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スポーツとして扱われているパラアイスホッケー ~パラスポーツ海外事情・アメリカ編~

2017.12.05
スポーツとして扱われているパラアイスホッケー ~パラスポーツ海外事情・アメリカ編~

日本代表で活躍する上原大祐氏にパラアイスホッケーのアメリカ事情を聞いた(撮影:越智貴雄)

2010年バンクーバーパラリンピックでは準決勝で優勝候補だった地元カナダを破る大金星をあげ、NHKが急きょ決勝の生放送を決めたほど日本列島を沸かせた「パラアイスホッケー」(当時は「アイススレッジホッケー」)。しかし、あれから7年、残念なことに未だに日本では「パラアイスホッケー」の認知、普及は進んでいないというのが実情だ。一方、パラアイスホッケーの本場であるアメリカはといえば、健常のアイスホッケーと同様に扱われ、プロを管轄するNHL(National Hockey League)のチームがスポンサードしているチームもある。今回は、そんなアメリカのパラアイスホッケーの実情に迫る。

競技人口は日本の100倍?

ベースボール、アメリカンフットボール、バスケットボールと並んでアメリカの「4大スポーツ」のひとつであるアイスホッケー。その組織は大きく2つに分かれている。プロを管轄するNHLと、アマチュアを管轄するUSAホッケーだ。USAホッケーには「障がい者スポーツ部門」が設けられており、パラアイスホッケーはそこに組み込まれている。つまり、スポーツのひとつとして認識されているのだ。

障がいの有無や性別は問われず、外国人枠も設けられていない。誰でも自由に、そして平等に「実力」を競うことができる。

現在、日本ではパラアイスホッケーの競技人口は20~30人(うち女子は2人)で全国にわずか4チームだ。一方、アメリカの競技人口は2000人以上(うち女子は約200人)で、全米に88のチームがあり、8つの地域リーグに分かれている。シーズンは10月~4月で、各リーグでほぼ毎週試合が行なわれる。各リーグで優勝したチームが集まってプレーオフが行なわれ、「全米チャンピオン」の座をかけた戦いが行われる。

88チームの中には、NHLのチームがスポンサードしているチームもある。「フィラデルフィア・フライヤーズ」「シカゴ・ブラックホークス」「ピッツバーグ・ペンギンズ」などがその代表例だ。そうしたチームのみが参加することができるSLED HOCKEY CLASSIC(スレッド ホッケー クラッシック)という大会も、通常のリーグ戦とは別に行なわれている。

NHLと同じチーム名・練習会場・ロゴ入りユニフォーム

スポーツとして扱われているパラアイスホッケー ~パラスポーツ海外事情・アメリカ編~

チームはあくまでもアマチュアだが、NHLのチームと同じチーム名やロゴ入りのユニフォームを着用することができたり、プロが使用している練習会場を利用することができたりする。もちろん、ネームバリューとして絶大な価値を創出していることは想像に難くなく、パラアイスホッケーの認知拡大にも寄与している。

04年~06年にはシカゴで、12~13年にはフィラデルフィアでプレーしたパラアイスホッケー日本代表の上原大祐(NEC)は「プロと同じユニフォームを着てプレーするというのは、選手のモチベーションにも非常に大きく影響し、誇りを持ってプレーしていた」と語っている。

(写真:12年~13年、フィラデルフィア・フライヤーズでプレーしたパラアイスホッケー日本代表の上原大祐(中央左と左下)。プロのNHLチームと同じ名称を使用し、ロゴ入りユニフォームも着用しプレー。練習会場も利用できたという(写真提供:木村恵子さん))

パラスポーツに対するイメージが日本と異なる理由とは?

また、アメリカのパラアイスホッケーの特徴としては、元軍人の選手が多いということも挙げられる。アメリカ代表15人のうち、常に3~4割ほどは元軍人だという。「退役軍人」のことをアメリカでは「ベテラン」と呼び、国民からは尊敬の念を抱かれている。

そのため、日本では未だに「弱者がするスポーツ」という見られ方も少なくない障がい者スポーツに対して、アメリカでは心身ともに鍛え抜き、国民に奉仕してくれた元軍人の存在が大きく、パラアイスホッケーのみならず障がい者スポーツに対して「弱者」「かわいそう」という意識がほとんどないのだという。

アメリカのパラスポーツにおける「実情」のひとつが、そこにある。

(写真:パラリンピック2連覇中のアメリカ代表チーム。代表チームには、多くの元軍人の選手がいており、彼らは、国民から尊敬の念を抱かれている。(撮影:越智貴雄))

スポーツとして扱われているパラアイスホッケー ~パラスポーツ海外事情・アメリカ編~

文:斎藤寿子

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