「パラスポーツとの出会いが、未来を変える!」
「PARA-SPORTS ACADEMY」は、「パラリンピックを契機とした障がい者スポーツ支援」をテーマに、TEAM BEYONDとWOWOWが共同で今春から都内の大学で行っている特別授業です。その4回目が10月10日(火)、日本体育大学体育学部の「生涯スポーツ論」という講義の中で行われました。
同講義は社会体育学科1年生の必修科目で、200人を越える今季の受講生たちは、東京2020大会を4年生で迎えます。スポーツ専門大学である日体大の中で、特に社会体育学科はパラリンピックの運営支援に関わる可能性があるそうです。担当する野村一路教授は授業の冒頭、「パラリンピックを『観にいこう』でなく、『一緒につくる』『運営する立場になる』という前提で、今日の授業を聴きましょう」と学生たちに話しました。
同学科では2年生からスポーツマネジメント領域と生涯スポーツ領域に分かれ、後者では障がい者のスポーツ支援や指導を専門にする学生も少なくないそうです。また日体大は今年度からパラアスリート対象の奨学制度をスタートさせており、例えば、同大4年だった昨年、リオパラリンピックで銅メダルを獲得した辻沙絵選手もその一人。今も大学院で学びながら、2020年を目指しています。
パラリンピックが比較的身近な存在という環境にある日体大生に、当アカデミーの授業はどんなインパクトを残せるのでしょうか?
授業は、これまで同様、東京都の担当者のレクチャーから始まりました。2020年のパラリンピックまで3年を切った今もパラスポーツの認知度は競技によって低いものものあり、特に会場観戦率は1.3%という調査結果もあります。「TEAM BEYOND」の立ち上げなど東京パラリンピックの会場を満員の観客で盛り上げるため、東京都が行うさまざまな取り組みが紹介されました。
つづいて、WOWOWのプロデューサーが登壇。「今日はスポーツのど真ん中にいる皆さんと話ができることを楽しみにやってきました」と呼びかけました。同社は今、国際パラリンピック委員会(IPC)と共同で、パラリンピックを代表する世界トップ選手に迫るドキュメンタリーシリーズ、“WHO I AM”を制作・放送しています。1シーズンに8選手ずつ、2020年までに40選手の番組を制作予定で、シーズン2の放送が10月29日から始まっています。
授業では、シーズン2のトレーラー(予告編)や車いすフェンシングのベアトリーチェ・ヴィオ選手(イタリア)のダイジェスト版などが流されるとともに、番組制作での興味深いエピソードなどが語られました。例えば、どの選手も「僕を、私を、見て!」」「人生が輝くかどうかは自分しだい」といった強烈な個性とパワーがあふれていることや、「僕にとって、困難は、ただ乗り越えるためだけにある」など、選手の言葉は誰にもあてはまる普遍的な示唆を含んでいたことなどが紹介されました。
そして、「皆さんもぜひ、日体大生として自分らしく動ける何かを見つけて、2020年大会にはぜひ主体的に関わってください」とエールが送られました。
■発見、驚き、共感・・・。アカデミーで広がった視野
受講生からは授業についてさまざまな感想が聞かれました。社会体育研究会というサークルでイベント企画などを手掛ける渡辺早紀さんは、「知っていたつもりだったが、パラスポーツについて全然知らないことに気づかされたし、選手の前向きな言葉や姿勢にパラスポーツのイメージが変わった」と言います。
将来の夢は障がい者のスポーツ指導員という中村寛之さんは、「障がいは僕たちの意識が作るのだと、目を開かされた。将来、障がいのある人と関わる上で、接し方の参考になった」そうです。
受講生にはパラ陸上の選手もいました。短距離系種目が専門の鈴木雄大さんは、「パラ陸上以外の競技は知らなかったが、それぞれが目標に向かってがんばっていると知り、刺激になった」と話し、投てき種目に打ち込む山手勇一さんは、「多くの人にパラスポーツを知ってほしいし、僕自身も選手として自らアピールが必要だと強く思った」と意気込みを語ってくれました。同じく短距離系種目に取り組む兎澤朋美さんは、「自分に誇りをもっている選手ばかりだったし、『困難は乗り越えられる人にしか与えられない』などの選手の力強い言葉に心を動かされた」と、今回の授業に接し、3人とも同じパラアスリートとして駆り立てられるものがあったようです。
さらに、授業を受けた上で2020年への思いについて伺うと、渡辺さんは、「パラリンピックは選手を知ってから観たら、試合ももっと楽しめると思った。2020年はオリンピックのボランティアを考えていたが、社会体育学科の学生として学んだことが活かせるのは、むしろパラリンピックではないかと思った」と視野の広がりを感じたそうです。
中村さんもボランティアとして大会に関わることを希望しているそうですが、「それまでにパラリンピックの知識をもっと深めたいと思った。そのために障がい者施設に支援に行くなど、障がいのある人と触れる機会を増やしたりして経験を積みたい」と具体的な行動までイメージできたようです。
アスリートの3名は、「2020年は選手として出場したい。そのために、これからの日々を大切に、練習に取り組みたい」と声を揃えます。「動画のパラリンピアンに大きな刺激を受けたし、前向きな姿勢を見習いたい」と鈴木さんが言えば、山手さんは、「パラリンピックの知名度アップのために、選手として努力したい」と強調し、兎澤さんは、「日体大に入ったのは2020年大会での活躍を夢見たから。奨学制度はいろいろな人に支えていただいているので、競技で活躍することで恩返ししたい。また、私自身がいつか誰かの刺激になれるように日々努力したい」と力強く語ってくれました。
他にも、「“WHO I AM”はかっこいい番組で、ゾクゾクして鳥肌が立った」「車いすフェンシングの選手から、『自分のとらえ方しだいでマイナスはプラスに変えられる』と教わった」「障がいは自分の中にあると気づかされた。これからは、駅などで困っていそうな視覚障がい者と出会ったら、どうしようかと迷うのでなく、声をかけようと思う」といった感想が聞かれました。
この授業が、自分を輝かせる一歩を踏み出すヒントや勇気になったのではないでしょうか。2020年大会ではボランティア、選手、あるいは別の形で、「これが自分だ!」と活躍する日体大生の姿を楽しみにしたいと思います。