アイマスクで視界を遮断。見えないからこそ、見えたこと~ブラインドサッカー体験会~

2017.08.27
アイマスクで視界を遮断。見えないからこそ、見えたこと~ブラインドサッカー体験会~

見えないセカイをみてみよう」をテーマに、視覚障がい者対象のパラリンピック競技、ブラインドサッカーの体験会が3月9日、東京・新宿区の新宿NPO協働推進センターで開かれ、抽選で選ばれた約20名の一般参加者に混ざり、TEAM BEYONDメンバーで、女優の篠田麻里子さんと元F1レーサーの山本左近さんも参加した。

人間が外界から得ている情報の8割は視覚によるものといわれる。ブラインドサッカーはアイマスクを着用することで視覚を完全に閉じ、見えない状態でプレイするため、「音が頼り」のスポーツだ。選手は鈴入りのボールの音や相手ゴール裏でシュートの方向やタイミングを指示するガイドの声などに耳を傾けたり、選手同士で大きな声を掛け合ったりしながら、自分や相手、ボールやゴールの位置などを把握する。
「聞く」「話す」というコミュニケーション力が競技の肝だ。

この日の体験会でも、パスやシュートの練習というよりは、アイマスクを着けてさまざまなアクティビティに挑戦しながら、視覚障がいへの理解を深め、ブラインドサッカーに不可欠な、言葉によるコミュニケーションやチームワークなどを学ぶことに主眼が置かれていた。

講師は日本ブラインドサッカー協会ダイバーシティ事業部の剣持雅俊さんとブラインドサッカー日本代表の寺西一選手が務めた。「人との関わりのなかで、見えないからこそ発揮される力がある。ただのアイマスク体験で終えず、1時間半の体験から、それぞれ『何かしら』持ち帰り、これからの生活や仕事に活かしてほしい」と寺西選手は参加者に語りかけた。

アイマスクで視界を遮断。見えないからこそ、見えたこと~ブラインドサッカー体験会~

体験プログラムはまず、アイマスクをして暗闇の中を歩くアクティビティから始まった。最初は皆、恐る恐るといった様子だったが、手拍きや声による誘導に勇気を得て、歩を進めていた。つづいては二人一組での準備運動。アイマスクを着けたパートナーに対し、もう一人が寺西選手の行う体操の動きを言葉で表現し伝える。たとえば、膝の屈伸など名称があるものは伝えやすいが、普段なにげなく見て真似ていただけの動きは的確な言葉がなかなか見つからず、正確に伝えることの難しさに気づかされた。

こうしたアクティビティの合間に、講師から上手な声掛けや伝える方法についてアドバイスが与えられる。たとえば、「体操の動きは言葉でなく、腕をとって動きをつくるのも一案」「コミュニケーションには思いやりも大切」などだ。

参加者はそうしたアドバイスから、コミュニケーションのコツを学びとっていく。たとえば、「もう少し横です」と言われると、「もう少しってどれくらい?」「横ってどっち?」という疑問が残る。でも、「右にあと2歩」と言えば分かりやすくなる。始めの頃は表情も硬く動きもぎこちなかったが、しだいに笑顔が広がり、のびのびしていく参加者たち。

プログラムは進み、ボールを使ったあるグループアクティビティでは同じ動きを何回も行うのだが、1回ごとに「どうしたら上手くできるか」話し合うための作戦会議タイムが設けられており、「こんな言葉だと分かりやすい」「こういう決め事でやってみよう」など、参加者は試行錯誤をくり返し、いろいろ工夫を凝らしながら精度を高めていく。こうしてコミュニケーション力を磨き、チームワークを深めていくのだ。

アイマスクで視界を遮断。見えないからこそ、見えたこと~ブラインドサッカー体験会~

体験会を終え、ブラインドサッカー初体験だったという篠田さんは、「アイマスクを着けたときは怖かったが、コミュニケーションを取るとか相手を思いやるなど、人間として必要なことを一から体験できた気分」と振り返り、言葉で伝えることの難しさを実感した経験は今後、「ラジオの仕事などに活かせそう」と感想を話した。

教員志望の男子大学生(23)は、「人を思いやる気持ちの大切さを学んだ。子どもたちにも体験させたい」と話し、男性会社員(34)は、「これまで伝わっているだろうと勝手に思っていたことも、もしかしたら伝わっていなかったかも。今後はしっかり伝え、しっかり聞くよう努力したい」と前向きだった。

大学で福祉を学ぶ女性(19)は、「視界を奪われたら、一生懸命聞こうとしている自分がいた。もし障がいがあっても工夫や努力で補えると気づいた」と話し、別の女子学生(21)は、「寺西選手は視覚障がいがあるのに、誰よりもボール捌きが上手かった。『障害があると、何もできない』という思い込みは間違いだった」と話すなど、障がいに対する考えが変化したという声も聞かれた。

寺西選手は、「参加者の声や雰囲気から、初対面同士がしだいに距離を縮め一体感が生まれ、チームとして成長する過程が感じられた」と手応えを語り、「人は普段、伝えることをなおざりにしがちだが、見えない状態をつくることで伝えることの大切さを実感できる。今日の体験を日常生活にも活かしてほしい」と期待を寄せた。

ブラインドサッカーという非日常のスポーツを通し、障がいの理解からコミュニケーションや思いやりなども考えさせられた「見えないセカイ」体験会。篠田さんは、「知ることで、寄り添いあえると思った。今度はブラインドサッカーの試合も観たい」と話していたが、それぞれの参加者もそれぞれの気づきや発見があったのではないだろうか。

ページトップへ