連携やマニュアル作成などの業務もあります。なるべく多くのメンバーにそうした機会を設けることでオープンハウスグループへの帰属意識を持ってほしいと考えています。ひいてはそれが勤め続ける理由にもなるはずです」(市川さん)
パラアスリートの支援にも乗り出す
時を前後して、オープンハウスグループではパラアスリートの支援体制も強化しました。
冒頭に登場した小須田選手は、2020年の春頃から、アスリート活動に専念できるようになりました。具体的には強化合宿費や義足のメンテナンス費用など、主に金銭面での全面的なサポートを行なっています。
同社にはもう一人のパラアスリートが在籍しています。2023年ブラインドラグビー日本代表の細谷健太(ほそや けんた)選手です。小須田選手とは異なり、現在は通常業務と並行してアスリート活動をしています。
興味深いのは、元々は2人とも通常の採用プロセスを経て社員になったのでした。小須田選手は2016年に入社。上述したようにその頃から既にパラ陸上には取り組んでいましたが、陸上そしてスノーボードと、徐々にパラアスリートとしての頭角を表したことで、会社としても応援すべきだとなりました。
一方の細谷選手は2014年にグループ会社である株式会社オープンハウス・ディベロップメントに入社した後、指定難病のレーベル遺伝性視神経症を患いました。そこからパラアスリートの道へ。以前は建設現場の監督として働いていました。現在は音声PCや拡大読書器などを活用して、施工企画業務を担当しています。
今後もさらに多くのパラアスリートに入社してもらいたいと市川さんは願います。そうした選手たちの活躍は、障がいの有無にかかわらずスタッフに好影響を与えるからです。
「現在グループ全体で約5800人の社員がいますが、やはり同じ会社に所属するアスリートの活躍は大きな刺激になります。また、パラアスリートの活躍により、パラスポーツへの理解は当然深まりますし、障がいのあるメンバーにとってもすごく良い影響があります。つい先日も『小須田選手はこの前、全体朝礼で取り上げられていましたよね』などと嬉しそうに話すメンバーもいました。障がいがあってもきちんと会社の中でフォーカスされる場があるということが、パラアスリート以外のスタッフのモチベーションアップのきっかけにもなります。私個人としてもパラアスリート採用にも力を入れていきたいですね」(市川さん)
小須田選手は2026年に開催されるミラノ・コルティナダンペッツォ冬季パラリンピックでの金メダル獲得を目指して日々奮闘中です。出場が決まれば、会社を挙げて現地に応援に行くなど、オープンハウスグループとしてもパラスポーツにより一層注力していくことになるのではないでしょうか。
株式会社オープンハウスグループ
担当部署 | コミュニケーションデザイン本部ブランドコミュニケーション部 |
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住所 | 〒100-7021 東京都千代田区丸の内二丁目7番2号 JPタワー21階 |
URL | https://openhouse-group.co.jp/ |