心の眼で相手の動きを視る!息を呑む熱戦が繰り広げられた、視覚障害者柔道
「IBSA柔道東京インターナショナルオープントーナメント」を観戦!

2023.01.13
心の眼で相手の動きを視る!息を呑む熱戦が繰り広げられた、視覚障害者柔道<br>「IBSA柔道東京インターナショナルオープントーナメント」を観戦!

2022年12月11日(日)、柔道の総本山と呼ばれる講道館(東京都文京区)でTEAM BEYOND presents アルコ&ピース パラスポーツガレージ出張版「IBSA柔道東京インターナショナルオープントーナメント」 視覚障害者柔道観戦会が行われました。

このイベントは、東京都のパラスポーツを応援するプロジェクト『TEAM BEYOND』とTBSラジオ『アルコ&ピース D.C.GARAGE 』がタッグを組んだYouTube番組「アルコ&ピース パラスポーツガレージ」の出張版。さまざまなパラスポーツの大会を観戦するイベントです。招待されたTEAM BEYONDメンバーは、柔道の聖地でトークイベントと試合観戦を楽しみました。

日本初開催となった「IBSA 柔道東京インターナショナルオープントーナメント大会」

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視覚障害者の競技である「パラ柔道(視覚障害者柔道)」は、選手が互いに組んだ状態から試合を行います。主審の「はじめ」の声から試合が始まり、選手同士が離れてしまった場合には、試合開始の位置で組み直して試合を再開。それ以外は、一般的な柔道と同じルールが適用されます。初めから相手選手と組んだ状態で試合が始まるため、試合開始直後に勝敗が決まることもあるのが、パラ柔道の特徴の一つ。

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講道館で行われた「東京国際オープントーナメント大会」は、IBSA(International Blind Sports Federation:国際視覚障害者スポーツ連盟)公認の世界大会。
今回の大会は、パラ競技の大会参加に必須の資格である「国際クラス分け」が行われる上、ワールドランキングポイント付与の対象ともなり、選手にとって重要な大会です。

日本視覚障害者柔道連盟では、2024年にパリで行われるパラリンピック大会に向けた選手強化の一環として、16名(男子9名、女子7名)の代表選手を選出。各選手が、世界の強豪を相手に激しい試合を繰り広げました。

パラ柔道の魅力が炸裂。視覚障害者柔道家 初瀬勇輔さんによるトークイベント

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当日は、2008年北京パラリンピック視覚障害者柔道90kg級男子日本代表で、現在は株式会社ユニバーサルスタイルの代表取締役である、視覚障害者柔道家 初瀬勇輔さんとアルコ&ピースの平子祐希さんのトークショーが行われました。

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はじめに、平子さんから「パラ柔道の魅力、一番はどういったところだと思われますか?」と質問。初瀬さんはパラ柔道の特徴を挙げ、その魅力を参加者に伝えました。

「一般の柔道では、必ず組手争いがありますが、視覚障害者柔道では初めから組んだ状態で試合を行います。いつ技がかかってもおかしくないクライマックスから試合が始まるため、中には1秒で勝敗が決まることも。これがパラ柔道の魅力ですね。柔道が『より目が離せないスリリングな競技』に“進化”しているのかもしれません」(初瀬さん)。

続いて、平子さんは「今、一番強い国はどこでしょうか?」と質問。

初瀬さんは「日本、と胸を張って言いたいところですが、なかなか苦戦しています。強い国で言うと、今回も試合に参加しているウズベキスタン。あとは、ブラジル、イギリスなどオリンピック・パラリンピックを経験した国が強い傾向があります。これからはフランス、アメリカでもオリンピック・パラリンピックの開催が決まっていますから、どんどん強くなっていくでしょう」と回答。

さらに日本が強くなっていくためには、このようなイベントを通じてより多くの人にパラ柔道を知ってもらい、競技人口を増やしていくことも欠かせないといいます。

平子さんがパラ柔道に挑戦! 目を開けた状態で初瀬さんに勝てるか!?

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次に、平子さんが初瀬さんを相手にパラ柔道を初体験することに。まずは目隠しをしない状態で、組み方などの説明を受けながら試合を行いました。

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初瀬選手の体重が80kgほどであるのに対し、平子さんは約100kg!本来であれば階級が異なり、目を開けたままの平子さんが有利な状況ですが、あっさりと技を掛けられてしまいました。

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続いて、平子さんがアイマスクをつけた状態(全盲もしくは 視力が0.0025より悪い J1選手と同じ状況)で再度、初瀬さんと試合を行います。

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平子さんは「こわい!何もできない!相手の足がどこにあるかわからない!」と叫びながら、またしてもあっさりと倒されてしまいます。

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続いて、TEAM BEYONDのメンバーにもアイマスクを付け、どんな状態で選手が柔道をしているのかを体験してもらいました。

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まずは、10秒の片足立ちから。目を開けた状態では真っ直ぐに立つことができた人も、アイマスクを付けた状態ではふらふらとよろめき、数秒で足を着いてしまいます

次に行ってもらったのは、手を叩いている人の音を頼りに、アイマスクをした状態で真っ直ぐ前に歩く体験。やはり真っ直ぐ歩くのは難しいようで、斜めに歩いてしまう人がほとんどでした。

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視覚によって平衡感覚を保っていることを知ってもらったことで、パラ柔道の選手の動きがどれほどすごいものなのかを体感していただきました。

最後にもう一度、平子さんは目の見える状態で初瀬さんに挑みますが……。

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その日一番の大技巴投げを掛けられ、惨敗を喫しました。平子さんは「一瞬、何が起きたかわからなかった。『きれいに回ったな』というのだけはわかりましたね。今僕は目隠しをしてない状態で投げられましたけど、選手の方は本当に見えない状態で投げられる。自分自身の空間把握能力が相当高くないと成立しないですよね」とコメント。

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その後の質問コーナーでは、参加者から「練習は視覚障害者同士で行っているのか」「右利き左利きで有利不利はあるのか」「視覚障害者柔道だけで認められている技があるのは本当ですか?」「注目の選手は?」などの質問に初瀬さんが答え、トークショーは終了。全員で記念撮影を行いました。

決勝ラウンドを観戦、日本人選手も大活躍!

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観戦席に移動した参加者は、決勝ラウンドを観戦。この大会にはパラ柔道の強豪国であるウズベキスタン、カザフスタン、ドイツ含め世界13か国から80名の精鋭が参戦しています。会場内は、東京2020パラリンピック大会を彷彿させる雰囲気が漂い、熱戦が繰り広げられました。

本大会に参加した日本人選手は、以下の16名です。

【男子】
J1-73kg級 加藤裕司
J1-90kg級 松本義和 松本友和
J2-60kg級 廣瀬 誠 阿部一輝
J2-73㎏級 瀬戸勇次郎 藤本 聰
J2 -90kg級 佐々木嘉幸
J2 +90超級 正木健人

【女子】
J1-70kg級 土屋美奈子
J2-48kg級 藤原由衣
J2 -57kg級 廣瀬順子 工藤博子 石井亜弧
J2 -70kg級 小川和紗
J2 +70kg超級 西村淳未

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パラ柔道では、観客は声を出さずに応援するのがマナー。TEAM BEYONDのメンバーは、白熱した戦いを観戦席から静かに見守りました。静かな戦いの中でも、大技が決まると場内に「ドン」という豪快な音が鳴り響き、拍手が巻き起こります。

結果を先に伝えると、日本はこの大会で、11個のメダルを獲得。中でも、女子J2-57kg級では1位から3位までを日本人選手が独占しました。特に印象的だった日本人選手の活躍をダイジェストでお伝えします。

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J190kg級で出場した松本義和選手は、最終戦で強豪ウズベキスタンの選手と対戦。粘り強い戦いを見せ、初優勝を飾りました! ベテランの松本選手は、なんと今年還暦を迎えるといいます。この勝利が、パリパラリンピックへ向け「まだまだいける!」という大きな自信につながるのではないでしょうか。

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日本のエースとして注目を集める東京2020大会銅メダリストの瀬戸勇次郎選手は、強豪国カザフスタンの選手を相手に、見事な背負投げを決め、わずか1秒ほどで勝利! パラ柔道ならではの展開に、会場が熱気に包まれました。最終戦では、韓国のキム・ドンフン 選手を相手に積極的に技を仕掛け、技あり2つで1本! 見事、優勝を飾りました。

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女子J2-57kg級では、なんと日本人選手が1位から3位までを独占! 日本人選手の戦いとなった最終戦、廣瀬順子選手と工藤博子選手との対戦は、両者一歩も譲らない緊張感のある展開に。選手の息遣いが会場内に響きます。延長戦までもつれ込む熱戦となり、最終的には積極的に攻めの姿勢を見せた廣瀬選手に軍配が上がりました(工藤選手の指導3つによる反則負け)。 

まだまだ認知度は高くない競技ですが、今回のイベントを通してTEAM BEYONDのメンバーに、パラ柔道の奥深さや選手の心身の強さ、そして観戦の面白さを体感してもらう貴重な機会となった今大会。今後さらにパラ柔道の面白さが広がり、応援する方が増えていけば、2024年のパリパラリンピックでの日本人選手の活躍にもつながるはずです。まだパラ柔道を観戦したことがないという方は、ぜひ一度試合をご覧になってみてはいかがでしょうか?

今後も、TEAM BEYONDでは、さまざまなアプローチで、パラスポーツの魅力を発信していきます。TEAM BEYONDの一員となって、パラスポーツを盛り上げていきましょう。ご参加をお待ちしています。

20230113

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