支援企業・団体の声
株式会社みずほフィナンシャルグループ
2025.7.16
ブラインドマラソン・井内菜津美選手とみずほフィナンシャルグループがともに挑むものとは?
2025年2月2日(日曜日)、気温9度の曇天の下で開催された「別府大分毎日マラソン大会」。視覚障がい女子の部(T11クラス)で3時間11分36秒という、日本記録ならびにアジア記録を同時に打ち立てたのが、井内菜津美(いのうち なつみ)選手です。
彼女が所属するのは、株式会社みずほフィナンシャルグループ(以下、みずほFG)です。同社は2017年からパラスポーツ支援に注力。現在は公益財団法人日本パラスポーツ協会(JPSA)のオフィシャルパートナー、そして一般社団法人日本車いすバスケットボール連盟のオフィシャルサポーターとして、単なる資金支援にとどまらない多角的な取組を展開しています。
今回の取材では同社が描く「共生社会」の理想像を探ります。
パーパスと多様な社員の活躍推進のための3つの約束をともに体現したい
みずほFGは2021年に開催された国際大会を機にパラスポーツと本格的に関わり始めました。
この取組の根底にあるのは、みずほFGのパーパス(一般的に企業の存在価値、社会的意義といった意味)である「ともに挑む。ともに実る。」と、「多様性を力に」「自分らしく働き人生を豊かに」「認め合い高め合うカルチャー」という、同社における多様な社員の活躍推進のための3つの約束です。この両方を体現する象徴としてパラスポーツに着目しました。同社コーポレートカルチャー室ブランドコミュニケーションチームの堀聡子(ほり さとこ)さんは、経緯を次のように説明します。

「『共生社会の実現』といっても、何からすべきか分かりづらいところがあります。そのような中で、スポーツは皆さんが取り組みやすく、共生社会や障がい者支援についても理解を深めやすいと感じました。そこでまずは自分たちでパラスポーツを体験することが必要だと考え、サポートを始めたのです」
誰もが安心・安全にスポーツ観戦を楽しめる環境をめざして
2022年には日本車いすバスケットボール連盟の協賛も開始しました。この競技を選んだ理由について、堀さんは「障がいの重さや性別に関係なく一緒にプレーできるため、多様な人材の活躍推進という観点で親和性があると感じました」と語ります。
2021年の国際大会での経験もこの決断を後押ししました。「これまであまり知られていなかったパラスポーツの種目や魅力を知ることができました。そうした体験を風化させることなく、どのように継続すればいいかを考えた末、車いすバスケットボールをサポートしてはどうかという話が社内で持ち上がりました」と堀さんは振り返ります。
車いすバスケットボールのクラブ日本一を決定する国内唯一の大会「天皇杯」では、社員観戦を実施。すぐに募集が埋まるほどの人気ぶりを見せました。参加した社員からは「初めて観たけど、迫力があり、とても熱く楽しかった」「車いすの滑らかでスピーディーな動きが美しく感動した」といった感想が寄せられました。パラスポーツへの理解と関心の深まりが社内で一段と進んだことに堀さんは手応えを感じています。

さらに興味深いのは、競技を“する側”だけでなく“見る側”のサポートも行っている点。同社は2013年から公益財団法人日本サッカー協会(JFA)、サッカー日本代表への協賛をしていますが、2024年3月には「JFAインクルーシブプログラム」への協賛をスタートしました。同プログラムは、年齢や性差、障がいの有無などにかかわらず、誰もが安心・安全にサッカー観戦できる環境や機会を作ることをめざしています。
プログラムの内容は、日本代表戦で障がい者の方が安心して観戦できる「BLUE DREAM SEAT」の設置、障がい者の方のプレマッチセレモニーへのご招待など。ご招待した障がい者の方は、選手と一緒にピッチに出てセレモニーに参加してもらいます。
「パラアスリートの支援も非常に大切ですが、一方で見る側のサポート、つまりたとえ障がいがあってもスポーツを一緒に楽しめるようにすること。障がいの有無にかかわらず一緒にスポーツを楽しむ。このような機会が今後もっと増えればいいと思っています」と堀さんは展望を語ります。
初のパラアスリート社員
みずほFGのパラスポーツ支援において、大きな転機となったのが2019年8月の井内選手の入社でした。それまで団体や競技への支援が中心だった同社にとって、パラアスリートを社員として迎えることは新たな挑戦でもありました。
彼女の場合、アスリート活動そのものが業務だといいます。そのため「アスリート活動を集中してできるように会社としてサポートしているのです」と堀さんは強調します。
井内選手がみずほFGを選んだのはなぜでしょうか。前職ではフルタイムで仕事をした後にトレーニングをしていましたが、競技により多くの時間を割ける環境を求めていました。

「国際大会直前の2019年ということもあり、出遅れ感はありました。前の会社には愛着があって悩みましたが、一歩踏み出さなければと。結果、みずほFGと出会えたのは本当によかったです」
一方、みずほFG側もパラスポーツの魅力を体現してくれる人材を探していました。ディスカッションを重ね、両者のニーズがマッチし、晴れて井内選手はみずほFGの所属アスリートに。なお、競技に打ち込める環境だけでなく、同社が掲げるビジョンに共感した点も大きな決め手になったそうです。
井内選手の現在の所属は東京にあるコーポレートカルチャー室ですが、京都を拠点に活動しています。どのようなスケジュールで日々を過ごしているのでしょうか。
「平日だと走るのはだいたい夜ですね。私の場合、一緒に走ってくれる伴走者が必要で、その方も日中は仕事をしていますので、午前中は主に筋トレなどで体作りをしています。その後、昼間の時間帯でSNSの原稿を書いたり、東京のコーポレートカルチャー室とミーティングをしたり、講演活動の準備をしたりしています」
昨年は地域の中学校で講演を行ったほか、アイマスクを装着して視覚障がい者の感覚を体験するイベントを実施しました。
社員の応援が支えに
井内選手はみずほFGに入社したことで、競技に対する意識が大きく変わったといいます。

「この会社に入ってから、いろいろな人たちの思いを肌で感じるようになりました。今はどうすれば結果を出せるか、そのために何をすればいいかといったところまで考えが発展しています」
また、みずほFGのパーパスである「ともに挑む。ともに実る。」は、まさにブラインドマラソンの本質とマッチしていると井内選手は強調します。
「ブラインドマラソンは本当に自分一人ではできない競技です。伴走者だけではなく、日々サポートしてくださっている方々もたくさんいます。そうした皆さんと同じ気持ちで戦っていくという点が、パーパスにも合致すると実感します」
みずほFGの強みの一つは、47都道府県すべてに拠点を持つネットワークです。これは各地でレースをする井内選手にとっては沿道での声援につながるため、大きな支えとなっています。そして、そうした社員による応援の数も着実に増えているようです。

「多くの人に『次の大会、頑張ってくださいね』などと言われると、こちらもやはり気合いが入ります。すごくパワーになっているし、応援されるのは純粋にうれしいです」
一方で、井内選手の存在はみずほFGの社員にも良い影響を与えています。「井内選手の頑張りを知ることで、自分ももっと挑戦しようといった気持ちになる社員がどんどん出てきています」と堀さんは喜びます。
井内選手は目下、3年後の2028年に開催される国際大会出場を目標に掲げています。そのためには世界ランキング8位以内に入る必要があり、フルマラソンで3時間5分のタイムが基準になると考えています。現在の自己記録から6分半短縮と高いハードルですが、徐々に調子を上げていきたいと意気込みます。
共生への願い
他方、井内選手は競技を通じて社会に伝えたいメッセージがあるといいます。それは周囲との調和や一体感の大切さです。

「伴走者の方と日々練習していると、お互いの感じていることなどが口に出さなくても分かります。これは仕事とも通じているのかなと思っています。自分の感覚だけではなく、どういう風に周りの人は思っているか、どうすれば皆が働きやすくなるか、そういった発想も大事だなと感じています」
また、世の中に対し、視覚障がい者として感じることも口にしました。
「“何となく”行動している人が多いです。大丈夫だろうと思ってスマホを見ながら歩いたり、音楽を聴きながら走ったり。マラソン大会でも給水ポイントで、急に前を横切る人がいますし、点字ブロックの上に立ち止まっている人もいます。自分たちが感じていることだけではない世界もあるということを、もう少し知ってもらえれば」
これまでの6年間の井内選手の歩みは、企業とパラアスリートが互いに成長し、刺激し合える関係を築けることを証明しています。パラスポーツを通じて共生社会を実現したいと考えるみずほFG。同社の挑戦は、まだ始まったばかりです。

株式会社みずほフィナンシャルグループ
担当部署 | コーポレートカルチャー室ブランドコミュニケーションチーム |
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