「ラグビーワールドカップ2019日本大会」で、日本代表が史上初のベスト8入りを果たし、日本中が盛り上がる中、もうひとつのラグビー世界大会となる「車いすラグビーワールドチャレンジ2019」が10月16日(水曜日)から20日(日曜日)まで東京体育館で開催されました。
世界ランク上位の強豪8ヵ国が集結した本大会。3位決定戦と決勝戦が行われた最終日には、TEAM BEYONDメンバー向けの観戦会が実施されました。
車いすラグビーは、車いす同士のぶつかり合いが許された唯一のパラリンピック競技。別名「マーダーボール(殺人球技)」とも呼ばれるほど激しいスポーツです。
選手は障がいの程度によって持ち点が設定されており、コートに入る4人の合計点を8点以内(女子選手が入るときは、1人当たり0.5点加算)に編成します。
試合は、8分×4ピリオドで実施。健常のラグビーとは違い、ボールはバレーボールと同じ球形、パスは前に出してもOK。コートはバスケットボールと同じ広さで、両端にあるトライラインを、ボールを保持した状態で通過する(あるいは車いすの二つの車輪が乗る)と「トライ」が認められて1点入ります。
日本代表はイギリスに勝利!銅メダルを獲得!
1試合目は、日本対イギリスの3位決定戦。前日の準決勝で、ともに相手チームに1点差で敗れた両チーム。メダルとプライドをかけて戦います。会場では、初めて観に来た人でも試合を楽しめるよう、車いすラグビーのルールや見どころをわかりやすく解説。観客席がひとつの大きな応援団となって、チームジャパンの背中を後押しします。
会場の声援を味方につけた日本。キャプテン・池透暢選手のロングパスや、エース・池崎大輔選手の独走トライ、そして障がいが重い「ローポインター」の献身的なディフェンスなど、チーム一丸となってイギリスに立ち向かいました。
試合開始から相手に一度もリードを許すことなく、最後は54-49と5点差で突き放し、日本は見事勝利。銅メダルを獲得しました!
続く、アメリカ対オーストラリアの決勝戦は、アメリカのチャック・アオキ選手とオーストラリアのライリー・バット選手の攻防がすさまじく、本大会を締めくくる最終戦にふさわしい熱い戦い。オーストラリアは第2ピリオドで同点に追いつくも、最後はスピードの落ちないアメリカに引き離され、アメリカが59-51で勝利。見事優勝の栄誉を勝ち取りました。
ドンッ、ガガン、プシュー――。激しく車いす同士がぶつかる音、タイヤがパンクする音を聞くたびに、沸きあがる大歓声。5日間の入場者数が3万5000人を超えた本大会は、1位アメリカ、2位オーストラリア、3位日本という結果で、幕を閉じました。
生観戦ならではの迫力ある“音”を満喫
試合後に涙を流していた枝川芽久妙さん。
「勝っても負けても試合が終わったらノーサイド。お互いの健闘をたたえ合っているところを観たら、たまらなくなって……」と、芽久妙さんはまた涙。今回はご家族で参加する予定だったそうなのですが、台風の影響で自宅は床下浸水。水没した友人の家を手伝うため、今回ご主人は残念ながら来られなかったそうです。そんな大変な状況の中でも「今日は来てよかった」としみじみ語りました。
息子の陽向くん(中1)と新汰くん(小5)も「ぶつかったときの音がすごい!」「タイヤがパンクする音まで聞こえてびっくりした!」と目を輝かせていました。車いすラグビーの試合会場に初めて足を運んだ親子3人は、会場でしか感じられない生観戦の迫力にすっかり魅了されていました。
「車いすバスケットボールは観たことがあるけども、車いすラグビーの観戦は今日が初めてです」という飯田玲央奈さんは、大学の同級生・渡辺華生さんと一緒に参加。
「オフェンスだけではなく、頭を使ったディフェンスもおもしろいですね。車いす同士がぶつかる音もすごかった!」と感激していました。
渡辺さんは、来年のパラリンピック競技大会の車いすバスケットボールとゴールボールに当選したといいます。飯田さんは、ボランティアとしての参加を考えているそうです。
家族5人で仲良く観戦していた堀澤さん親子。
「会場も盛り上がっていましたし、何より車いす同士がぶつかるときの音がすごい!観ていて飽きないし、本当に楽しかったよな!」と、父・勇二さんの呼びかけに、母・かおりさんをはじめ、健太郎くん(中1)、浩子さん(小3)、康平くん(小1)も大きくうなずいていました。健太郎くんは、以前、バスケットボール用の車いすに乗ったことがあるらしく、「操作が難しい競技用の車いすであんなに速いスピードが出せるのが信じられない」と感心しきり。これからも機会があれば、ほかの競技も観に行きたいと話していました。
タイヤ跡が残るコート上で記念撮影
表彰式終了後、会場の一角で交流会がスタート。ゲストは、日本車いすラグビー連盟強化委員であり、車いすラグビーのクラブチーム「北海道 T×T Big Dippers(ティーバイティー ビッグディッパーズ)」のヘッドコーチも務める理学療法士の中村飛朗(ひろ)さんです。中村さんはNHK BSで、本大会予選のブラジル戦とイギリス戦の解説も担当されていました。
高校時代はラグビー部でウイングだったという、司会のフリーアナウンサー・波多江良一さんとの掛け合いで、まずは観戦した2試合を振り返ります。
中村さんからは、いまの日本代表について、2017年にケビン・オアーヘッドコーチが就任して以来、守備力が強化されてターンオーバーがとれるチームになったこと。そして、17歳の橋本勝也選手などの若手の台頭が楽しみであることなどを語っていただきました。
質問コーナーでは、TEAM BEYONDのメンバーから「本大会を通じて、日本チームにはどのような課題が見つかったのでしょうか」という質問があり、中村さんからは「準決勝で、最大のライバル・オーストラリアに1点差で負けた日本。オーストラリアのかたいディフェンスをどう攻めきるかが、パラリンピック本番に向けての大きな課題であると思います。」とお答えいただきました。
また、12月20日(金曜日)から22日(日曜日)まで千葉ポートアリーナにて行われる車いすラグビーの全日本選手権について、「(まだ車いすラグビーは初心者なので)どのチームが強いのかを教えて下さい!」という質問も。中村さんは、「池崎選手や今井友明選手が中心となって立ち上げて、ニュージーランド選手が助っ人として加わる“東京サンズ”、若山英史選手が所属し、カナダのエースであるザック・マデル選手も参加する“沖縄ハリケーンズ”が優勝候補です」と選手情報もあわせて教えてくださいました。
また、抽選会では、本大会オフィシャルサプライヤーである、ゴールドウイン製のマフラータオルを20名様にプレゼント。
交流会の最後は、車いすのタイヤ跡が生々しく残るコート上で記念撮影を行い、迫力満点だった試合の余韻も感じることができました。
チャレンジする選手たちを応援している自分たちが、気づけば選手たちからパワーや気づきを与えられることが多くあります。TEAM BEYONDでは、これからも観戦会や交流会を実施します。ご家族やお友だち、会社のみなさんと一緒に、パラスポーツを会場で応援しましょう!
TEAM BEYONDへの参加をお待ちしております。