放課後BEYOND

2017年11月4日早稲田祭にて、TOKYOFMで『高橋みなみの「これから、何する?」』のパーソナリティを務め、若者から強い支持を集める高橋みなみさんと、10月に2018年平昌パラリンピックの出場権を獲得したパラアイスホッケー(旧:アイススレッジホッケー)日本代表の上原大祐選手をお招きしたイベントが開催された。イベント会場は多くの若者に溢れ、上原選手と高橋さんのお話の中で私が今まで一方的に抱いていたイメージとはかけ離れたパラスポーツ、パラアスリートの姿が次々と明らかになった。

「パラアイスホッケーは誰もが同じフィールドに立てるフェアな世界」

「パラスポーツの多くは各々の持つ障害の度合いによってランク分けされているものが多いが、パラアイスホッケーは障がいによって度合いが分かれておらず誰でも平等なフィールドで戦うことができる。」このお話は、今までランク分けされているパラスポーツしか知らなかった私にとって意外だった。どんな障害を持っていてもいなくても平等にゲームに熱中できるなんて。しかしながら、日本での競技人口はそれほど多くないそうだ。「原因は今まで普及活動が行われてこなかったこと、チーム数が少ないことにある。」と上原選手。またアメリカでの選手の平均年齢は20代であるのに対し、日本の平均年齢は40代と高齢化が進んでいる。誰もが同じフィールドに立てるこのフェアなスポーツをもっと日本でも広めるために、今日お話を聞いた私たちは、自らパラアイスホッケーについて発信していかなければいけないと強く感じた。

「子どもたちの将来の目標になるための復帰」

イベント中盤、話題は上原選手の話に移った。バンクーバーパラリンピックで銀メダル獲得後、一度は現役を退いた上原選手。司会の高橋みなみさんから現役復帰に至った経緯について聞かれるとこう答えた。「以前は自分の首にメダルを下げることが目標だった。引退後、NPOを立ち上げて子どもたちとスポーツをする活動をしている中で、私が氷上で戦っている姿を見たいというリクエストがたくさん来た。ならば、ということで、子どもたちの将来の目標になれるよう復帰を決断した。」以前は自身のために挑戦していたパラリンピックの舞台。平昌パラリンピックでは子どもたちのため、未来のために使命を持って挑戦すると語った。

「放課後にバッグをポンって放り投げて、車いすにパンって乗ってバスケをするような、そういうことが普通になってほしい。」

未来のため、子どもたちのためにパラリンピックに挑戦するという上原選手。理想の未来についてさらに具体的に教えて下さった。「スウェーデンでは、子どもたちは放課後にバッグを放り投げて車いすに乗って公園でバスケをするような、そんな光景を日常的に見ることができる。日本でもそんな光景を普通にしたい。」放課後、ランドセルを放り出して遊びに行った経験がある人も多いだろう。では車いすの子どもたちが校庭で元気に遊ぶ姿はどうだろうか。日本ではまだあまり目にしない光景である。私の小学校周辺を思い返しても車いすで遊び回れるような整備はなされていなかった。ちょっと自分の周囲の環境を振り返ってみただけでも、日本のバリアフリー環境はまだまだ他国に比べると劣っていることに気付かされる。誰もが活き活きと生きていけるような社会の実現のためにはまず私たちの意識を変えていくことが必要である。

「2020年のパラリンピックに向けてパラバトミントンを練習中」

上原選手はパラアイスホッケーのメダリストでは?そう思った人も多いはず。イベント終盤、大学生から上原選手への質問が多く寄せられた。男子学生からの「もしも他のパラスポーツをやるなら何をやっていましたか」という質問に「パラバトミントンを(すでに)やっている。2020年の東京パラリンピックは冬季じゃないからね。2020年の東京パラリンピックにでたら初代チャンピオンを狙えるのではないかと思って。(笑)」と上原選手。ご自身の専門のパラアイスホッケーだけではなく、2020年の東京パラリンピックへの出場意欲も見せた。

「応援は静かに熱狂的に」

また別の女子大生からパラスポーツの応援に関する質問があった。「パラスポーツを観戦するときに私たちが心がけなければならないことはありますか。」これに対し上原選手は観戦時の心構えを教えてくれた。「視覚障がい者スポーツのように応援は静かにしなくてはいけない競技もある、でも熱狂的にしてほしい。」パラスポーツは競技によって観戦にルールがある。例えば、ブラインドサッカーはボールの音の変化を聞くためシュートが決まった時以外は静かに観戦しなくてはならない。音をたて大きな声で応援することが選手のプレーを妨げてしまう場合があるのだ。しかし静かに応援することは、熱狂的に応援しないこととは違う。パラスポーツは非常にゲーム性が高いものが多く、選手たちがいかに道具を使いこなしているかが他のスポーツにはない魅力である。道具と道具のぶつかり合い、シュートの音。聴覚と視覚で楽しめる、まさにエンターテイメントだ。こんなスポーツを目の前にして興奮せずにいられるだろうか。競技毎のルールを守って熱狂的に応援することを心がけさえすれば、私たちもパラスポーツマスターである。

このような心構えを持ったうえで、私たちはパラスポーツとどう向き合っていくべきか。今回のイベントは私にとって自分とパラスポーツの向き合い方について考える大きなきっかけとなった。自分もパラスポーツを観る、応援するだけではなく実際にやってみて周りに発信していくことが重要だと気づかされた。上原選手はイベントの締めくくりに、「障がいを持った子供たちが東京パラリンピックを観に行けるツアーを組みたい。」と、私たちに2020年に向けた夢を語ってくれた。

参加者は終始熱心に耳を傾け、イベント終了後は実際に上原選手のスレッジを間近で見る機会があり、参加者が行列を作っていた。これからを担う学生である私たちは、より皆が心地よい世の中を実現するために、より面白い世の中にするために、まずは自分とパラスポーツの関わり方について考えなければならない。
(文責 早稲田大学商学部三年 平山真帆) 取材日:2017年11月4日


<放課後BEYONDとは>

2020年にハタチになる高校生や、新社会人となる大学生など、未来を担うTEAM BEYOND学生メンバーが放課後に集まり、パラスポーツについて学んだり、実際に体験したりしながら、同世代に向けて発信していくプロジェクトです。学生の声で、パラスポーツの魅力を発信していきます。

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