Yahoo!パラスポーツ特集

誰にでも門戸が開かれた車いすバスケリーグ ~パラスポーツ海外事情・ドイツ編~

2017.10.31
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昨年12月に行われた、車いすバスケ ブンデスリーガ BG Baskets Hamburg vs. Köln 99ers戦(撮影:越智貴雄)

ドイツの「ブンデスリーガ」と言えば、日本では一般的に「サッカー」のことを指すことが多い。しかし、「全国リーグ」という意味である「ブンデスリーガ」は、ほかにも卓球、ハンドボール、バスケットボール、バレーボールなど、数多く存在する。実は、その中にはパラスポーツである車いすバスケットボールもあり、世界からトッププレーヤーが集い、プロとして活躍している選手もいることはあまり知られていない。「障がい者スポーツの先進国」として知られるドイツ。なかでもジュニアを含めると約180ものチームが存在し、競技人口は2500人にのぼる、最も盛んな車いすバスケットボールの「ドイツ事情」に迫る。

日本人プレーヤーも増えているブンデスリーガ

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2016年12月10日、ドイツ・ハンブルクでは日本の車いすバスケットボール界において、「歴史的出来事」が繰り広げられていた。2018年には車いすバスケットボール世界選手権が開催される会場「INSEL PARK HALLE」で行われた車いすバスケのブンデスリーガ「BG Baskets Hamburg vs Köln 99ers」。両チームには、それぞれ3人の日本人プレーヤーが所属し、ブンデスリーガ史上初の「日本人対決」が実現したのだ。

そもそも6人もの日本人プレーヤーがブンデスリーガに在籍するのは史上最多でもあり、野球やサッカーなどがそうであるように、パラスポーツにも少しずつ海外移籍の波が押し寄せてきていることがうかがい知れる。9月末に開幕する今シーズンも、5人の日本人プレーヤーが在籍し、世界のトッププレーヤーたちとしのぎを削り合う。

(写真:車いすバスケ ブンデスリーガ BG Baskets Hamburg vs. Köln 99ers戦。両チームには、それぞれ3人の日本人プレーヤーが出場し、日本人対決が実現した(撮影:越智貴雄))

興味深いのは、日本人第一号としてブンデスリーガでプレーをしたのが、健常者の女性だということだ。実は、ドイツの車いすバスケのリーグでは、健常者も参加することができ、また男女混成で行われている。

長年ドイツの車いすバスケに尽力してきたウルフ・メーレンス国際車椅子バスケットボール連盟(IWBF)会長によれば、ドイツの車いすバスケのリーグに初めて健常者が参加したのは、20年以上前の1993年のこと。「相互理解が不可欠なチームスポーツは、障がいの有無に関係なくソーシャル・コミュニケーションが行われる絶好の機会」という考えのもと、最初は試験的に行われていたのが、やがて全リーグで採用され、トップのブンデスリーガでも健常者が参加するようになっていったという。また、持ち点4.5の健常者が参加することでハイポインターが増加し、それによって障がいの重いローポインターが参加する場をより多く提供することができる、という狙いもあったと言われている。

外国人選手が所属するようになったのも、同じ1993年。ブンデスリーガに2人の米国人選手が招へいされたのを機に、それ以降、さまざまな国の選手が参加するようになっていったという。外国人枠が設けられていないこともあり、現在では、強豪ぞろいのヨーロッパをはじめ、各国からトッププレーヤーが集結し、名実ともに世界を代表する人気リーグとなっている。

「誰もが参加できるスポーツ」としての確立

ドイツではトップアスリートのみに車いすバスケの環境がもうけられているわけではない。ドイツの車いすバスケットボールリーグは、1部であるブンデスリーガをトップとして、5部まである。そのため、選手はそれぞれの目的や環境、レベルに適したチームを選択することができる。つまり、ドイツでは車いすバスケは「誰もが参加できるスポーツ」として確立されているのだ。

もちろん、盛んなのは車いすバスケに限られたことではない。現在、ドイツ国内には車いすユーザーが約50万人いると言われている。そのうち約7000人が「ドイツ車いすスポーツ連盟」に登録し、スポーツに携わっている。これは、世界で最も高い割合だ。

(写真:フランクフルト郊外を拠点にする車いすバスケチームの練習風景。ドイツ国内では、誰もが参加できるスポーツとして確立されている。(撮影:越智貴雄))

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日本では障がい者がスポーツを始める際、競技用車いすや義足などのスポーツ用具は全額自己負担となるが、ドイツではリハビリを目的にスポーツをする場合、医師の処方箋に基づいて保険が適用される。そのため、経済的事情で躊躇(ちゅうちょ)することなくスポーツを始めることができる環境にある。こうしたこともまた、スポーツをする機会を生み出す効果につながっているのだろう。

ドイツには、障がいの有無にかかわらず、スポーツを楽しむ文化がある。車いすバスケは、その代表例と言える。

(写真:ドイツ国内では、高額のスポーツ用具も、リハビリを目的にスポーツをする場合は、医師の処方箋に基づいて保険が適用される(撮影:越智貴雄))

文:斎藤寿子

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