先進企業の新視点!自社の強みをパラスポーツに活かす

2020.04.01

「TEAMBEYOND」企業・団体メンバーの一員であり、自社の先進技術をパラスポーツの分野に活かしている企業のひとつ、ブリヂストン。タイヤメーカーならではの技術や知見を活用し、パラアスリートを支える取り組みについて、先端技術推進本部の小平美帆氏に話を聞いた。

先進企業の新視点!自社の強みをパラスポーツに活かす

株式会社ブリヂストン
先端技術推進本部
先端技術創出部
先端技術創出第2ユニット
主任部員
小平美帆氏

困りごとを解決する部署でパラトライアスロンに着目

「最高の品質で社会に貢献」という企業理念と、「スポーツを通じてよりよい世界の構築に貢献する」というオリンピックの精神がシンクロするとの思いから、2024年までオリンピック・パラリンピックのワールドワイドパートナーを務めるブリヂストン。サポート活動の一環として、パラアスリートを技術的に支援しているが、なぜそのような取り組みを始めたのだろうか。「私が所属するのは、世の中の困りごとをブリヂストンの強みを活かして解決できないかということを検討し、実行する部署。そのミッションの中で、パラアスリートの方々が個々の障害の度合いと用具がなかなか対応しないという困りごとを抱えていることを知りました」と小平美帆氏。なかでも着目したのがスイム、バイク、ランの3種目からなるパラトライアスロンだった。「義足が地面と接するランのパートに、タイヤの技術が活かせるのでは」と考えた小平氏。グループ会社であるブリヂストンサイクルのツテをたどり、同社が自転車の機材サポートをしていたパラトライアスロンの秦由加子選手と出会った。

“地面に接する”強みを義足用ゴムソールに活かす

2016年リオパラリンピック6位入賞という実績を持つ秦選手だが、用具、とくに義足のソールに課題を抱えていた。一般的には義足メーカーが作るソールを装着するが秦選手は軽量化を望み、ランニングシューズのソールを切り取り加工したものを使っていた。「あるレースでは濡れた石畳が滑りやすく、怖くて満足に走れなかったという話が印象的でした。トライアスロンのランではアスファルトや横断歩道などの白線、石畳、雨で濡れた道路など走る路面の条件は様々。それはタイヤも同じです。そこに高い親和性を感じ、“地面と接する”ことに対する強みを義足用ソールに活かせるのではと考えたのです」
タイヤ的な発想でゴムを捉え、ブリヂストンの技術や知見を応用して義足用ゴムソールを開発。17年シーズンを通して使用した秦選手からは「どんな路面も安心して走れた」との評価を得た。加えて、18年シーズンに向けて「宿題をもらった」と小平氏。実は、激しい動きでソールが摩耗するため、貼り替えが必要になる。その間ランの練習ができなくなるため、「グリップカはそのままに、さらに長持ちするものを」との要望を受けたのだ。
改良にあたり、まずはタイヤ開発と同様に秦選手の走りを計測し、解析。地面との接地を「見える化」したところ、部分的にはトラックやバス並の接地圧がかかることや、荷重が前後移動することが判明。これらを踏まえて最適な溝パターンとゴムの配合設計を科学的に進め、グリップカと耐久性を備えたソールを完成させた。その成果は「18年のシーズン中、ソールを1度も交換をしなかった」という結果に表れた。

バラスポーツ支援のポイントは「知る、観る、体験する」

「今回の開発で、既存のビジネス以外にも当社の強みが活かせる、新たな可能性が広がりました。また、私を含め他の社員も、パラアスリートの方々を身近に感じるようになり、その存在に励まされています。家族や周囲を誘って競技大会の応援に行くなど、パラスポーツヘの関心が高まりました」
義足用ゴムソールの他、車いす競技のグローブ用ゴムの開発なども手がけるブリヂストンは、技術活用による支援だけでなく、同社所属パラアスリートの応援活動や車いすテニス体験会、子どもたちにパラスポーツの魅力を伝える活動にも注力。一連の活動を通じて、「選手を知る」「観戦する」「体験する」ことが、パラスポーツ支援に取り組むポイントになるとの気づきを得たという。
今後ブリヂストンは東京2020バラリンピックを起点とし、将来に向けて新たな価値を創造し続け、多様な人々がより共生できる社会づくりへの貢献を目指すというビジョンを描く。同社のケースが示すように、パラスポーツ支援の取り組みは企業価値を高める戦略のひとつになるのではないだろうか。

先進企業の新視点!自社の強みをパラスポーツに活かす

秦選手のニーズに応え、タイヤ開発のノウハウを適用し、ハイグリップと高い耐摩耗性・耐久性を両立させたブリヂストンの義足用ゴムソール

先進企業の新視点!自社の強みをパラスポーツに活かす

13歳で骨肉腫を発症し、右足の大腿部切断を余儀なくされた秦由加子選手。2008年に10歳まで習っていた水泳を再開し、2012年にパラトライアスロンに転向。東京2020大会でメダルを目指す

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