よく晴れた11月3日文化の日に、渋谷からパラスポーツを盛り上げる「BEYOND FES 渋谷」の中盤戦。渋谷マークシティ1階の「TEAM BEYOND」ステージにて、2つのトークプログラムを開催しました!
フレッシュな作品が集まった「デジタルマンガキャンパス・マッチ パラスポーツ部門」
1つめのプログラムは、日本を代表する文化のひとつである「マンガ」。マンガは、日本のメディア芸術の源泉として今や世界的に広まり、国内外でスポーツのブームを創出してきました。
マンガの力を借りて、もっとパラスポーツの魅力を伝えるため、「TEAM BEYOND」では、マンガのキャラクターとパラアスリートの迫力あるプレーを組み合わせた映像「Be The HERO」を公開しており、この冬、パラスポーツの観戦をコンセプトとした新作、「FIND YOUR HERO」の公開も予定しています。
「Be The HERO」
https://www.youtube.com/watch?v=RgEzbEQ5HfY
「FIND YOUR HERO」予告編
https://www.youtube.com/watch?v=xP6Vp6cE-6E
1つめのプログラムは、「TEAM BEYOND×パラスポーツマンガ〜パラスポーツの魅力をもっと広めるために『マンガの力』の可能性を語る」と題して、トークセッションがスタート!
こちらのプログラムはアニメやマンガ、ゲームなど日本が誇るコンテンツの魅力を国内外のファンに向けて発信するクリエイター共創サービス「DNP FUN’S PROJECT」のサポートで開催されました。
イベントのトークゲストには漫画家のちばてつや先生、里中満智子先生が登場。大日本印刷株式会社FUN’S PROJECT推進部の浅羽慎太郎さんが進行を務めました。
第一部は、マンガの力でパラスポーツを応援する企画「デジタルマンガキャンパス・マッチ パラスポーツ部門」を通して見るマンガの可能性がテーマ。
特別ゲストとして、パラスポーツを題材とするマンガを募集した、昨年の「Be The HERO」部門で、優秀作品に選ばれた森蜜さん(国際デザイン・ビューティカレッジ) が駆けつけてくれました!
森さんの作品「君の見る夢が僕の夢」は、陸上選手としての夢を諦めた男の子が、視覚障がいがある女の子の伴走者を務めることで、自分がパワーをもらい一歩前に踏み出すというストーリー。ゲストのお二人からは作品に対して、こんなコメントが。
「とても読みやすいですね。キャラクターの表情もよく、世界観に引き込まれました。」(ちば先生)
「障がい者を助けるというだけではなく、それによって健常者の側が心に栄養をもらって、自分の目標を見つけるストーリーがいいですね。」(里中先生)
実は自身も発達障がいがあるという森さん。「障がいがあっても、誰でも夢を見ることができる」という思いで、このコンテストに応募したそうです。森さんにとって、この受賞が漫画家への道を一歩踏み出す機会となりました。
マンガの持つエンターテイメント性で、パラスポーツを伝えよう
第二部はNHK首都圏放送センターチーフ・プロデューサー・上田和摩さんが加わり、「マンガの力」の可能性を語りました。
「Be The HERO」の映像も、マンガの力でパラスポーツの魅力を伝えている活動の一つ。
なんとちば先生は、Be The HEROのために、ウィルチェアーラグビーのイラストを書き下ろしてくださっています!車いすに乗ったまま、一所懸命にラグビーボールに手を伸ばす選手たち。描かれた選手たちの真剣な表情に、まるで目の前で試合が繰り広げられているような迫力を感じます。
「描くにあたってウィルチェアーラグビーを見てたら、ものすごく激しいスポーツだと知って驚きました。障がいがある人が目標持って、汗をかきながら元気に頑張っている。それをみんなに知ってもらいたいと思ったんですよ」(ちば先生)
「選手の持つストーリーをいろいろ考えさせられますね。それはこの一枚が、エネルギーが詰まっている瞬間を切り取ったような素晴らしいイラストだからです」(里中先生)
また、パラスポーツ理解促進のためのプロジェクト「アニ×パラ あなたのヒーローは誰ですか」を担当する上田さんは、こう語ります。
「アニ×パラ」
パラスポーツの魅力を、アニメで世界に発信するプロジェクト。日本を代表する漫画家たちが、独自の視点でアスリートを見つめ、オリジナルアニメを制作発表します。BS1で放送中。
http://www.nhk.or.jp/anime/anipara/
「素晴らしいパラアスリートがたくさんいるので、パラリンピックでは競技場は満員にしたいですよね。パラアスリートからもっとヒーローやヒロインを生み出したい。そのために、マンガやアニメのエンターテイメント性は必要です」(上田さん)
最後には浅羽さんから、「マンガ」という文化が持つメッセージ性の強さが語られました。パラスポーツを題材にしたマンガが増えていくことで、もっとパラスポーツの魅力が広がり、応援するひとが増えていくのではないでしょうか。
テクノロジーでパラアスリートも困る「もよおし」の課題を解決!
2つめのプログラムは、パラアスリートとエンジニアの対談イベント「カラダと対話、もよおしに気づくテクノロジー」でした。
ゲストは「トリプル・ ダブリュー・ジャパン」のCTOである九頭龍雄一郎さん。そして、車いすテニスのプレイヤー古賀貴裕さんです。
九頭龍さんは、排泄の悩みや負担を軽減するソリューション「DFree」の開発を行っています。
「高齢者、特に認知症の方は、排泄のタイミングをコントロールできないこともあります。これまではおむつなどで対応してきていました。おむつでは、『出てないかな?』と確認しなければならず、手間もかかります。『DFree』は超音波センサーをつかって体の変化を察知し、排泄予知を行うことで、本人や介護者の方をサポートします」(九頭龍さん)
排泄に悩んでいるのは介護者の方ばかりではありません。18年前に事故で頚椎を損傷し、中途障がいを負った古賀さんは、排泄のコントロールができない自分の体に、最初とても戸惑ったといいます。
「『そろそろ排泄のタイミングかもしれない』という体からの信号がうまく読み取れず、社会復帰するときはとても苦労しました。信号に慣れてきた後でも、試合のときのように緊張状態にあると信号を感じるのが難しいんです。そんなときはトイレのタイミングに困りますね」(古賀さん)
「そろそろトイレに行った方がいいよ」という身体からの信号を、センサーでキャッチし、アプリを通じて人に伝えるのがDfreeの役目です。
「重要なのが、『客観的事実』を正確に察知して伝えること。尿意や便意は、個人によって感じ方が違います。でも、膀胱に尿がどのくらい貯まってるかは客観的な情報として伝えることができます」(九頭龍さん)
「試合で海外に行ったときは、普段と水や食べ物も変わるし、過ごす環境も違うため便通も変わるんですよ。すると、今まで自分が感じていた身体からの排泄を知らせるサインが信用できなくなってしまいます。そんなときにDfreeが排泄のタイミングを教えてくれると助かりますね」(古賀さん)
お二人は今回の出会いを機に、パラアスリートとエンジニアがコラボレーションすることで、排泄の課題を解決していけるのではないか、とこれからの希望を語ります。
「古賀さんはプロのアスリートとして、いつも真剣に自分の身体と向き合っています。そういう方にDfreeの開発に協力してもらうことで、より細やかな身体の変化に関するデータを得ることができ、開発を進めることができます。」(九頭龍さん)
「排泄の悩みが解消されれば、試合時はもちろん、海外遠征の際の飛行機の移動も楽になりますね。パラアスリートの大変さを軽減し、自分のパフォーマンスを最大限に高めることに集中できるようになるので、心強いと思います」(古賀さん)
2020年のパラリンピックに向けてテクノロジーが進歩し、パラアスリートがより試合に集中できるようになれば、高いパフォーマンスが発揮できるはず。
お二人にはぜひ協力して、排泄の悩みの解決に向けて挑戦してもらいたいです!