密着!パラアスリートの肖像(アジアパラ編) ~陸上(走幅跳びT12クラス)・澤田優蘭選手

2019.03.22

2018年集大成のレースで感じた「成長の跡」 

密着!パラアスリートの肖像(アジアパラ編) ~陸上(走幅跳びT12クラス)・澤田優蘭選手

2018年5月の北京グランプリシリーズで5m70をマークし自己ベストを一気に67cmも更新してみせたロングジャンパー澤田優蘭。昨年まではなかなか現実的にはとらえることができずにいたアジア記録(5m74)まで一気に4cmと迫った。その澤田が10年ぶりとなる“アジア新女王”に名乗りをあげるべく、4年に一度の“アジア王座決定戦”である「アジアパラ競技大会」(2018年10月6日~13日、インドネシア・ジャカルタ)に臨んだ。

【100mは自己新で金メダル】

密着!パラアスリートの肖像(アジアパラ編) ~陸上(走幅跳びT12クラス)・澤田優蘭選手

現地入りしてからの澤田は、自らの調子の良さを感じていたという。はじめは移動の疲れもあったが、体を動かしていく中で日を追うごとに軽快さを感じていた。

実際、走幅跳びの2日前に行なわれた100m決勝では自己新の12秒97をマークして金メダルを獲得。それは公式戦では初めて“13秒の壁”を破った瞬間だった。そして、跳躍に欠かすことのできない助走の強さを物語っていた。

澤田も「助走のスピードは上がってきているので、これを上手に跳躍にもつなげたいと思います」と手応えを口にしていた。ところが、その助走のスピードアップが意外な結果をもたらすことになる。

閉会式を翌日に控えた大会7日目の12日、陸上競技の最終日を迎えていた。その朝一番のレースとして8時半に走幅跳びがスタート。日本人2人を含む6人で争われた。

1本目 5m14
2本目 5m06
3本目 5m14
4本目 ファウル
5本目 ファウル
6本目 5m04

結果は、1本目と3本目に跳んだ5m14となり4位。アジア新を狙っていた澤田だったが、自己ベストにも遠く及ばないままに終わった。

【結果は進化の途中にあった証】

密着!パラアスリートの肖像(アジアパラ編) ~陸上(走幅跳びT12クラス)・澤田優蘭選手

しかし、レース後の澤田は意外にも淡々とした表情を見せていた。

今やアジア新にも手が届く位置にいる澤田にとって、5m14は確かに実力を出すことができたレースとは言えなかった。しかし、振り返ってみれば、昨年初めて5m台を突破した澤田の今シーズンの目標はコンスタントに5m台を跳ぶことにあった。そのため、ファウルを除くすべての跳躍で5m台を記録したことは、この1年間の確かな成長の跡だった。

「助走は良かったと思います。ただ、踏み切りまでの最後の3歩がうまくまとめることができなかった。100mでは自己新が出ましたし、体はよく動いているという感覚はありました。ただ助走のスピードが上がった分、踏み切りとかみ合わなかったのかなと」

助走のスピードが上がったからこその踏み切りのミスと考えれば、澤田はさらなる進化の途中段階にあるということが言える。上がった助走のスピードにかなった踏み切りの技術を身に付ければ、記録更新は十分に期待される。

密着!パラアスリートの肖像(アジアパラ編) ~陸上(走幅跳びT12クラス)・澤田優蘭選手

2019年11月にはドバイ(アラブ首長国連邦)で、ドバイ2019世界パラ陸上競技選手権大会が開催される。翌2020年に開催される東京パラリンピックの前哨戦ともいえる大事なレース。澤田はその“世界の舞台”への出場権を得て、しっかりと世界のトップジャンパーたちとの戦いに挑むつもりだ。そのためには、今後、何が課題となってくるのか。

「フィジカル面での強化もそうですが、一番は技術面。走幅跳びに関しては、まだまだ技術不足なので、冬の間に練習を積んで、来年にはしっかりと世界で戦って記録を狙っていきたいと思います」

「少しずつ進歩していることは感じている」と澤田。来年こそ“アジア新女王の誕生”の瞬間が訪れるに違いない。

(文・斎藤寿子、写真・竹見脩吾)

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