TEAM BEYOND CONFERENCE
パラスポーツで社内外に新しい風を起こす ~気付きと変化でイノベーションにつなげる~

2024年2月1日、野村コンファレンスプラザ日本橋にてTEAM BEYOND CONFERENCE「パラスポーツで社内外に新しい風を起こす ~気付きと変化でイノベーションにつなげる~」を開催しました。社内外に変化を起こすきっかけとして、パラスポーツへの関わりに注目する企業が増えている昨今、パラスポーツを通じたDE&Iの推進やエンゲージメントの向上、サービス・製品開発の事例等について、とても興味深い話を聞くことができました。

アーカイブ映像(2024年12月31日まで公開)

事例紹介①「社会と企業の価値に繋げるパラスポーツ支援 ~技術開発やコミュニケーション戦略を通じたDE&I推進への挑戦~」

株式会社ブリヂストン Global CCO・Global 広報・Global ビジネスサポート管掌 オリンピック・パラリンピック推進課
鳥山聡子氏

始めに事例をご紹介いただいたのは、株式会社ブリヂストン(以下、ブリヂストン)でオリンピック・パラリンピックのパートナーシップマネジメント・権利活用のグローバル統括および国内の社内外アクティベーション統括に従事する鳥山聡子氏です。

鳥山氏は冒頭で、「ブリヂストンは創業時から『最高の品質で社会に貢献する』という使命を持っており、オリンピック・パラリンピックの『スポーツを通じてより良い社会を創っていく』という精神とマッチした」とオリンピック・パラリンピックとパートナーシップを結んだきっかけを紹介しました。また、グローバルでブランドとしてありたい姿をお伝えするパートナーが欲しかったことも目的の一つだったと振り返ります。

続いて紹介したのは、「CHASE YOUR DREAM」というキーメッセージです。ブリヂストンのオリンピック・パラリンピックに関連する全ての活動は、「様々な困難を乗り越えながら夢に向かって挑戦し続けるすべての人の挑戦・旅(journey)を支えていく」というメッセージを伝えられているかを常に意識していると鳥山氏は力説します。

具体的な取組については、「東京2020大会まで」「POST TOKYO」「これからの挑戦」の3つのフェーズに分けてご紹介いただきました。

東京2020大会までは、気運に乗って最大限パラスポーツ・パラアスリートとの「接点」を創る・増やすことに注力し、健常のスポーツだけでなくパラスポーツの体験イベントも併せて開催。加えて、パラアスリートが使用する用具にメーカーとしての技術や知見を活かしたいという思いもあり、競技用義足のソールや競技用車いすのタイヤの開発なども行いました。

東京2020大会後も取組を継続しましたが、思っていた以上にメディアに取り上げられなくなり、企業が情報を発信し続けていくことの重要性を感じたそうです。一方で、多くの企業が人的資本経営やDE&I推進に注目し、多様な人材を活用する組織を作ることは企業力に還元されるということが世の中でよく言われるようになりました。そこで着手したのが、アスリートやタレントがDE&Iについてカジュアルにトークする番組の制作でした。「健常の選手とパラの選手の価値が必要以上に別で語られる必要はない。どちらもアスリート一人ひとりがもつストーリーの強さは変わらないし、パラスポーツをパラスポーツの枠の中で語るには限界があると思った」とパラスポーツを切り口にDE&Iを学ぶ機会を提供する理由について語る鳥山氏。

「健常のスポーツとパラスポーツが並んでいても違和感がないということが当たり前である、又は、これまで当たり前だと思っていたことに案外縛られているかもしれないということを、パラスポーツやパラアスリートと一緒に世の中に発信していきたい。」と鳥山氏はこれからの挑戦について語りました。具体的には、パラアスリートのみならず健常のアスリートや有識者の方とアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)、チームワークなどを論じる「企業活動への還元」を意識したコンテンツや、健常のアスリートにパラアスリートの凄さを語っていただくような対談ムービーの制作などを行っているそうです。

最後に、鳥山氏はパラスポーツ・パラアスリートとのパートナーシップの価値について次のように語り、締めくくりました。
「パラスポーツやパラアスリートを応援することが目的ではなく、対等なパートナーシップとして互いにどのような価値を提供できるのかを具現化できないのであれば、取組はサスティナブルに続かないと思っています。いろいろな人が活躍できる世の中を作るため、引き続きスポーツに限らず、パラアスリート・パラスポーツとのコラボレーションをトライアンドエラーしていきたいと思います」

事例紹介②
「パラスポーツを通じた共生社会実現」

株式会社アシックス パラスポーツ企画部 部長
君原嘉朗氏

続いて事例をご紹介いただいたのは、株式会社アシックス(以下、アシックス)で2022年に新設されたパラスポーツ企画部の部長を務める君原嘉朗氏です。

パラスポーツ企画部は「私たち誰もが一生涯、運動・スポーツに関わり心と身体が健康で居続けられる世界の実現へ」というものを活動方針として掲げ、障害当事者も含めた全ての世代に対して事業を展開しています。

君原氏からパラスポーツ企画部の取組として3つ紹介がありました。1つ目は「プロダクト・サービスの調査・研究」についてです。研究部門や人事部門などの社員に実際に障害の体験をしてもらい、得た気付きをグループで振り返るワークショップを開催。また、パラアスリートとのコミュニケーションを通じた共同開発やパーソナライズ対応などの知見を高めていく活動も行っているそうです。

2つ目は「共生社会実現に向けた取組」です。共生社会の実現は1社だけが何か取り組むことで変わるものではないという考えから、アシックスでは様々な企業や団体とパートナーシップ連携をして一緒にアクションを行っているといいます。また、昨年10月には車いすバスケットボールの鳥海連志選手と所属契約を締結。君原氏は、「鳥海選手のアスリートの枠を超えた様々な活動を支援することで、そこから生まれる想像的なアイデアを事業活動に活かしていきたい」と今後の展望を語りました。

3つ目は「社員の障害者に対するリテラシー向上のための取組」です。アシックスでは、社員に向けた障害理解促進セミナーの実施やパラスポーツ体験イベントへの参加促進、オリジナルアニメを使った障害者雇用の促進・マインドセットを考えるe-Learning動画の配信などを行っています。君原氏は、「障害者雇用は法定雇用率をクリアすることが目的ではなく、障害当事者含めた多様な人材を採用することで多様な価値観からの気づきや変化がイノベーションを生むきっかけとなり、会社の成長へとつながっていくと考えています」と力説しました。

続いて、アシックスがプラチナスポンサーを務め、今年の5月に開催される「神戸2024世界パラ陸上競技選手権大会」での活動計画を紹介。アシックスは、「大会をきっかけに、障害者をはじめ誰もが暮らしやすいまちづくりを進める」という理念に共感し、パートナー企業となりました。この大会を通じて実施する社員向けの取組として君原氏が挙げたのは「社員ボランティア企画」と「社員全員参画企画」という2つの活動です。大会会場の近くに創業理念や哲学を表したコーポレートアートにもなっている自社の研究所があるとのことで、国内の社員全員を大会会場とこの研究所に迎え、「パラスポーツを通じた障害理解促進」に加え「創業哲学・精神の理解促進」を深めたいといいます。「現状とありたい姿・あるべき姿のギャップを埋めるため、この大会でのリアルな経験を通じてパラスポーツや障害者の観点を社員に『自分ごと化』させる状況を作っていきたいです」と君原氏はその狙いを解説。

そして、最後に締めくくりとして前向きにこう総括しました。

「私はスポーツには世界と未来を変える力があると信じています。今回の神戸世界パラ陸上が障害理解を深めるひとつのきっかけになればいいなと思っていますし、これからもそういった活動を行っていきたいと考えています」

事例紹介③
「『ミルオト』各社の得意を掛け合わせるプロジェクトの作り方」

株式会社方角 代表取締役
方山れいこ氏
株式会社アイシン
塩浦尚久氏

最後の事例紹介では、株式会社方角(以下、方角)の方山れいこ氏、株式会社アイシン(以下、アイシン)の塩浦尚久氏から、東京2025デフリンピックに向けた「ミルオト」の開発プロジェクトについてご紹介いただきました。

ミルオトとは、試合中のその場の雰囲気・応援をリアルタイムに可視化する音の表示システムです。現地でも遠隔地でも、耳の聞こえない・聞こえるにかかわらず、誰もが観戦・応援を楽しめるよう開発されています。

方山氏は、「音が聞こえないことで迫力や臨場感が伝わってこないなど、聴覚障害者にとって競技観戦にはまだまだ壁がある。東京がデフリンピックの招致をしていた中で、日本独自の技術で解決する必要があると考えた」と開発に至ったきっかけを振り返りました。

ミルオトは3社によるプロジェクトで、技術開発はアイシンと早稲田大学理工学部の岩田研究室が、ディレクションは社員の80%が聴覚障害者で構成されるデザイン会社の方角が行っています。もともとはアイシンの音声認識技術と岩田研究室の動作検出技術を掛け合わせてスポーツの音を可視化する研究が行われていました。そこへ聴覚障害に関する社会問題を掛け合わせることで、方角の知見も活かして社会課題を解決できるものが作れるのではないかと話が進んでいったのだそうです。

続いて塩浦氏からは、技術の概要とプロジェクトのこれまでの道のりについて語っていただきました。

「まずは試作モデルを作り、CEATECという展示会への出展を目指しました。出展に向けた準備を進めていく中で、各社の得意とすることがチームとしてわかりました。また、当日は多くの来場者が来てくれたことで、要望を聞きながら課題の認識ができました。」と塩浦氏は振り返ります。

その後は、データを増やすために早稲田大学が外部と掛け合って実験する機会を増やしたり、方角が試合の見せ方や画角変更のアドバイスを行うなどして、CEATECで出た課題に対応していったとのこと。「各社の得意を集めて進めることができたと感じています」と塩浦氏。

さらに、塩浦氏は「当初の開発体制から打ち合わせやイベントを通じて、お互いが気づいていなかった得意を見つけることができました。今後も3社の得意を生かし、2025年のデフリンピック競技会場での活用に向けて開発を進めていきます」と前向きに話しました。

方山氏はミルオトが一番大事にしていることは当事者ファーストで進めることだと言います。

「健常者が障害者の意見を聞かずにモノを作ってきた悪い歴史がたくさんあります。ミルオトではそのような歴史は完全に排除したい。聴覚障害当事者とたくさんコミュニケーションを取りながら開発しています。今後も障害当事者と共創しながらプロジェクトを進めていくことで、コミュニティの作り方、チームの作り方のお手本のようにミルオトがなれるといいのかなとも思っています。」

交流会
手話ワークショップ

一般社団法人 手話エンターテイメント発信団oioi(おいおい)

事例紹介終了後、交流会に入る前に手話ワークショップを実施しました。講師を務めたのは、一般社団法人手話エンターテイメント発信団oioi(以下、oioi)の”のぶ“さんと”りゅうじ“さん。oioiは、手話やきこえない人のことを楽しく知ってもらうためにワークショップやパフォーマンスなどの活動を行っている団体です。

まずはウォーミングアップとして手をグーパーするところからスタート。ウォーミングアップ後は「私はあなたが好き」という文章を手話で表すことに挑戦しました。最初は手話を覚えることに一生懸命で表情が固かった参加者のみなさんへ講師のお二人から「手話は目で見る言葉なので、自分の表情がそのまま自分の気持ちになる。自分の気持ちを耳のきこえない人に伝えるには手の形だけではなく、表情や体全体を使って表すことが大切です!」とのアドバイス。すると一気にみなさんの表情が柔らかくなりました。

続いて、「楽しい」「いいね」「へぇー」「すごい」「ステキ」といった手話をリズムに合わせて実践しながら一緒に学びました。手話を覚えるコツは繰り返すこと。音楽を流しながらの反復トレーニングで会場も大盛り上がり。
最後は全員で「イェーイ!」の掛け声とともに「家」の手話をしながら記念撮影をしました。

その後の自由交流では、ワークショップの熱気そのままに参加者同士で活発な交流が行われました。手話を交えながら話をしたり、登壇者と笑顔で語り合ったりと明るい雰囲気の中、TEAM BEYOND CONFERENCEは閉会しました。

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20240325

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