TEAM BEYOND スポーツ栄養学&料理教室「パラアスリートと料理教室 おいしく食べて強くなろう!」実施レポート

2025.10.28
TEAM BEYOND スポーツ栄養学&料理教室「パラアスリートと料理教室 おいしく食べて強くなろう!」実施レポート

2025年夏 、TEAM BEYOND初の試みとなる“料理ワークショップ”を開催しました!
世界で活躍するパラアスリートとスポーツ栄養士から、ふだんの生活に役立つ栄養学を学び、一緒に料理をすることで、競技や障害に対する理解を深めてもらうことを目指したイベントです。パラスポーツへの支援を長年続けている味の素株式会社の協力で実施しました。
小学3年生〜6年生の皆さんとその保護者の方を対象に2025年8月23日(土)・24日(日) の二日間で実施し、100名を超えるたくさんの方々にご参加いただきました。
当日の様子をお伝えします!

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■1日目のテーマは「パワー回復」

1日目のゲストはパラ水泳の鈴木孝幸(すずき・たかゆき)選手!
パラリンピックに6大会連続で出場し、通算獲得メダル数は14。昨年のパリ大会でも4個のメダルを獲る快挙を見せてくれたばかりの“レジェンド”です。
孝幸選手は普段からよく自分で料理を作っているのだとか。

ペアとなるスポーツ栄養士は、鈴木志保子(すずき・しほこ)先生。これまでオリンピック・パラリンピックに出場する日本代表選手の栄養管理を担い、何人もの選手をメダル獲得へと導いてきました。孝幸選手とは10年以上の長いお付き合いです。
同じ名字ということで、「タカの母親ではありません(笑)」と志保子先生。

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【右:鈴木孝幸選手】 パラ水泳 運動機能障害(四肢欠損)
パリ2024パラリンピックでは金メダルを含む4つのメダルを獲得。
中でも50m平泳ぎは21歳で自分が出した日本記録を16年後の37歳で更新しての金メダル。肉体の進化の裏には科学的なトレーニングと栄養学が…!
株式会社ゴールドウイン所属。

【左:鈴木志保子 栄養士】
管理栄養士、公認スポーツ栄養士。
神奈川県立保健福祉大学大学院保健福祉学研究科 研究科長
日本パラリンピック委員会 強化本部員

前半は孝幸選手の食生活について話を伺いました。孝幸選手が大切にしている食事のテーマは「パワー回復」。トレーニングで疲れた体を効率的に回復できる食事を心がけています。
「いっぱいご飯を食べて栄養をとりつつ、睡眠もしっかりとって回復に努めています。食事はとっても大事です!」

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普段の自炊の写真を見せてもらうと、どの食事にもたんぱく質、糖質、ビタミンがバランスよく取り入れられていることが分かりました。さすがです!

食べ物シールを使ってみんなで一緒にパワー回復ができる食事について考えてみました。

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シールワークを通して、鈴木志保子先生から「主食・主菜・副菜+果物・乳製品」の5つを食べることが大事だということを教えていただきました。バランスよく食べることで疲れをためることなく元気な体を保つことができるのだそうです。
献立の身近なお手本は「学校給食」。迷ったときはいつも食べている給食のバランスをイメージすると子どもたちにとって分かりやすいそうです。

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後半は調理の時間。「パワー回復ご飯」を作ります。
今回のメニューは孝幸選手の得意料理という麻婆豆腐(マーボーどうふ)とサラダ。
まずは、孝幸選手の料理する様子を間近で見せてもらいました。なかなか見ることのできない貴重な姿に子どもたちも釘付けです。
調理工程には孝幸選手ならではの工夫がいっぱい!車いすの上に立ち、見事な体幹でバランスを取りながら調理を進めていきます。左手をメインに使いつつ、右腕もうまく利用しながら手慣れた様子で作っていきます。

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包丁の持ち方も独特!一見危ないように思えますが、孝幸選手にとってはこれが一番持ちやすいのだそうです。「皆さんは指が5本あるので真似しないでくださいね」と孝幸選手。

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豆腐は、絹豆腐ではなく木綿豆腐で食べ応えを出します。
「木綿の方が(絹に比べて)たんぱく質なども豊富なのでぜひご家庭でも使ってみてください」と志保子先生。
麻婆豆腐は豆板醤を使わず、家庭にもある味噌で作るのが孝幸選手流。鷹の爪を入れて辛さを出します。
「孝(タカ)の爪も入れましょうか?」
孝幸選手のお茶目なジョークが連発し、和気あいあいとした雰囲気で麻婆豆腐が完成しました。

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お次は、ブロッコリーとトマトのサラダ。このサラダを毎日欠かさず食べているという孝幸選手は「ブロッコリーは、茹でるよりもレンチンが好き」なのだとか。
ビタミンは茹でると水に溶けてしまいますが、電子レンジで加熱する場合はそのまま残るのでしっかり栄養を取ることができるのだそうです。ただ手軽というだけじゃないのが嬉しいですね!

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ワークショップ後半は、各調理卓に分かれて参加者全員で麻婆豆腐を作りました。さっき見た孝幸選手の手順を思い出しながら、ひき肉を炒めていきます。

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チューブのにんにくとしょうがが上の面になるように炒めるのが油ハネを抑えるコツです。
味噌が入ると調理室中に美味しそうな香りが立ち込めました。辛さは各々お好みで調節します。

出来上がった麻婆豆腐は炊きたて白米と、孝幸選手の定番サラダと一緒にいただきました。
それぞれのテーブルから「美味しい!」という声が聞こえてきました。

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食後の質問コーナーでは、孝幸選手には子どもたちから水泳や競技との向き合い方についての質問が、志保子先生には保護者の皆様からの栄養や食生活に関する質問がたくさん飛び交い、時間いっぱいまで二人のお話を聞くことができました。

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■2日目のテーマは「強い体を作る」

2日目のゲストはブラインドサッカー®の鳥居健人(とりい・けんと)選手。
ブラインドサッカーの元男子日本代表で、東京パラリンピック・パリパラリンピックにも出場したトップアスリート。その料理の腕前はTEAM BEYONDでもお馴染みです!
【パラアスリート飯】ブラインドフットボール・鳥居 健人選手編
ペアとなるスポーツ栄養士の先生は、秋葉美佳(あきば・みか)先生。鳥居選手が小学校の頃に所属していたチームにいたので20年来のお友達なんです。

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【左:鳥居健人選手】 視覚障害(全盲)
パリ2024パラリンピック出場、ブラインドサッカー元男子日本代表。東京2020パラリンピック、IBSA ブラインドサッカーワールドグランプリ等の国際大会に出場。
料理を得意とし、NHK「サラメシ」にも出演。
free bird mejirodai所属 参天製薬株式会社所属。

【右:秋葉美佳 栄養士】
管理栄養士、公認スポーツ栄養士
内科クリニックや自治体、企業にて保健分野の支援活動に携わる一方、パラアスリートや高校サッカー部などを栄養面でサポート。
パラトライアスロン選手である夫の体づくりも食事面から後押し。

鳥居選手は2歳の時に病気で失明して以来、全盲となり光も全く見えません。しかし、見えないことを忘れさせるほどの高い空間認知能力を持っているのです。
まずは鳥居選手のそのスゴ技をお披露目!子どもたちにも参加してもらって、ちょっとしたゲームを行いました。
ブラインドサッカー用の音の鳴るボールを次々にパスしていきます。すると輪の中にいる鳥居選手が、ボールを持つか持たないかのうちに素早くタッチしていきます。
「見えていないのに見えているみたいで、すごい!」と子どもたちもびっくりです。

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そんな鳥居選手が食事面で大事にしていることは、「強い体を作る」ということ。
「ブラインドサッカーはぶつかりあうことが多いスポーツ。海外の選手は体が大きな選手ばかり。僕は日本の中でも体が小さい方なので、ぶつかりあいで負けない体を作ることがすごく大事。強い体を作ることを考えて食事しています。」

今回もシールワークを通して、子どもたちにも強い体を作る食事を考えてもらいました。
貼り終えたシールの内容が鳥居選手にも分かるよう、皆さん声に出して説明します。
スポーツ栄養士の秋葉先生によると、強い体を作るためにはまずバランスよく食べることが大切。学校で食べる給食がバランスの良い見本。献立表に書いてあるように、ポイントは赤(たんぱく質)・緑(ビタミン)・黄(糖質)の全てが入っているかどうか。どれか一つが欠けても、強い体を作ることができない。だからこそ、バランスの良い食事を「自分で」考えられるようになろうと教えてくれました。
「例えば緑が足りていないなと思ったら、バナナやミニトマトなら自分でも用意できるはず。特に忙しい朝などはおうちの人に頼らずとも自分で用意できるように意識をしてみてください」と秋葉先生。子どもたちもうなずいてくれていました。

ワークの後は、鳥居選手がその料理の腕前を披露してくれました!中学生の頃から料理をしていて「趣味は料理」と言うほどの料理好きです。
エプロンを付ける時には裏表が逆になってしまうプチハプニングもありましたが、「裏返しだよ!」と子どもたちが声で教えてくれていました。

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作るメニューは鶏回鍋肉(ホイコーロー)。鳥居選手の得意料理でもあり、ご飯と合わせることで「赤・緑・黄」が効率良く摂れるメニューなんです。
まずは野菜の下ごしらえ。キャベツは一口大にちぎり、ピーマン、ねぎを包丁で切っていきます。大小のバラツキがなく見事に同じ大きさです。あまりの手際の良さに、思わず見えていないことを忘れてしまうほど。

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食材を切りながらも、終始子どもたちとお話しをしてくれていた鳥居選手。
手を切ったことはありますか?という質問には、
「YouTubeを見ながら料理していたら思わず切っちゃったことが・・」
というエピソードが飛び出し、会場からは「え〜!」と驚きの声が出ていました。

鶏肉が大好きだという鳥居選手。回鍋肉には一般的に豚肉を使うことが多いですが、鶏肉を使うのが鳥居選手流のアレンジ!たんぱく質をアップさせるためだそうです。
「豚を鶏に置き換えることで脂が減る分、たんぱく質の量もちゃんと増えています」と秋葉先生からも太鼓判!
ただし鶏肉の部位は「もも肉」を使うのが鳥居選手のこだわりです。
「むね肉の方が脂は少ないのですが、パサつきがある。食事は大前提としておいしく食べることが大事なので、おいしさを優先しています。」とあくまで食の楽しみを忘れない姿勢が素敵でした。
楽しくおしゃべりしながら、あっという間に回鍋肉を作り終えました。

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続いては、参加者全員で調理をする番です。
アイマスクを着けて、鳥居選手と同じ条件のもと「キャベツちぎり」に挑戦しました。

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「キャベツをちぎるだけでも難しいのに、サッカーなんて絶対に無理…!」「鳥居選手、最強〜!」
と方々で声があがり、鳥居選手のスゴさを身を持って感じてもらうことができました。

苦労して出来上がった回鍋肉の味は格別!白ご飯もモリモリ進みます。ご飯を3杯おかわりしてくれた子もいました!

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試食タイムでは、鳥居選手と秋葉先生が各テーブルを回りました。子どもたちから、アイマスク難しかったよー!という報告が次々と。たくさんの質問にも一つ一つ丁寧に答えてくれた鳥居選手でした。

最後は全員での記念撮影でワークショップを締めくくりました。
ご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました!

2日間のワークショップで、参加者の皆さんからは、「選手をとても身近に感じることができた」「親子一緒に栄養のことを楽しく学べたのがよかった」「パラリンピックに関心のなかった子どもが、見てみたい!と言い出しました」などの感想を頂きました。今後のワークショップ開催の参考にさせていただきます。

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1日目 午前クラス

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1日目 午後クラス

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2日目 午前クラス

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2日目 午後クラス

このワークショップの記録映像は近日中に公開予定ですので、そちらもお楽しみに!

20251028

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