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パラで圧倒的メダル獲得数を誇る中国 ~パラスポーツ事情・中国編~

2018.03.06
パラで圧倒的メダル獲得数を誇る中国 ~パラスポーツ事情・中国編~

国際大会では、中国選手たちの活躍が目立つ

アテネ=14、北京=5、ロンドン=5、リオデジャネイロ=0。これは、過去4回のパラリンピックで日本が獲得した金メダルの数だ。日本は、第2回大会の東京大会(1964年)にはじめて正式参加してから、リオ大会(2016年)まで毎回選手を派遣してきたが、半世紀以上の歴史で金メダルがゼロになったのははじめて。また、リオでのメダル獲得総数は24個(銀10、銅14)で、159カ国中64位だった。アトランタ大会(1996年)とアテネ大会(2004年)が過去最高の10位で、ロンドン大会でも24位だったことに比べれば、リオ大会での低迷は関係者にとってまさに”事件”だった。

低迷の理由には様々な要因が指摘されている。なかでも、パラリンピックの規模拡大に比例して世界的に競技レベルが上昇していて、それに日本が追いついていないことが大きい。実際、リオ大会では、陸上1500m(視覚障害T13クラス)において、4位までが五輪のタイムを上回った。走り幅跳びでは、義足の選手が8mを超えるほどで、多くの種目で過去の記録は順位予想の参考にならない状態だった。

そのリオ大会で圧倒的な強さを見せたのが中国だ。総数で239個のメダル(金107、銀81、銅51)を獲得。4大会連続で金メダル数、メダル総数ともに世界トップに輝いた。いまや国際大会の表彰式で流れる曲は、中国の国歌ばかりだ。

障害者スポーツ専用のトレーニングセンター

パラで圧倒的メダル獲得数を誇る中国 ~パラスポーツ事情・中国編~

施設を使用する金メダリストのLIU FULIANG選手

今回訪ねたのは「広州市障害者スポーツセンター」。広州市が所有する障害者スポーツ専用の施設だ。敷地内にはテニスコートや体育館、400メートルトラックのある運動場、プールなどの水泳競技の施設が整備されている。イメージとしては、日本国内で各都道府県や市などが所有している総合体育施設を思い浮かべてもらうといいだろう。

ただし、日本の総合体育施設と違って、一般人は利用できない。ナショナルチームが広州市に来た時は練習施設として提供されることはあるぐらいで、高いレベルを目指す障害者アスリートのみが使用できる専用施設となっている。

施設を使用するLIU FULIANG選手(26)は、ロンドン大会(2012年)の陸上・走り幅跳びで金メダルを獲得した。LIU選手は10歳の時、旧正月の爆竹遊びで事故にあい、左手を失った。だが、運動の才能を見込まれて障害者スポーツの世界に入ると、自転車など10種ほどの競技に挑戦したという。2008年に完成したこの施設でもトレーニングを積み、ロンドン大会で悲願を達成した。LIU選手は、「金メダルをとって、家族はとても喜んでくれた。東京でも金メダルをとりたい」(LIU選手)と話す。

だが、頂点に立つまでの道のりは険しい。中国の強さとしてよく指摘されるのは「軍隊方式」と呼ばれるほどの厳しく、徹底した練習だ。施設では、時には午前、午後、夜の三部練習もこなす。一方、メダルを獲得したときの報奨金もすごい。中国のあるパラリンピック関係者によると、金メダリストには「数千万円の報奨金が支払われる」という。それも「これだけの練習に耐えたのだから、当然の報酬だ」(同)と話す。

メダル獲得を見据えた合理的なシステム

パラで圧倒的メダル獲得数を誇る中国 ~パラスポーツ事情・中国編~

宿舎から目と鼻の先にトレーニング場所が置かれている

「アメとムチ」だけが中国の強さの理由ではない。選手を支えるためのバックアップ態勢も充実している。広州市のパラリンピック関係者は、こう話す。

」「施設には常駐の医師のほか、マッサージ師も選手の体のケアを手伝っている。特に食事には気をつかっており、もちろん選手の負担はなく、すべて無料です」

選手たちは、敷地内にある10階建てのオフィス兼宿舎に住んでいる。現在、約200人の選手が住み、13歳から成人までいる。宿舎から練習場までは徒歩で行ける距離で、給与も支給されるので、選手は競技のことだけを考えればいい環境だ。トレーニングジムやビリヤード場などのレクリエーションコーナーもある。もちろん、車いすなどの高額なスポーツ用具も国や省が支給してくれる。金銭面で自己負担の大きい日本の選手とは、競技をはじめる前の時点で差が生まれている。

ちなみに、入寮できる選手を選ぶ大会は4年に1回しかない。その理由は、「毎年選ぶと、選手をきちんと見ることができない」(前出の広州市のパラリンピック関係者)からだという。

今回の取材で痛感したのは、中国はメダリストを育成するために徹底して合理的なシステムを構築していることだ。特に、トップアスリートを育成する前段階の「底辺への支援」への努力は取材前の予想を超えたものだった。日本でも、厳しい練習をこなしながら世界で戦う選手はたくさんいるが、トップレベルではなくても、ジュニアの時代から練習だけに打ち込める環境にいた人はほとんどいないだろう。

全寮制の専用施設。医療や食事も含めた選手への支援態勢。最近では日本でもパラリンピック選手への補助は充実しはじめているが、いまだに練習場の確保で悩んでいる選手もいるのが実情だ。幅広い層から選手を選び、長い時間をかけて育成する中国に追いつくのは、容易ではない。

記事:土佐 豪史
写真:越智 貴雄

20180306

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