パラスポーツの未来を切り開くカギは、競技人口を増やすこと 網本麻里選手が考える車いすバスケ女子のこれから

2021.11.08
パラスポーツの未来を切り開くカギは、競技人口を増やすこと 網本麻里選手が考える車いすバスケ女子のこれから

車いすバスケットボール女子日本代表チームのキャプテンとして先の東京2020パラリンピックで活躍した網本麻里選手(BEAMS所属)が、東京・新宿のBEAMS JAPANで10月12日(火)まで開催された、パラスポーツの魅力を発信する展示スペース『Wear and Cheer!!』に訪れました。
この夏盛り上がったパラスポーツへの応援や興味・関心を絶やさないために、一人ひとりがそれぞれの立場でできることとは? 網本選手に女子車いすバスケットボール界が置かれている現状、そしてパラスポーツの未来について、様々な角度からお話を伺いました。

日本が誇る総勢22名の漫画家がパラアスリートを魅力たっぷりに描いた

パラスポーツの未来を切り開くカギは、競技人口を増やすこと 網本麻里選手が考える車いすバスケ女子のこれから

BEAMS JAPANの展示スペース『Wear and Cheer!!』では、TEAM BEYONDとBEAMSがコラボした限定Tシャツ2種類・各4色の展示・販売(展示終了後も販売は継続)を実施しています。注目は、日本を代表する漫画家たちが描いたパラスポーツ22競技のアスリートのイラストを1枚に集結させたデザイン。「昔から漫画が大好きなんです!」と語る網本選手も、Tシャツを真剣な眼差しでじっくりと眺めていました。

「私が愛読している真島ヒロ先生(代表作『RAVE』)がゴールボール、古舘春一先生(代表作『ハイキュー!!』)がシッティングバレーボール、藤巻忠俊先生(代表作『黒子のバスケ』)が車いすバスケットボールを描かれていて、とても感動しました。他の競技も動きなどの特徴をよく捉えられていて、さすがプロだなぁと。漫画家さん一人ひとりの想いが伝わるイラストを見ていると、とてもうれしい気持ちになります。」

Tシャツは、22枚のパラアスリートの漫画絵をカード状に散りばめたデザインで、プリントでしっかりと細かいところまで絵のタッチが再現されています。

「きっと漫画ファンの方も満足できる仕上がりなのではないでしょうか。こんなにもパラスポーツをアピールできるTシャツは他にないので、私は普段着としてはもちろん、練習や試合の行き帰りなど、なるべくたくさんの人の目に触れる時に着たいです。話のネタになりそうですし、きっと楽しく盛り上がれるんじゃないか、と思います。」

パラスポーツの未来を切り開くカギは、競技人口を増やすこと 網本麻里選手が考える車いすバスケ女子のこれから
パラスポーツの未来を切り開くカギは、競技人口を増やすこと 網本麻里選手が考える車いすバスケ女子のこれから

展示スペースには、ボッチャ、ゴールボール、5人制サッカー、車いすバスケットボールなど、実際の競技用具が飾られていて、手に取って見ることができます。ちなみに車いすバスケットボール用の車いすもあり、それは偶然にも網本選手が愛用しているメーカー、オーエックスのものだそう。

「普段なかなか目にすることのない競技用具類だと思うので、ぜひ触れてパラスポーツを身近に感じてみてほしいですね。例えば車いすは、地面に対してタイヤが垂直ではなく八の字になっているので、衝突時も距離が保たれ、選手同士のカラダの接触を避け、怪我を回避できるように考えて作られているんです。また試合中にタイヤがパンクした時もすぐにスペアタイヤを付け替えられるよう、ワンタッチで外れる仕様になっています。そういう細かいところにも注目しながら、楽しんで見ていただけたらうれしいです」

東京2020パラリンピックでは、戦いの場に居続けることの大切さを痛感した

去る2021年8月24日〜9月5日、熱戦を繰り広げて幕を閉じた東京2020パラリンピック。車いすバスケットボール女子日本代表は、3大会・13年ぶりとなる出場を果たし、見事6位に入賞しました。網本選手にとって、「このパラリンピックでの収穫は、想像以上に大きかった」と言います。

パラスポーツの未来を切り開くカギは、競技人口を増やすこと 網本麻里選手が考える車いすバスケ女子のこれから

「世界のトップクラスの壁は高く厚かったです。でも、その力の差をどれだけ縮めるかでメダルが見えてくる、という具体的イメージもわきました。予選リーグと決勝トーナメントがある大会に出場するのが久しぶりだったのですが、世界各国のチームを見ていて、決勝トーナメントでのギアの上げ方は目を見張るものがあったし、勝負の感覚が研ぎ澄まされているのを肌で感じることができました。フィジカルとメンタルをトップギアにするタイミングの重要性を、改めて考えましたね。個人としてもチームとしても、パラリンピックのように楽しさと緊張感が混在するような、そういう特別な場に居続けないといけないな、と強く思いました。」

コロナ禍での開催のため、試合会場はどこも無観客。それでもSNSなどを通して届く声に勇気付けられながら、「応援されている」という実感をパワーに変えて過ごした数週間だったそうです。

「自国開催ということもあり、どこでもインターネット環境が整っていたので、試合前後の周囲の反応は、ほぼタイムラグなしで見ることができました。無観客だったからこそ、テレビ放送、ネット中継、見逃し配信などが充実し、試合を見てくださった人数も増えたのだと思います。それはすごくありがたいこと。画面越しでも応援してくださる言葉や写真は、すごく私のパワーになりました。」

パラスポーツの未来を切り開くカギは、競技人口を増やすこと 網本麻里選手が考える車いすバスケ女子のこれから

チームは、パラリンピック期間中、東京・晴海の選手村に約2週間滞在していました。網本選手は過去にオーストラリア、ドイツ、スペインのリーグでも活躍していたこともあり、再会を心待ちにしていた仲間が各国からやってくることにもワクワクしていたのだとか。

「当然ですが感染予防が第一なので、声掛けも短い挨拶程度、写真を撮る時もソーシャルディスタンスを保っていました。会いたかった選手たちの顔を直接見ることができただけでも、私はうれしかったです。選手村では、ボランティアやスタッフの方たちのおかげで、不自由なくすごく快適に過ごせました。全世界の選手が食事に困らないよう配慮された幅広いメニュー構成のメインダイニングと、数日ごとにメニューがガラリと入れ替わって日本各地の味が楽しめるカジュアルダイニング、その2つを行き来していたので『今日はどこの地方の料理が食べられるらしいよ!』などと言って、飽きることは全くなかったです。ちなみにSNSで海外の選手が紹介して話題になった味の素冷凍食品のギョーザは、本当に美味しくてほぼ毎日食べていました(笑)。」

健常者も障がい者に混じってプレーできるのが車いすバスケの魅力の一つだと思う

この夏盛り上がりを見せたパラリンピックですが、この熱量を維持しながらパラスポーツを根付かせていくために、あらゆるところでアクションが行われています。BEAMSのYouTubeチャンネル『小山薫堂と設楽洋のBEAMS JAPAN会議』Vol.12(https://www.youtube.com/watch?v=aDuGR9uSfWU)では、「パラスポーツを応援しよう」をテーマに、5人制サッカーの菊島宙選手がゲスト出演し、5人制サッカーの魅力や見どころを発信しています。
また、網本選手がゲスト出演する回も近々配信を予定しているそう。楽しみにお待ちください。

パラスポーツの未来を切り開くカギは、競技人口を増やすこと 網本麻里選手が考える車いすバスケ女子のこれから

「東京2020パラリンピック直後で盛り上がっているパラスポーツへの興味や応援の熱をチャンスと捉え、しっかり次へ活かしていかないといけませんね。このYouTubeチャンネルをはじめ、いろんなメディアに取り上げていただくことも大事だし、自分のSNSアカウントも駆使しながら、ちょっとでもパラスポーツの魅力を広めていくことに貢献したいと思っています。」

「発信したいことは尽きない」と語る網本選手。意外と一般に知られていないことだけれど、知っていると人によってはチャンスになり得るという耳寄りな情報を教えてくれました。それは、「パラスポーツの中でも車いすバスケットボールに関しては、障がい者限定のスポーツではない」ということ。

「意外と知らないですよね。車いすバスケットボールは、今は健常者でも天皇杯、皇后杯に出られるんですよ。持ち点は、私と同じ4.5です。コートに立つ5人の合計が14点以内であればいいんです。障がい者に混じって健常者も一緒にプレーできるというのを聞くと、『面白そう』『やってみたいな』と思う方もいるのではないでしょうか。それって健常者にとってもチャンスだし、共生社会を考える良いきっかけになるんじゃないかと思います。」

パラスポーツの未来を切り開くカギは、競技人口を増やすこと 網本麻里選手が考える車いすバスケ女子のこれから

競技人口がなかなか増えず、選手の高齢化が進んでいる女子車いすバスケットボール界。10代、20代の若い人たちが基礎から気軽に始められる環境づくりはもちろん、競技を続けていくための周りの支援や理解を得られるかどうかなど、クリアしないといけない課題は山積みです。

「女の子の親御さんは特に『障がいを持っている子にあんな激しいスポーツはさせられない』『怪我が怖いからさせたくない』と、本人の希望を聞かずに止めてしまう場合が多いんです。実際、プレー中は接触もあるけれど、ちゃんと工夫されているスポーツだから、そこまでカラダ同士が当たるものではないんですね。コロナ禍が落ち着いたら練習場の見学の受け付けも再開すると思いますし、最初からダメという判断はしないで一度やってみてほしいです。選手の家族はやっぱり理解してくれている人がほとんどで、ある中学生の親御さんは『うちの子をビシバシ指導してください』とおっしゃるんです。そういう時、障がいは関係なく、1人の人間同士として信頼しあって向き合えることがうれしいです。みんなで助け合って何かを成し遂げ、成長できるのであれば、それはもはや障がいがないのと同じだ、と私は考えています。」

次回開催のパラリンピックは、3年後のフランス・パリ2024大会。東京2020大会での6位入賞という結果に満足せず、次こそはメダル獲得、とさらなる高みを目指していくそう。そして来年、再来年とアジアパラリンピック競技会、世界選手権、パラリンピック予選と、休む間もなく重要な国際大会が続いていきます。

パラスポーツの未来を切り開くカギは、競技人口を増やすこと 網本麻里選手が考える車いすバスケ女子のこれから

「大会で結果を残すことも大事だし、競技人口を増やして後輩を育てていくことも大事。こんなふうに自分の中で目標・課題がいつまでも途絶えない状態がありがたいし、うれしいです」。

高い壁に挑み続け、さまざまなバリアを打ち破りながら躍進する網本選手の姿は、たくさんの人にポジティブな影響を与えるはずです。車いすバスケットボール女子日本代表の活躍と競技人口やサポーターが増えることは、ロングスパンで大きな相互作用をもたらし、パラスポーツ全体の振興にも繋がっていくことでしょう。TEAM BEYONDとしてもこれから応援し続けていきます。

〇「HERO PROJECT」日本を代表する漫画家とともに、パラスポーツの世界にヒーローを。
https://www.para-sports.tokyo/hero_project/

〇TEAM BEYOND×BEAMS JAPANによるコラボレーションが実現!
https://www.para-sports.tokyo/topics/activity/team-beyondxbeams-japan/
※期間限定イベント「Wear and Cheer‼︎~パラスポーツを応援しよう」は終了しました

20211108

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